2人目の告白
俺が初めて姫と会った時は、今でも覚えてる。
あの日俺はいつも通り女の子に間違われてむしゃくしゃしてた。
いつもだったら気にならない。
女になりきって裏路地に連れ込み、殴って脅して金を取れば良いんだから。
でも、あの日は違った。
殴っても、金を奪っても何も面白くなかった。
だから、歌で発散してやろうとか思ってたのに。
この森の中心にある大きな木の根元で彼女は、姫は、あの日寝ていた。
姫は俺の定位置で寝てた。
月の光に照らされた姫の横顔はどことなく儚くて、それでもどこか力強さを感じる。
一目惚れだった。
なんて可憐なんだって俺のものにしたかった。
今まで見てきたどの女の子よりも惹かれた。
今までにないほどに独占欲が湧いた。
きっとさっきの男は彼女との対比のためだけの男だと思えるほどに俺は彼女を手に入れたいと思った。
でも、姫は俺が近づいた物音で起きた。
俺の気持ちをカケラも知らない姫は、なんとも言えない可愛い顔で
「あー、いつもうたをうたっているおにいさんだー。」
って言ったんだ。
全てがひらがなになるほどの寝起きの柔らかな声だ。
なんて可愛らしいのだろう。
でも、歌を聞かれるのは嫌い。
特にメンバーには聴かれたくない。
だからこんな森の中心にまで来ているのに、なぜか姫には思わなかった。
なんなら嬉しかった。顔に俺の感情は漏れ出てしまうほどに。
ほんとうに心から惚れてしまってたんだろうね。
あの見かけだけはどこにでもいる貴族令嬢。
でも、実際はだれの手にも負えない、おてんばなお姫様。
単純すぎるだろう。
外見から漏れ出る、姫の人柄に俺は惚れた。
俺はすぐに姫と話し始めた。
自分が歌う歌の話、姫がいつ俺を知ったかなど話し始めたばかりだ。
姫を呼ぶ衛兵の声が聞こえ始め、また会うことを約束して姫は城へ帰って行った。
姫が衛兵の気を逸らしてくれて、俺も俺たちが住処としている場所に戻りやすかった。
それから、俺たちは満月の夜、毎回深夜になる教会の鐘が合図で、再開する。
まるで、どっかの国の話なのかと思う。
でも、俺にとってはそれが事実なのだ。
姫はいつも森で歌を歌っている俺のそばで楽しそうに聴いてくれる。
時には姫が歌ってくれる時もある。
音を奏でるものが声しかないはずなのに、いつもハーモニーが綺麗だった。
きっと姫のハモリが上手いからだろう。
まあ、俺のことなんて、ただの歌が上手なお兄さんぐらいにしか考えてなかったであろう。
あの時までは。
ある満月の夜。
俺は姫に会った日に出会った男に襲われかけていた。
どうやら、あいつはただの男ではなく奴隷商人だったらしい。
女っぽい俺の見た目は貴族に高値で売れると判断された。
前々から狙われてたらしいが、軽く対処してきたため、ちゃんとしたものを用意したらしい。20人以上はいるであろう傭兵の軍団に襲われかけてる。
いつも通り適当に対処できるはずなのに、人数でも武器でも少し分が悪い。
気づいたら教会の鐘が鳴った。
終わった。
俺の姫に逢えない。
これを逃したら30日前後会えない。
そんなの俺の精神安定を失うことなぜしなきゃならない。
しかも、こんな雑魚どもに。。。
あいにく俺は今独り身だ。
どこにも所属していない、一匹狼状態だ。
姫に逢えないなら、死ぬほうがマシ。
このまま、死ぬまで暴れまくろう。
地獄の道連れはお前らだけなのが悲しいな。
と思いながら、街中で初めて大暴れした。
案の定、姫の親父さんをはじめとした、近衛兵達が出てきた。
全員牢屋行きだったが、姫の一言で俺は姫の部下になった。
俺が姫に忠誠を誓ったあの日。
姫はまた森で歌ってくれ、と懇願してきた。
自分を森へ連れ出して、一緒に歌を歌おうと。
あの日、姫は俺を朝方まで待っていてくれたらしい。
俺が約束を破るような薄情な男ではないと信頼してくれていたらしい。
だからこそ、俺は伝える。
片膝をついて、まるで姫専属の執事であり、護衛である、身分の差を象徴したゆな動きをして。
「ばかか、ひめ」
姫は先ほどまでの今にも泣きそうな顔からニコッて笑っていつも通りに戻った。
もう、姫を抱きしめることはできない。
もう、姫と二人森へもいけない。
だって、俺の手は汚れてしまっているから。
それでも、姫と歌うことはできる。
俺は姫の部下であり、姫の親父さんの部下でもある。
でも、姫がもし望まない相手に奪われるようなら、俺は姫を絶対に守り抜く。
叶わない夢ではない。でも、決して簡単なことではない。
だって、姫は姫なんだから。
あんなおてんばものを振り回す俺もまあまあやばいだろう。
でも、姫には敵わない。
だって、姫は知っている。
俺は姫が横で俺の歌を褒めてくれるためだけで働き続けられる。
俺がどれだけ姫のことを大切にしているかを。
だから、姫のためだけに俺は働く。
でも、そんな俺のことを姫は見てない。
いや見ている、けど知らないふりをする。
いや、もしかしたら歌が上手な女装家とでも思っているんだろう。
いやいや、性別をちゃんと認識しているかも怪しい。
俺だって、一応イケメンと呼ばれる部類なんだけどね。
そんな姫が男としてみてるのは。。。
まあこれからすぐにわかるよ。
だから俺もあいつに見習って言う。
今日も世界一可愛いよ、姫。
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