第28話 宇宙の大きさってどれくらい?

「今までのあらすじ」

 ここは地球の日本。川原知人(かずひと)(男性)は、40歳の大学教授で哲学の研究をしている。川原の中の人は、鈴木愛衣(あい)という名前の大学生で、科学技術が発達した別の宇宙の惑星に住んでいた人である。愛衣の心は、地球の川原知人という名前の胎児の中に送りこまれ、今は川原知人として生活している。愛衣は昔の記憶はほとんど覚えていなくて、最初から川原として生まれたと思っている。

 これは川原が高校の時の話である。

 川原は入学式の時、南川(女性)さんに話かけようとしたが、うまく話せなかった。それから私は妙に南川さんの事が気になりはじめ好きになってしまったのだった。


 「第28話 宇宙の大きさってどれくらい?」

 私は文系、理系を決める判断を最終決定直前で変更した。理由は南川さんが文系という話をきいて、理系にしようと思っていたが直前で変えたのだった。

 しかし、文系コースと理系コースの名簿を見て、私は愕然(がくぜん)とした。文系コースには南川さんの名前はなかったのだ。

 後で分かった事だが、南川さんが文系コースに行くという話は、田中の勘違いだったようだ。南川さんは最初から理系コースに行くつもりで、理系コースにしたのだった。親友の田中も理系、南川さんも理系。自分が文系に行く意味はあるのだろうか。今から、担任の先生にお願いして、理系に変えてもらおうとも考えた。しかし、それでは担任の先生にコース変更の理由を説明する必要があるかもしれない。しかし、好きな南川さんが文系じゃなくて理系だったから、理系に変更するなどと言う事は私のプライドが許さない。しかも、文系コースを選んだ理由を書くところがあったのだが、そこには「好きな哲学を勉強するため」ともっともらしい事を書いてしまっていた。今更、その理由は嘘でしたとは言えない。しかも今、冷静に考えてみると嘘ではなく本当に哲学を一生懸命勉強したいと考えているのだ。文系コースになったからと言って、南川さんに会えなくなる訳ではない。理系の授業の時に別の教室になるだけなのだ。私はコース変更せずに文系コースのままにする事を決めたのだった。


 放課後、勇気をふりしぼって私は南川さんに話しかけてみた。意外と自分から話しかける方が会話はスムーズにできる。

 「あ、あの。南川さん・・・。なんで理系コースに行こうと思ったの?」

「ええとね。宇宙に興味があるからなんだ。」南川さんは笑顔で答えてくれた。

 「そうなんだ・・。宇宙って良いよね・・・」事前に話す内容を決めていなかったので、私はどう会話を進めていけば分からない。

 「川原君は、宇宙の大きさって知っている?」急に南川さんが宇宙について質問してきた。しかし、私には宇宙のおおまかな大きさなんてあるという考え方をしていなかったので一瞬、戸惑ってしまった。

 「ええと。無限じゃないの?」私は素直にきいた。

 「そうね。これは観測できる範囲の話になるけど、この宇宙が誕生したのが約138億年前でこの時、ビックバンによって宇宙は膨張し続けているの。光速を超える事はできないと考えると最低でも半径138億光年の球体になる、みたいに考えてる事ができるの。厳密にはそんな簡単な話ではないっぽいけど、それはこれから勉強していこうと考えている」南川さんはよく勉強しているなと私は思った。自分なんて、南川さんと同じコースが良いとかいう理由でコースを選んでしまった。自分の選択が少し恥ずかしく思えたのだった。

(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る