第7話 友情

まあ、そんなこんなで、今日の授業は終わった。

本当に疲れた。特に今日は。心配されるわ、変な目で見られるわ。しんど。


「ねえ、あなたたちって一緒に帰らないの?」


香苗が話かけてきた。


「今日は、いいっかなと思ってる」

「何で?」

「いや、だって、、」


(いや、理由を言うとまたややこしくなるかな?ここは言わないでおいたほうが良いかも)


「だって、何?」

「あ、いや、 なんもない。」

「あ、そう。」


あっぶねー。もうちょっとで怪しまれるとこだったわ。今、めっちゃ緊張した。心臓が飛び出るかと思ったもん。でも、いつかは言わなきゃいけないんだよね。

はあ、だれか代わりに言ってくれないかな?ほんとに。困ったわ。


(こんな毎日が続いたら、いやだな)


そんなことを思いながら帰った。


「さーやーか!どうしたの?そんなに困った顔して、何かあったの?まさか、夫婦喧嘩でもした?」


にやりと笑った香苗はちょっと腹が立った。


「そんなわけないでしょ!まだ、結婚もしていないんだし。」

「そもそも、急に告白されて付き合ってる人、彩華しかいないって。で、どうしたの?何があったかは分からないけど、何でも話には乗るよ。」

「えー。言っちゃおっかなー。なんてね。言ったほうが自分的にも気が楽だし。」

「まー、そうだよね。んで、どうしたの?」


香苗が真面目な顔をした。多分、本気で相談に乗ってくれるんだと思う。助かる反面、言いたくないという気持ちになっている。でも、今、言っておかないと後々、困るのは自分だから、言っておこう。

そう決意して、私も真面目な顔をして、香苗に相談した。


「私、香苗に言われた通り、告白されて、すぐに付き合ったじゃん。それって、相手はよくても、私自身はよくない可能性もあるんだよね。」

「まー、そりゃね。いないよ。普通、だれか分からない人と急に付き合うって事例。」

「うん。でね。思うことがあるんだ。なんで、私の身に何かがあったら、みんな、心配したがるの?私は、心配なんてされたくもないのに。」

「あー。そういことね。だから、さっきも怒っていたんだ。ごめんね。彩華の気持ちを理解せずに勝手に心配しちゃて。」

「いや、それはいいんだよ。私もあの時はカっとなって、話も聞く気もなかったし。」

「でも、ほんとに気になるんだよね。なんでみんな揃って、私のことを心配していたんだろうって。」


私が本気で悩んでいることを香苗は真面目に聞いてくれて、相談に乗ってくれた。やっぱり香苗は最高の親友だ。そう思ってまでいた。


「そりゃ誰だって心配はするよ。相手が本気で悩んでいたり、相手が苦しんでいたらね。」

「いや、でもさ、私はそれが嫌なんだよ。私の事情も知らずに、勝手に心配して。ほんとに何なの?人間って。心配したがる生き物なの?」


勢いでちょっと怒ってしまった。でも、香苗は真剣に聞いてくれた。ありがたい。多分、私の言いたいことは伝わったはず。

その時、香苗はニコッと笑った。まるで誰かを慰めるような目だった。


「言いたいことは言えた?ちなみに、私には彩華のその気持ち、伝わったよ。」


なんて美しい顔なんだ。アイドルかと思ったわ。ほんとにかっこいいしかわいいわ。私の親友は。


「うん、言えた。あ、でも、あと一個だけ言いたいことがある」

「うん。良いよ。何?」

「やっぱり香苗は私の自慢の親友だ!」


その勢いで私は香苗に抱き着いた。良いにおいがした。


「もう、何よ。照れくさいじゃない。あと、急に抱き着いてくんな」

「いいじゃん!私たち、付き合ってんだし。」


香苗は最初は照れていたけど、ちゃんと私のことを抱擁してくれた。あたたかかった。


「付き合ってはないじゃん。もー、しょうがないんだから」

「香苗と帰るのが一番だわ。優しいしね」

「ありがとう。幸せになんなよ!」


そう笑いあって、それぞれ家に帰った。


*****


「じゃあ、また」

「うん。またね」


いつものところで別れた。そのとき、


「あの人って、告られてすぐに付き合った人じゃない?」

「あ、ほんとだ」


公園のほうから聞こえた。多分、同じ学校の人だろう。制服も一緒だし、、、。


「ねえ、告られたとき、どう思った?」


ついに話しかけてきた。余計なお世話だ。


「え?何?その話、あなたたちに関係ある?」


早く帰りたいのに話しかけてきて、チョーイラつく。


「え、あんじゃん。同じ学校だし、それに、、」

「それに何?」


すると、急に相手の顔が赤くなった。その瞬間、私は察した。


「私、海翔のこと好きなの!」


そんなこと言われてもどう反応したらいいか分からんだろと思った。


「そんなこと言われても、私は海翔君の彼女なんですよ。誰の何を言われようと、私のものなんです!」

「よく言えたわね。私より海翔のこと知らないくせに」


その言葉にむかついた。海翔君は私にいろんなことを教えてもらったから何でも知ってるつーの。


「まあ、いいわ。またね。ライバルちゃん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る