第三八話 茶話会に参加するのです

学園の食堂は昼時を迎え、貴族の子弟たちで賑わっていた。各テーブルでは談笑の声が飛び交い、華やかな雰囲気が広がっている。そんな中、俺は窓際の席に座り、のんびりと食事を楽しんでいた時の事。


「ふぅ~、やっぱりここの料理はうめぇな!」


向かいの席で、リヴィアが上級貴族の子女としては豪快に肉を頬張りながら満足そうに頷く。

とは言え辺境伯の養女である彼女は、貴族としての教養はあるものの、基本的に田舎育ちの行動派。最近ではそれでも抑えているとは言え、男勝りな性格もあって言葉遣いも少し荒い。


「お前なぁ……もうちょっと品よく食べることはできんのか?」


勿論、庶民と違い一応ナイフとフォークという西洋風のマナーに則ってはいる。

……個人的には箸でも良かったんだけど。

相変わらず土嬢様だなぁと思いながら俺が呆れたように言うと、リヴィアはニッと笑いながらフォークを突きつけてきた。


「まあ、やれと言われたらマナー通りにするけど、ここだとお前しかいないし。

それに街道整備の頃からの長い付き合いだし、今更気取ってもね。

お前こそ、ちまちま食ってねぇで、ほら! これうまいぞ!」

「いらん……」

そんな他愛もないやり取りをしていると、不意に食堂の入り口がざわめいた。俺が視線を向けると、一人の金髪の少女が、コイフを被った少女と共にこちらへ向かってくるのが見えた。

セリーナと、エルザだ。


セリーナは王族らしい気品を纏いながらも、どこか柔らかい雰囲気を持っている。それでいて高慢な態度はなく、むしろ貴族らしい親しみやすさを感じさせる。

一方のエルザは、髪をゆるくまとめた聖女らしい装いながらも、どこかぽやっとした雰囲気を漂わせていた。

「兄様~!」

エルザがひらひらと手を振りながら、楽しげに駆け寄ってくる。

「おい、もうちょっと落ち着け」

俺が苦笑すると、エルザは無邪気に笑いながら俺の隣に腰を下ろした。


「アルヴィン様、お時間よろしいですか?」

セリーナが優雅に微笑みながら問いかける。俺は肩をすくめながら答えた。


「あれ、セリーナ。珍しいな、お前がわざわざファーストネームで呼ぶなんて」

「ふふっ、兄様はいつも変わりませんね」


エルザがくすくす笑いながら席につく。


「実は、第一王子殿下があなたに興味を示していまして……一度、お茶会にお招きしたいと仰っています」

「……第一王子が?」


俺の手が止まる。


「ええ、それで兄上が、あなたに会いたいと」


第一王子、アレクシス・フォン・ルクセンブルク。王位継承権を持つものの『無能な王子』として噂されている人物。

「おいおい、兄上って言い方は紛らわしいぞ。お前の兄貴は二人いるだろ?」

そうだった、決め付けていたが、兄上だと第二王子の可能性もあると、その時気付いた。

「確かに……では、改めて。第一王子のアレクシス兄様が、あなたをお茶会に招待したいそうです」


「……第二王子派の連中はどう思ってるんだ?」


第二王子、ユリウス・フォン・ルクセンブルク。わずか5ヶ月違いの弟でありながら、優秀であるがゆえに「本来の王位継承者に相応しい」と推す勢力が存在する。

一応長子相続が原則だが、長男が幼かったり庶子だった場合は弟が継承したりと原則からずれる場合も多多ある。一応血統の養子であれば継承権を持つルールなので、王家の場合、逆手を取って基本子供は一旦全員庶子として、長男若しくは優秀な子供を一旦正妻の養子とし、その後嫡流として王太子に選出される流れだ。養子になってから嫡出認定されるまでの間、男子の場合はフォン・ルクセンブルクと呼ばれる。

