仮面

群衆が足早に通り過ぎる。

時折主婦が足を止めてこちらを見るが、またすぐに興味を失い、再び歩き出す。

今の季節であれば、厚手のコートにロングスカート、誰にも着られたことのないそれらは、倉庫特有のホコリ臭さと共に私に張りついている。

ガラスの中に佇む私は、常に誰かに好奇の視線を向けられる。

自分は楽しむことの出来ない御洒落を、道行く人々に教えてあげる。

それが私の存在意義。いつも日常の片隅に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る