Ⅰ.私の好きな人

大学4年生の9月。

夏休みが終わり、就職の内定ももらい、就活を終え、後は必要な単位の取得のために講義やゼミに出席し、卒論を完成させるのみとなった。


今日も出なければいけない講義の出席を終え、バイトへ向かう前に、学食で昼食を摂り、しばしの休憩をしていたのは、塩崎しおざきめぐみだ。


めぐみは、箸を止め、ある一点を見つめていた。


「――また見てるのか」


めぐみの前に座っている男――速瀬はやせ陽生はるきは、呆れた顔をして、日替わりランチを頬張っている。


「よくもまあ、飽きないな」


「そりゃあね」


「好きなんだもんな」


陽生の呟きに、めぐみは特別反応しなかった。

いつものやり取りだからだ。


めぐみが見つめていたのは、美濱みはま律騎りつきだ。

陽生と同じく、日替わりランチをお盆に受け取って、めぐみと陽生の元へと近づいてくる。


「2人とも早いな」


律騎は当たり前のように陽生の隣の席に座った。


「お疲れ」


「おう」


めぐみの軽い挨拶に、律騎はより軽く返す。

陽生はチラッと律騎を見るだけで、それを律騎も気にしていない。


全てがいつもと何ら変わりない様子だった。



めぐみと陽生、そして、律騎の3人は、幼馴染である。

近所に住んでいて、家族ぐるみの付き合いがあり、物心ついたときからずっと一緒だった。

陽生の家には大きなテレビがあるからテレビゲームを、律騎の家ではバスケットゴールがあるからバスケを、めぐみの家では宿題を持ち込んで勉強をする。

何をするにも3人が当たり前だった。


家が近く、一緒に勉強もしていれば、自ずと進路も被る。

さすがに学部は違ったが、同じ大学にまで進学した。


大学生になっても、幼馴染の仲は変わらず、学部は違うが、時間が合えば、こうして学食で食事を摂ることにしている。



「りつ。急いでるのか?」


陽生が言うように、律騎は陽生の食べた量に追いつきそうなほどのスピードで食らっていた。


「あぁ、ちょっとな」


口を開くのも時間がもったいないとでも言うように、とにかく口へと掻き込んでいく。

喉に詰まらせないか不安になるほどだった。


「授業なかったよな? ……あー、彼女か」


「ま、そんなとこ」


律騎は味噌汁を飲み切ってしまい、明らかに食べるスピードが落ちていた。


「りつ。水、飲んだ方がいいんじゃない?」


「あ、忘れてた。水、取ってくるわ」


律騎は席を立ち、真っ直ぐウォーターサーバーへと向かった。



「睨むなよ」


陽生はめぐみを見ずに言った。

見なくても、めぐみの表情は分かると言わんばかりだ。


「はるってそういうとこあるよね。わざとでしょ?」


「何が?」


「わざわざ“彼女”の話出して」


律騎は話すつもりがなかったようだったのに、わざわざ陽生が理由を引き出したのだ。


「でも、めぐ、全然動じてなかったじゃん」


「……どんだけ片思いしてると思ってんの」


どんな自慢だ。自分で言っていて恥ずかしい。

残りのうどんをあっという間にすする。


陽生はクックッと笑った。



水を入れたグラスを持った律騎が戻ってきたと同時に、めぐみは席を立った。


「午後からバイトだから先に行くね」


「いってら〜」


律騎と陽生に手を振り返し、めぐみは早々と学食を後にした。



めぐみは律騎の彼女の存在を知っている。


彼女は、律騎の居酒屋のバイト先の先輩だ。

その居酒屋に陽生と冷やかし程度に行ったときに、会ったこともある。小柄で可愛らしく、守りたくなるような雰囲気の女性だった。


律騎の歴代の彼女は、全員知っている。

彼女も例に漏れず、年上で大人びていて、それでいてか弱く見える。


めぐみとは正反対と言っていい。