まあいろいろ問題あるシステムだが、とりあえず今のところは機能しているみたいだ。


「バランスを取る意味で、レオさんの弟君、カインさんが呼ばれるみたいです。

当然、快くは思っていません。

でも、一応長男であり、第二王子も社交界でいろいろ脚光を浴びています。

社交界のシーズンが始まりますし、第一王子も表舞台に立つ機会を増やすべきだと王――お父様はお考えのようです」


セリーナは穏やかな口調のまま、しっかりと意図を伝えてきた。


「社交界のシーズン、か……」


俺は少し考え込んだ。学園が休みに入る時期、貴族たちが活発に交流を持ち、婚約や政略結婚の話が飛び交う季節。イヤ逆か。そんな貴族として交流と言う名の腹の探り合いする時期に合せて休みを設定しているのだろう。


だからこそ、第一王子がここで動くのは、何かしらの意図があるのだろう。

ただ……全く意図が読めない。


「第一王子殿下が動き始めるのは、自然な流れだと思います。でも、お兄様……アルヴィン様はどうされますか?」


俺の持っていない情報を持っているのか、エルザがのんびりとした口調で問いかける。


「ただ……俺が一緒に行くことで、余計な波風を立てることには?」


俺の問いに、セリーナは少し考えた後、穏やかに頷いた。


「ええ。むしろ、あなたがいてくれる方が都合がいいかもしれません。兄様の意図を見極めるためにも」


「意図?」


「私、最近気づいたんです。兄は、もしかしたら本当は"無能"を演じているだけなのではないか、と」


「……ほう?」

……まさか『微妙に弟より無能』と呼ばれてる俺を見極めたいって事か?


「兄上は、以前はただのダメな王子だと思っていました。でも、最近になって彼をよく観察していると、彼の無能さがどこか不自然に思えてきたのです」


「不自然?」


「ええ。彼は時折、本当に王族としての自覚がないのか、それとも『わざとそう振る舞っている』のか分からないことがあるのです。

たとえば、兄上は婚約者の公爵令嬢に嫌われるような振る舞いをしています。でも、それが本当に『ただのだらしなさ』によるものなのか、あえてなのか、確信が持てなくて……」


セリーナの言葉にドキリとする。

すると、隣に座っていたエルザが、のんびりとした口調で言葉を挟んだ。


「お兄様って、無能なフリするの得意ですよね~」

「……俺のこと、そういう風に見てるのか?」

「えへへ、割とバレてますよ?」


エルザは天真爛漫な笑みを浮かべたが、その目の奥には微妙に何かを企んでいるような光があった。やはり、ただの天然ではなく、時々腹黒いのは間違いなさそうだ。


俺は少し考えた後、静かに頷いた。


「……分かった。お茶会、参加させてもらうよ」


「ありがとうございます。きっと、何か発見があると思います」


「……まあ、つまらなかったら、途中で帰るけどな」


「それは困りますよ? せっかく兄様が待っているのですから」


セリーナはくすっと笑いながら立ち上がる。エルザも「楽しみですね~」と言いながら、何か面白いことを企んでいるような顔をしていた。


こうして、俺は第一王子と対面することになった。



それが、学園が休みになる前の話――。


「ふむ……」

俺は溜息をつきながら、目の前の伝言を受け取った。

「確かに言ったけど、よりによってこのタイミングとは……」

俺は手元の招待状を眺めながら、軽く視線を巡らせる。


本来ならエルザをパートナーにする予定だったが、彼女は教会の式典で正統派を信じる大公国に招かれており、参加は難しい。

リヴィアは確実に行きたがるだろうが、学園が休みに入ったタイミングで連絡が取れない。

さすがに主催者側になると最初から言われてるセリーナをパートナーとするわけにはいかない訳で……正直、困った。


カインは激闘で受けた傷の治療が必要で、意識こそ戻っているものの、まともに動けない状態。

フィオナは儀式の影響で依然として意識が戻らず、紋章を俺に移したとはいえ、まだ完全に安定したわけではない。

アリシアも、紋章同士の干渉で体調を崩し、あのあとすぐに姿を消した。

さらにリンディさんまで過労で倒れてしまい、療養が必要になっている。


(……なんだこの連鎖的な不調祭りは)


