第47話
あたしと遙人くんの間に重い様な、何か張り詰めた様な、そんな空気が生まれしばらく互いに黙り込んでしまう。
先にその空気をバスっと遮断してくれたのは、遙人くんだった。
「なんか上手く言えないけど、鳴海の期待通りの答えが出せなくてごめん。」
「いやっ、橘くんが謝ることないよ!私の方こそ探る様な事してごめんね。」
「良いんだ。ただ、その 、勘違いして欲しくないんだけど泣かれると反応に困るかも。」
「え 、それは、えっと…ごめんね。」
「ふっ、なんか謝らせたい訳じゃないのに、さっきから謝らせてばかりだな 、俺。」
このあからさまに重い空気どうにかしたい。どうにかしたいのに、こういう時どうしたら良いか分からない。匠海や雅らがここに居たら一瞬でガラリと変えちゃうのに。
グルグル悩んでいると、ふと脳裏に雅のことが頭をよぎる。
あたしそういえば雅を追って…。雅!!!ここから早く出て彼女の元に行かなきゃ!!
そうと決まれば、あたしは勢い任せに自らの身体を起こそうと試みる。
___ が、急にぐらりと視界が歪む。やばい、まだ駄目だった … 、?
あたしの身体はと言うと、後ろに倒れ始め、いつもの様に橘くんによって受け止められる、それだけだと思ってた。
__ が、今回は何かが違った。何が違うかと言うと、いつもなら受け止められるだけなのにどういうことなのかギュッと身体ごと抱き締められた。
「 …え、た、橘くん … ?!」
「 …はぁ。お前と居ると、自分が自分じゃないみたいで嫌になる。」
何か言おうと彼の身体からそっと離れようとしたその時 ___ 、
「何逃げようとしてんの、?今は駄目。今だけはこのまま。」
__ 神様、何が起こってるの?あの橘 遥人 が …、このあたしに対して、出会ってから今まで幾度なく理不尽な言い掛かり、酷い態度を見せて来た最低クズ野郎の彼が、まるで大切な物を見付けて二度と失うものかみたいなどっかの少女漫画に出てくる様な事してるんだけど?!!
そんな事を脳内では思いつつも、あたしの心臓は過去一煩いくらいの大きさで脈打っていた。
そして今みたいなこの時間が、ずっと続けば良いのにな、なんて心のどこかで願ってしまうあたしはどうかしてる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます