3人目の独白


俺は真っ暗になるといつも姫との思い出を思い出す。


暗くなっていく過程が見えるからあまり問題はないけど。

苦手なことに変わりない。

だから、ここに姫がいれば良いのにって思ってしまう。



さて、このグループ1明るい俺がここまで暗くなるのは良くない。

だから、俺が暗いところが怖いっていうのはご愛嬌であり、秘密ってことにしてもらいたい。

まあ、今のこの空間は多少蝋燭の明かりがあるからマシかなぁ。

でも、灯りはもう少しあっても良い気がする。

流石にこれは、神聖さの演出よりただの古い館風のお化け屋敷のようだ。

やっぱり明かりが物足りない。てか、もっと明るい方が俺に似合うだろうっていう俺の発言に姫なら同意してくれると思うんだけど。



まあ、でも秘密を暴きたい系の人ならなぜ俺が暗闇が苦手なのかきっと気になるだろう。

それには、俺の唯一ともいって良い暗い過去が深く関わっている。




俺は昔虐待されてたらしい。


詳しいことはもう覚えてないし、昔は虐待と言われても理解はできなかった。

ただ、真っ暗の部屋にいつも居たことは覚えている。

ご飯もあまり出なかった。

ほとんど覚えていない。

いや、きっと覚えているのだろうけど、思い出せないと言った方が正しいかもしれない。


これが虐待に入るのかいまだに俺にはわからない。

だって、母と名乗る人物は確かに性格がガサツで横柄なところはあった。

娼婦から貴族の嫁になるだけの器量も全てを兼ね備えている人物だったからこそ、身分に厳しかった。


ちなみに俺の生みの親ではないらしい。

生みの母親は俺を産んでからすぐ事故に遭ってしまったらしい。


その後、意気消沈していた父らしき人をたまたま助けたことがきっかけでこの家に来たらしい。

もちろん、母には子供がいない。


きっと父が望まなかったからだろう。

でも、それに納得して良き母となっていたらしい。


父が事故に遭うまで。。。


俺の年齢が2桁になった後ぐらいに事故に遭ったらしい。

俺の周りの親族は母を疑って、ひどい言葉を投げかけ続けた。

でも、凛として家も財産も俺もメイド一人さえ奪わせなかった。

父から俺が引き継げるように全てを守ったのは紛れもなく、母だった。


でも、母と名乗る人物に成り下がったあの日。

母はとても泣いていた。

父のお墓の前で人目を気にしずに大泣きしていた。


何がきっかけだったのかわからない。

けど、そこからの生活はずっと荒れていた。


あの時、今の仲間の1人が俺を救い出してくれた事を今でも感謝している。

仲間たちは俺の家はまあまあ裕福だったから、金や宝を盗もうとしていたらしい。

けど、実際宝物庫にいたのは俺だけ。

ほぼほぼの中身は母が父が亡くなった後に豪遊して使い果たしていたらしい。

だから、今俺は生きていられる。

あんなクソみたいな家から出て、今がいちばん楽しい。

感謝はしているが、きっと本の中の家族というものを誰も考えられなくなったのだろう。きっと歪でも家族になろうとした果てがこれだ。

だからこそ、俺はあの時救い出してくれた仲間が神のように見える。

それは今でも変わらない。

あの日ロウソクの灯りだけで家の中抜け出した思い出が今でも思い出せる。

小さかった俺の初めての冒険であり、最後のわがままだ。


あのあと、あの家は俺が消えたことにより没落した。

母が今どこで何をしているかは知らない。

でも、きっとまだ生きていると思う。

だって、あの人は唯一俺とちゃんと向き合って育ててくれた人だから。



でも、宝物庫での生活が長かったせいか、いまだに俺は暗い場所とか、ロウソクとか小さい灯りの時は何かに怯える恐怖心が俺の中で芽生えている。

別に何かがいるわけでもなんでもない。

ただきっと心は傷ついてしまっていたのだろう。

だから、体の震えを武者震いのように溜めて排出する術まで覚えていたのに。



俺が暗闇が苦手な事に気づいて初めて言葉にして認めてくれたのが、姫だった。


あの日、俺のいた城に似た宝物庫に行った。

子供達がいっぱいいた。

過呼吸になったらしい。

気付いた時には、姫が抱きしめてくれていた。

なんとか冷静を保って、子供達を協会が運営する孤児院に預けていった。

子供達の前では頑張れた。

つもりだった。


姫に俺の過去を話したことはない。

でも、もしかしたら、他のメンバーから聞いていたのかもしれない。

俺よりも小さい姫の手で俺の手を握り潰すのかって言う勢いでぎゅっと握った。

俺の震えた手を安心させるかのように握り続けていた。

姫の突然の行動にわけわかんなくて姫の顔を見ても姫はもう前を向いていた。

少し怒っているような、でもどこか悲しみに溢れている顔。


姫が見つめられてるのに無視するから、姫の手を握り返した。

そしたら、

誰だって苦手なことがある。

それを認め合うことが仲間じゃないかって。

笑えるぐらい、姫が真剣な顔して怒り始めるから。


笑えた。

だって、本当に嬉しかったから。

びっくりした気持ちもあったけど、俺のことを考えてくれたから嬉しかった。


まあ、絶対姫には伝えない。

嬉しかったことは言わないけど、もしかしたら、表情で伝わっているかも。

でも、姫のあんな真剣な顔は俺だけが知ってれば良い。

だって、あの時の姫は母と同じ顔だから。

願わくば、独り占めしたい。

母に言えなかったわがままもおねだりもしてみたかった。

そんな気持ちが溢れてくるけど、そんなことできないって知ってる。

だから、絶対に誰にも教えてあげない。


それにみんな、姫の笑顔以外の顔それぞれ知ってた方が良い。

だって、あいつの前ではいつも以上に感情が出る姫なんだから。

あいつだけ知らなければ良いよね。

まあ、時間の問題だよね。


まあ、なにわともあれ、姫がいる今が大好きだから、これが永遠に続けば良い。

そのために俺は過去を見ない。

今を生きる。



だから、前の二人に倣って俺も叫ぶ。



姫、今いちばん輝いてるよ。

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