「伝言」

不意に、部屋の扉がノックもなく開いた。

そしてクラリスが、相変わらず無表情のまま真っ直ぐ俺の元へ歩いてくる。

「エルネスト先生から。青の塔の式典。黄の塔の関係者として、出席を要請されている」


「……いつも思うんだが、もう少し前置きってもんはないのか」


「急ぎではない。だが、断る選択肢もない」


淡々と、そして当たり前のように言い切るクラリスに、俺は苦笑するしかなかった。


「つまり、俺がパートナーってことか」


「そう」


頷く彼女の表情は変わらないが、その背筋は妙にまっすぐだった。


(……茶会と日程は被ってない。青と黄色の塔の合同式典なら、顔を出しておくのも悪くないか)


「なら、王子の茶会は代わりに付き合ってくれるか?」


「構わない」


即答。


「……お前、社交界のパーティーとか慣れてないだろ」


「慣れてない。でも、必要なら合わせる」


どうやら、塔同士の関係強化が本音らしい。

この一連の動きも、何か裏がある気がしてならないが――。


「分かった、付き合ってくれ」


「了解」


こうして、俺はクラリスをパートナーに、第一王子の茶会へ参加することになった。


王都、王城南庭。

通されたのは、白亜の回廊と手入れされた庭園の中に有る貴族用の迎賓テラスだった。

広大な庭園には、色とりどりの花が咲き誇り、優雅な噴水の音が静かに響いていた。

今回は夕方からの本番夜会の前に内内の茶会ティーパーティーをしたいという事なので、会場の一部を使った簡単な茶話会と言った趣向だ。


「よっほぉ~っ! アルヴィンくぅ~ん、来てくれたんだねぇっ。 きゃははっ!」


出迎えたのは予想通り、第一王子、、ジークフリート殿下だった。

鮮やかな金髪にデップリとした身体を派手な上着に包み、ふざけたような笑い声。

そして、なぜか座っている椅子の上で、太い脚を胡坐の要領で組んでいる。


……なんでだ。


どこからツッコめばいいのか分からなかった。

だが、それよりも気になったのは――彼の目。

一瞬だけ、その目が持つ気配が全く変わる瞬間があった。

ほんの一瞬。

だが、鋭く、まるで……俺を“値踏み”するような視線だった。


……なんだ、今の気配は?

と思うまもなく、侍女が王子に諫言していた。

「そのような座り方はおやめください。お足元が御留守ですよ、殿下」

「え~? だってお尻冷たいとテンション下がるじゃーん♪ ……って、ほら、アルヴィンくん! こっち来て来て、座って座って!」


付き従う侍女や近衛騎士すら、「また始まったな」と言いたげに微笑んでいる。

誰も咎めない。

誰も、変だと思っていない。

(……なんだこの空気。すでに“無能キャラ”として完成されてる……?)


俺が薦められた席に腰を落とすと、クラリスは少しだけ眉をひそめながら何も言わずに席についた。


座らされた椅子の向かいには、公爵家の令嬢らしい黒髪の少女がいた。

完璧な所作で紅茶を口にし、第一王子の騒ぎにも微動だにしない。

そのまなざしは、まるで処刑人の如し。

「アルヴィン様、初めまして。エヴァンジェリン・フォン・グリューネバルトと申します」

「どーもぉ、僕の未来の嫁でぇす! エルナって愛称で呼んでるんだ、うっふふーん♪」

「違います」

「もう、照れちゃって。おいで、膝の上、空いてるよぉ?」

「……黙ってください、殿下」

ぴしゃりと、即答。そして即拒否。

「ちょ、ひどくなぁい? 僕、もうちょっと大事にされても良くない~?

この子ねぇ~、ぜっんっぜんデレてくれないの! 

