花束を添えて

楽しむ者だけが楽しめる。

そう銘打った広告が、寂れた駅のホームで色褪せている。

外れ田舎にある実家への帰路、角を曲がると不意に目に入る広告に苛立ちを覚える。

この広告を見て、心を引かれて上京し、楽しむ暇も無く心を病み、それでも実家に帰ること無く身を粉にして働き続けたが、その会社も不況の煽りを受けて倒産した。

やっと家に帰ってきたかと思えば、ずいぶんと軽く、小さく、感情なんてものは持ち合わせていない。

我が子の笑顔は永久に眠ったままなのに、広告の中の少年は、今も無邪気に笑っている。

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