律騎にとってめぐみはタイプの女性からはかけ離れているということは、割と早くに悟った。



大学生ともなると、中学生や高校生のときと違い、幸い顔見知りと付き合うことはないので、彼女といる律騎を見て傷つくことは、まずなかった。


それに、そもそもめぐみは律騎と付き合いたいとは思っていなかった。

そうであれば、彼氏など作らないし、早くに律騎にアプローチしている。


彼氏を作るのは、メリットが多い。

自分を好きだと言う彼氏といれば、気持ちも安らぐし、好きという感情を別に向けることで、律騎への気持ちを欺けた。


何より、律騎の彼女に警戒されないのだ。

幼馴染としてずっと近くにいて、それでも恋愛対象にならない。それを知って、彼女は安心する。


律騎もだ。彼氏がいるから、友達として接してくれる。


律騎の一番の親友でいたい。

好きな人の一番の理解者として傍にいられたら、付き合えなくてもいい。


もちろん、彼女ができたと一番に話してもらえるのは、胸がちくりと痛むが、それは一瞬で、嬉しい方が上回る。

心は痛めても、嫉妬は無縁だった。


だって、自分は律騎の一番の女友達なのだから。

きっと、これからもずっとそんな関係であれると信じて疑わなかった。




めぐみがバイトをしているのは、大学近くのコンビニだった。

大学生になってから、そのコンビニに通ううちに、店長と仲良くなって、会計のときにバイトを探しているという話をしたら、うちで働かないかと誘われた。


「はるも一緒に3人でバイトの面接受けようよ」


めぐみが誘うと、ちょうどバイト先を探していた律騎と陽生も乗ってきて、面接の結果、3人とも採用となった。

人手不足だから助かったよ、と店長には深々と頭を下げられたのだった。


それから4年生となっても、コンビニでのバイトは3人とも続けている。長年働いていると、融通も効くため、居心地がよいのだ。


ちなみに律騎は、コンビニのバイトが落ち着いた頃、居酒屋のバイトも始め、掛け持ちしている。遊ぶお金が欲しかったらしい。


大学からは徒歩10分ほどのコンビニなので、少々考え事をしているうちにたどり着いた。


これからはバイトのことだけに集中しなければ。

めぐみは深呼吸をして、コンビニの扉をくぐった。




品出しをしているとき、店内に来客があったことを知らせるメロディーが流れ、反射的に「いらっしゃいませ」と言う。


振り向いて顔を見れば、陽生だった。


「お疲れ」


「もうそんな時間。お疲れ」


4時間の勤務が終わりを迎えたと、そこで気づく。

陽生がめぐみと入れ代わりでバイトに入ることになっていたのだ。


「置いててくれていいよ」


「ううん。もうちょっとだからしてしまう」


陽生をバックヤードに見送って、めぐみは急いで手を動かした。




陽生と軽く話をした後、コンビニを出て、真っ直ぐスーパーへと向かった。


スーパーでは夕食の食材を買い込んで、一人暮らしの部屋へと向かう。


スーパーを出ると、薄暗かった。

さすがに9月半ばともなると、日が暮れるのも早くなる。


都会の夜は明るい。

夜と言うには少し早い時間ではあるが、夜が深くなっても、同じように感じる。


地元の夜は闇が深く、もっと星が綺麗に見える。

ここほど物が溢れていない分、厳選されたものしかないのだ。



めぐみが一人暮らしを始めたのは、半年ほど前だった。

実家から大学は通学可能圏内であったが、就活が山場になった頃、不便になった。就活の空き時間を持て余したり、通学時間がもったいなかったり、デメリットがあったのだ。それに加えて、就職してから一人暮らしをするより、今のうちに慣れておきたい気持ちもあり、実家から出て一人暮らしすることを決めた。