まぁ、僕が天才すぎて、ついてこれないだけかもね? 

きゃははっ♪」


第一王子がわざとらしく肩をすくめ、紅茶をこぼす。

それを自然に拭き取る侍女たち。

完全に“日常”として機能している。


だが……

なんか、おかしい。


第一王子にも公爵令嬢にも、間抜けで無能な王子とかわいそうな婚約者という役割ロールが見事に当て嵌まっている。

だが、どこか違和感を感じるのだ。


第一王子はまた笑った。

乾いた笑い声。きゃははっ、と高く甲高い笑い。


どこか、妙な既視感があった。

第一王子の無能アピールが、どこかで見たことがあるような――


「ねえねえ、アルヴィンくんもさ、家督譲るためにわざと無能っぽくしてるって噂、本当?

やっぱり実力者同士、通じ合うところがあるよねぇ~!」

「……実力者? どうでしょうかね」

何でそんな情報が出回ってんだと思いながら紅茶を一口。

「わかるぅ~? 僕も実はね、できる男なんだけど、みんなが見る目ないからさあ。

あえてこうやって『あれ~? ポンコツかな~?』って演じてるの。

本気出すとねぇ、凄いんだから!」

演じてる。

……その言葉に、俺の中で警鐘が鳴った。

似てる。俺の無能アピールと、方向性こそ違うけど。

俺のが単純にポンコツに見せようとするのに対して、ただのポンコツに見せかけて本当はできる人間であるかのように錯覚させようとするムーブ。

でも――

「いやぁ、困っちゃうよねえ~。この世界、見る目ない人ばっかでさあ! 僕がすごいって気づかないなんて、もったいないよねっ、きゃははっ!」

(……似てるけど、違う)

彼の無能アピールは俺のような裏目的があるというより、自分は本当は凄いのに誰からも評価されないから『無能キャラを演じてるんだ』と言い訳しているだけに見える。

だが、なぜかそれだけでない気がする。

まるで「ほら、無能な人間が言い訳してるんですよ」と言い聞かせているような、そんな軽薄さ。

「アルヴィンくんも、ほんとはすごいんでしょ? 

でも弟が優秀すぎて肩身狭い系? 

わっかるぅ~、うちも弟、最近持ち上げられてさ~……」

「は、はぁ。カインは実際優秀ですから」

こう言ってはアレだが、第一王子がアレだからって理由で持ち上げられてる第二王子と、我家うちのカインを一緒にするなと、心底そう思った。


……いや、待て。周囲は演技として見ていない?

その時、やっと違和感の正体に気がついた。


あまりに自然に受け入れられているだらしなさ。

忠臣もまともにおらず、侍女も、婚約者さえも「そういうもの」として見ている。

違和感を口にする者は誰もいない――が、俺にはどうにも引っかかった。

何かが噛み合っていない。

まるで役を演じ続けることでしか正気を保てない人間みたいな……そんな、ズレ。

「ねっ? 似てるでしょ、僕たち! 世間が認めない天才同士、仲良くしよ~!」

「……ええ、そうですね」


態とらしく手を振りながら王子が話しかけてくる。

「いや~、こうしてティーパーティー開いた甲斐があったよぉ! 

アルヴィンくんも来てくれたし!

