三獣隊の子守り
朝乃倉ジュウ
第1話 休暇
導さんは決まって僕の命日に休みをくれる。
僕自身、そんなに気にしていない。導さんに言われるまで忘れているくらいだ。
「今回も現世に行っていいんですか?」
「ええ、かまいませんよ。匡と一緒に行く許可はもらっていますから、安心して行ってきてください」
三獣隊の建物の外へは相変わらず僕一人で出られない。だから匡さんに護衛をお願いしてもらっている。
最初のうちは申し訳なかったけれど、匡さんも現世を楽しんでいるようだから気にしないことにした。仕事中だとできないが、仮の肉体を貰えるので現世を人のように歩けるのだ。匡さんにとっては軽い観光らしい。
「本当におまえの命日って閑散期だよな。もしかして狙った?」
僕の部屋で現世に行く話をしていた匡さんが煙管を片手に言った。
「そんな器用なことできませんよ。偶然です、偶然」
匡さんは煙管の煙を吐きながら笑った。紫音との一件以来、匡さんの体質は変わったようだ。僕が三獣隊に戻った時に一番に驚いたことだった。
無臭だが濃い色の煙管の煙は、たまに匡さんの顔を隠す。
導さんに聞いたら、吸入型の薬だと言った。飲み薬より煙管型なら、きちんと薬を摂取したかわかりやすいから。導さんが指示したらしい。
何の薬なのかは教えてくれなかった。
「──で、今回も彼処に行くのか?」
匡さんは現世の地図を広げながら僕に確認した。
毎年、何十年経っても、僕が行く場所は変わらない。匡さんには申し訳ないけど、今回も同じ場所に行く。
黙って頷くと、匡さんは煙管の煙を僕の顔に吹きかけてきた。
「うわっ……!?」
「いつになったら慣れるんだよ」
いくら薬煙草の煙だとしても、生前の条件反射で涙が出る。
「導さんに薬の在庫もらってくる」
匡さんは僕にタオルを被せて部屋から出ていった。これも、いつものことだ。
慣れない。自分の命日も。最期の瞬間のフラッシュバックも。何十年経っても、慣れることができない。
流れ落ちる涙を、いつまでも止められない。
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