一人暮らしのアパートは、律騎と同じアパートだった。

めぐみの親が娘の初めての一人暮らしを心配して、幼馴染である律騎の近くに住まわせようとし、ちょうど律騎のアパートに空きがあったことで、その部屋に決まった。


めぐみの心境は複雑だった。

階は違うとは言え、同じアパートなので、タイミングが合えば一緒に大学に行くこともできるし、休みの日も自然に一緒に食事を摂ることもできる。

それは、一番の女友達としては、嬉しい面だ。

しかし、律騎が彼女を連れ込む場面も見ることになる。気軽に会える反面、見たくない場面も見ることになるのだ。



「めぐ」


階段を上ってすぐに、誰かに名前を呼ばれた。


一瞬で、気持ちが持っていかれた。

声の主が誰かは、顔を見なくても分かる。


めぐみの部屋の前に立っていたのは、律騎だった。


「やっと帰ってきた」


「えっ、待ってたの?」


「あぁ」


「連絡くれたら、帰ってすぐに部屋まで行ったのに」


「そうしようと思ったら、めぐが見えたから」


律騎は、片方の口角だけを上げて笑う。


普段は大体無表情なのに、たまにこうして笑うのだ。

限られた人にしか見せない、油断したその顔が、昔から好きだ。


「どうしたの?」


持っていた食材を詰めた袋を反対の手に持ち替える。

平静を装っているつもりだが、動揺が体には表れている。


「今から?」


答えではなく、質問が返ってきた。

律騎はめぐみの持つ袋を指差していた。


「うん。食べる?」


「食べる」


律騎が即答したから、めぐみは思わず笑ってしまう。


「今から作るから、ちょっと待たなきゃだよ?」


「いい。待つ」




律騎は飲み物を取って来ると言って、自分の部屋へと戻っていった。


めぐみはそのうちに部屋へと入り、慌てて机の上を片付ける。


律騎を迎え入れる予定などなかったから、少々散らかっていた。参考書やパソコン、畳んだ洗濯物など、定位置に戻し、机の上に夕食の置けるスペースを確保する。


ある程度片付けてから、めぐみはキッチンへと向かった。

2人分作るつもりもなかったが、食材はいつも2人分以上用意できている。


律騎はお腹がすいているようだったので、時短でできる料理がいいだろう。

野菜炒めにしようと決めた。


食材を切り始めた頃、律騎が戻って来た。

当たり前のように鍵の開いたドアから入室してきた。


手に持っていたのはペットボトル。コーラだった。


「ホントに好きだね、コーラ」


「うん。好き」


コーラが羨ましい。

律騎に小さい頃から一途に思われていて、あんな顔で好きと言われるなんて。


「めぐの分も持ってきた」


「いいの? 貴重なコーラ」


「いい。1本あげたところでなくならない」


律騎の家には大量のストックが置かれている。

冷蔵庫だけでなく、段ボールの中にもあったと思い浮かべ、律騎の言葉に納得した。


「めぐん家って、全然物増えないのな」


「あー、りつと比べたら物は少ないね」


律騎は1年生の夏休みから、一人暮らしを始めた。

住んだ年数が長ければ、自然と物は増えるだろう。


律騎が3人の中で抜け駆けして一人暮らしを始めたとき、一緒に大学に通えないことが寂しくて、それを陽生に吐露をしたことがある。

そしたら、終電がなくなったら泊めてもらえるよ、と陽生に言われ、それもいいかもしれないとすぐに受け入れた。


実際、律騎の家には何度も泊まらせてもらった。

滞在はめぐみだけでもあったが、宿泊は陽生もいるときだけだった。その線引はきちんとしていた。


もういっそのこと、自分が男だったらよかったのに。

男だったら気兼ねなく、一番の親友として気軽に泊まることもできただろう。


年上だったら、少しは恋愛対象として見てもらえたかもしれない。


いや、性別も年齢も関係ない。

同い年の幼馴染として出会えたから、大学生ここまで友達として近くにいられたのだ。


野菜炒めは慣れたもので、手際よく切った野菜と豚バラを炒め、オイスターソースで味付けをした。


