左手のない女
もしかすると、私は変わった種類の人間なのかもしれなかった。私が惹かれるのは──というより、好奇心をそそられるのは、いつも一風変わった女だった。私はいつでも彼女たちの問題を解決しようとした。私にはどうすればいいのか分かっていた。
彼女たちの悩みがなくなると私の興味も薄れ、ほとんどの場合は二度と会わなくなった。別に悪いことだとは思わない、私たちはもうお互いを必要としなくなったのだから。だが、彼女たちの中には私との関係を続けたがる者も多く、それがとても奇妙に思えた。
その女には左手がなかった。欠損しているというより、手首から先がまるでマジックのように消えていた。
なぜそうなったのか、私は尋ねず女も語らなかった。ただ、そこに女の核を侵し続ける何かがあるのだろうと、ぼんやりと思っていた。
選択を迫られた時、その女はいつも不幸の手を取った。信じるべきでない者を信じ裏切られ、進むべきでない道に足を踏み入れ立ち往生し、やるべきでないことを行い失敗した。
だから私はいつもそばにいて、それを阻止しようとした。
だが、この左手のない女は決して私の言いなりにならなかった。女はなにかと理由をつけて私の忠告に抗い、どんどん深みにはまっていくのだった。
深み……どちらかというと、深みにはまっているのは私の方かもしれなかった。女が不幸になるほど、私は女から離れがたくなったから。
女の左手の空白は徐々に広がっていた。私はそのことをひどく気にしていたが、女は関心がないようだった。
いよいよ腕全体が消えた時、私は女に言った。
「もうこんなことはやめて」
「どうして?」
「あなたが不幸になるところを見たくないから」
女は笑った。笑いすぎて咽せ返るほど。
「だめよ。あなたはわたしを見ていないと」
「どうして?」今度は私が尋ねる番だった。
「あなたをわたしを救いたいようだけど、あなたの善はわたしのものじゃないわ」
私はなにを言い返せばいいのか分からなかった。女がはっきりと私を拒んだのは初めてだった。
彼女は続けた。
「消えていくことなんてどうでもいいの。きっと、私が身体を取り戻したら、あなたは私のことを忘れるでしょう。それはだめよ。あなたはずっとわたしのことを考えていないと」
彼女は私に近づき、ない左手で私の頬に触れ、耳元で囁いた。
「私がすっかりいなくなったら? あなたは私から逃れられないわ。わたしはずっとあなたといっしょにいる」
彼女がすっかりいなくなった後も、私は相変わらず奇妙な女たちに惹かれたが、彼女たちがどれほど苦しもうが死を望もうが、いかなる解決策も提案しなかった。
私は彼女たちを愛さない。いや、これまでに誰一人愛したことなどなかったかもしれない。私が惹かれたのは女たちが抱く病だった。いま私はただ彼女たちが破滅するのを、立ち直るのを、あるいは変わらずにいるのを観察し、頃合いを見て立ち去る。
消えた女はウィルスのように私を侵し、私の目で問題を抱えた女たちを眺めながら嘯く。
「ご愁傷様、この人はわたしのものだから、あなたを救ったりしないの」
あるいは、私はあの女を救ったのかもしれなかった。おそらく彼女の思い通りに事は運んだのだ。
奇病 f @fawntkyn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。奇病の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。