こうやって、エルナとも仲良く出来るしね。

きゃははっ♪」

きゃははっ、と笑う王子の声が、やけに響いた。



「さてさて、そろそろ夜会の準備だよねぇ~。

アルヴィンくんも、ぜひこのまま参加してよね! ね? 期待してるからっ♪」

「……はい、光栄です。

ところで、アレクシス殿下。

今回の夜会には私も同伴者を連れてきていますので、紹介させて頂きます」


そう言って、俺は横に立つクラリスへと視線を向ける。


「彼女はクラリス・エインズワース・ローレン。青の塔に所属している魔術師です」


「へぇ~、青の塔って凄いなぁ~!」

アレクシスは一瞬、驚いたような表情を見せた。

「青の塔の方とは珍しいですね。

いえ、青の塔自体がで無く、確か、アルヴィン様の属する黄色の塔と常に競い合っていると聞いていますが」

興味を引かれたらしいエヴァンジェリンが優雅に微笑むと、クラリスは静かに頷いた。

「……よろしく」


相変わらずの簡潔な挨拶。

クラリスは青の塔でも高位の魔道士であるエルネスト先生の弟子で、彼女自身もかなり高位に属するらしい。同時に、エルネスト先生はなぜか俺に対して興味を持っているみたいなので、取り込もうとして彼女を積極的に俺に接触させているのだろう。

まったく……どこまで本気なんだか。


「ふふっ、なかなか落ち着いた方ですね」

そう言ってエヴァンジェリンが微笑むと、クラリスは一瞬だけ彼女を観察するように見つめたあと、小さく首を傾げた。


「……なぜ?」

「えっ?」


思わぬ問いかけに、公爵令嬢が戸惑う。


「……?」

俺も思わずクラリスを見る。彼女の表情には疑問が浮かんでいた。どうやら、彼女もアレクシスとエヴァンジェリンのやり取りに違和感を覚えているらしい。


その時、ぱちんという音が響く。

エヴァンジェリンの膝に乗せられたアレクシスの手を、彼女が弾いた音だった。

だが、その時みた。

無能・スケベ・だらしないの三拍子がそろった第一王子を嫌っているはずの公爵令嬢が、本当に哀しそうで儚い笑みを浮かべたのを。


「相変わらず、照れ屋さんだね♪」


ようやくかみ合った。

道化師ピエロがわざと失敗しておいて、それを大げさに言い訳する事で笑いに変えるように、言い訳する事で本当に失敗したんだと周囲に駄目押しする第一王子。

そんな王子の思わくに気がついて、本当に失敗したんだと信じているフリをする公爵令嬢。


「今の、必要?」

クラリスは気付いたのだろうか?

よくわからない。

だが、アレクシスを狼狽えさせる事には成功した。

「いやあ、もちろん必要さ!

エルナは照れちゃってるけどね」

狼狽のあまりなのか、適当にごまかそうとする。

「ほら、婚約者としての愛情表現というのは大事、大事!」


「愛情?」

クラリスが淡々と繰り返す。

「そう、愛情! 愛情こそ国の宝!」

「……?」

クラリスは納得していない様子だが、それ以上は何も言わなかった。

「まあまあ、クラリス。細かいことは気にするな」

俺が軽くフォローすると、彼女は納得したのか、静かに頷いた。

「……わかった」


俺は静かに考えながら、二人の様子を観察し続けた。

すると――

「なら、これも自然」

クラリスがそう断言すると、いきなり俺の手に自分の手を絡ませてきた。

いわゆる、恋人繫ぎというやつだ。

「……!?」

一瞬の出来事に、思わず目を白黒させる。

「パートナーなら当然」

クラリスは何事もなかったかのように淡々と言い切った。


エヴァンジェリンが小さく目を見開き、アレクシスも「おおっ?」と興味深そうに俺たちを眺める。

そして、アレクシスはふっと肩を揺らしながら笑い出した。


「ほんとに、確かに、見事なまでに自然なふるまいだ!

良いだろ、エヴァンジェリンさん」


大きな腹を揺らしながら愉快そうに笑うと、アレクシスは自分の腹を軽く叩くと、エヴァンジェリンの手に自分の手を絡めようとする。

「何するんですか。

……まったく、仕方ない」

さすがに今度は、仕方なくと言った感じで、エヴァンジェリンはアレクシスの手を払う事なく、二人は指を絡める。


だが俺は見逃さなかった。

アレクシスが彼女をエヴァンジェリンさんと呼んだこと。

エヴァンジェリンが顔を真っ赤にしながら怒ったこと。

その両方を。

その意味はわからないが。


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侯爵家に転生したけど、無能な方の長男でした 製本業者 @Bookmaker

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