スマホをいじっていた律騎も手を止めて、食べる準備を手伝ってくれた。



コーラはグラスに注がれ、シュワシュワと音を立てた。

コーラで乾杯して、熱々の野菜炒めを頬張る律騎を見守る。


「うまい。やっぱめぐの手料理はおいしいな」


めぐみは胸を撫で下ろしてから、自分も野菜炒めに箸をつけた。

料理だって、元々好きではないけれど、律騎がそう言ってくれるから頑張って作れるようになった。


何か始めようとするときのきっかけは、大体律騎に起因するものだった。

そう考えると、めぐみの人生に律騎はかなりの影響を及ぼしている。




律騎のことが好きかもしれないと思うようになったのは、中学2年生のときだった。

当時、律騎は告白された女の子と何となく付き合い始めた。


律騎と陽生とは家が近く、一緒に登下校することも多かった。

テニス部の律騎と、吹奏楽部のめぐみと陽生である。部活のタイミングによっては、なかなか一緒に行けなかったり、帰れなかったりすることもあったが、テスト期間などの部活がないときは、必ず3人一緒だった。


家から学校の道中、行きたくないなんてだらだら言いながらも向かう。帰りは、くだらない話をしながら、たまには寄り道して、みんなで親に帰りが遅いと怒られる。

それは、家の近い幼馴染の特権だった。


それなのに、何となく付き合った彼女は、あっさりとその特権を奪っていった。


陽生とは変わらずいつも一緒だったから、楽しいことには変わりなかったけれど、こんなときいつも律騎ならこういうだろうとふと考えて、寂しくなることも多々あった。


「りつが彼女なんて作るから、3人で遊べなくなるんだよ」


今思えば、どんな立場で言っているのかと思うが、当時のめぐみは至って真剣だった。

律騎はめぐみを笑ったりしなかった。


「お前らが一番に決まってるだろ。めぐとはると遊ぶ方を優先する」


そう言って口の端を上げて笑うのだった。


その言葉は、今でも忘れられない。

ずっとめぐみの心に留まって、離れようとはしない。


その彼女と別れた後、“何となく”で付き合ったわけではなく、相手があまりにも本気で告白してきて、応じたくなったからだと、本人が教えてくれた。照れ隠しだったらしい。


ちゃんと真剣に向き合う姿がかっこいいと思った。

もしかしたら、そのときが初めて律騎をかっこいいと思った瞬間だったかもしれない。



そして、極めつけは、高校生になってからだ。


3人とも同じ高校に進学した。

高校生ともなると、男女の幼馴染は距離を置くものらしい。

一緒にいると、恋愛関係にあるのでは、と好奇の目で見られるようになった。律騎と陽生のどちらと付き合っているのかとか、どちらがタイプとかだ。

そんな関係では全くないのに。


めぐみも新しくできた友達と遊ぶこともあって、登校は3人ですることが多かったが、自然と下校は別々になることが増えていった。

それでも、家は近いから、たまにはお互いの家でゲームをしたり、家族ぐるみでのバーベキューをしたり、会う機会は減らなかった。


一緒にいることが当たり前だっためぐみが、衝撃を受けたのは、律騎の彼女からあからさまな嫉妬の目が向けられたことだった。

当時、律騎の付き合っていた人は、律騎のことをよく周りに自慢するタイプで、嫉妬深い人だった。

だから、当たり前のように親しげに接するめぐみを快く思うはずがなかったのだ。


次第に学校で律騎には近寄れなくなった。



「彼氏、作ったら? 奪われるかもしれないと思うから、あっちも不安になるんだよ」


そんなときに、陽生はあっけらかんとして、そう言ったのだ。


陽生は、ちょうど部活の先輩がめぐみに好意を寄せていることを知っており、彼と付き合うことをすすめたのだった。


先輩は誰にでも優しく、いつも穏やかな人だった。 周りが慕うように、めぐみも好感を持っていたので、告白されて付き合うことにした。


めぐみに彼氏ができたと知った律騎の彼女は、めぐみが律騎に近づいていなかったとしても敵意をむき出しにしてきていたはずなのに、律騎に話しかけたときくらいしか睨まれなくなった。

陽生の言う通りだった。


しかし、律騎は彼女のことを特別好きだったわけでもなく、次第に上手くいかなくなったら、当初の敵意は戻ってしまった。

嫉妬や不安に駆られた彼女は、めぐみが彼氏もいるのに自分の彼氏に色目を使ったと、周囲に吹聴した。


それを律騎は黙って見過ごすことはしなかった。


「めぐは特別なんだ。めぐにそんな態度取るんだったら付き合えない。別れよう」


律騎は彼女をキッと睨み、彼女が怯んだのもお構いなしに、一息で言い切った。


淀みのない声に眼差し。

その横顔がとても綺麗で、めぐみは息を呑んだ。


驚きに口をパクパクとさせる彼女を置いて、律騎はめぐみの手を引いて、ずんずんと歩き出す。

めぐみは足を取られないように、しっかりと地面を踏み締めながら、律騎の後ろを歩いた。


本当に律騎にとって自分は特別なのだと、まざまざと感じ、めぐみは彼女と変わらない顔をしていたように思う。理由は全く違うけれど。


あのときからだと思う。

律騎の“一番”や“特別”という言葉が、めぐみを縛り出したのは。


はっきりと言いたいことを口にしてくれることが嬉しくて、羨ましくて……。


とにかく、律騎はめぐみにとって“特別”だった。

これからもずっと、それは変わらないだろう。




「――彼氏、男と2人きりで嫌がらねぇのか?」


「上がってきたりつが言う?」


「それもそうか」


律騎はフッと笑って、グラスにコーラを注いでゴクゴクと飲んだ。


「そもそも幼馴染だよ?」


「今まで何もなかったもんな」


「そうだよ」


想像できていた律騎の反応に、胸がチクリと痛む。

自分から切り出したのに傷つくなんて、馬鹿だ。


あぁ。これも彼氏と上手くいってないせいかな。


心に隙があって、律騎の入る間ができてしまっているような気がする。


「そもそも、ここ来たことあんのか?」


「彼氏が? 入れたことないよ。汚い部屋には」


「おい。俺はいいのかよ」


「いいでしょ」


さっき来る前も片付けたし、何ならいつも律騎が来るかもしれないと思って片付けているくらいだ。汚い部屋とは思っていない。

かと言って、律騎が綺麗過ぎて引くのはごめんだから、本を山積みにしてみたり、わざとちょっと散らかしているところがある。


結ばれない相手にここまでするのかというくらい、気を遣っている。端から見れば、滑稽だろう。


「まぁ、俺はいいか。めぐの部屋が汚いくらい、気にならないから。めぐと会えれば」


「……ただあったかいごはん、食べたいだけでしょ」


「え? バレた?」


律騎はニッと口角を上げて、面白そうに笑う。


めぐみはパシリと律騎の背中を叩いた。


律騎は「いてっ!」と声を上げるが、余計にまた一発お見舞いしてやりたくなる衝動に駆られる。


「でも、めぐのだからだよ。別のやつのじゃ駄目」


律騎は、たまにどきりとする言葉を吐く。

だから、律騎への気持ちが鳴りを潜めていたと思っていても、途端にぶり返してしまう。


彼女持ちの男が言うセリフでは、絶対にない。

それなのに、苛立ちよりも嬉しさが込み上げる自分に嫌気が差す。


このままの関係をよしとして、結ばれようとしないのならば、いずれは諦めなければならない。

そのときはいずれ来る。


そのことに、このときのめぐみはちゃんと分かっていなかった。

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