#隠せぬ子供の悔しい僕等は視線を交わそう

STORY TELLER 月巳(〜202

#隠せぬ子供の悔しい僕等は視線を交わそう

#隠せぬ子供の悔しい僕等は視線を交わそう

2022.11.15


【storyteller byTukimi©︎】

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side A


高校は、推薦枠で入学するのだと学校中が、思っていた、椎堂は、推薦を蹴り国立高校を選ぶと聞いたら、つい、奴の体を揺さぶり倒して拝み倒してでも、俺にそれくれよ、と言いたかった。


他の、レギュラーメンバーの角田が

つかみかかっていたから、

冷静に、キャプテンとして、止めなきゃならないなと、二人を引き離す間に、

激しい気持ちは、出す激しさを窄ませて。


もやもやを残したままだが。

あの時の角田がいなかったら、

俺がもし掴みかかっていたら、さて。


今がいいか、しなかった未来が良いのか、

分からない、だけど。

悔しくてかなしくて、だ。 


狭い部室の匂いすら忘れてしまうくらいに、

奴の声と蝉の声だけがして。

揺すられ強い声を浴びせられても無言を貫いた、空気。


何言うも届かないそんな、態度の人への

声は、やがて消えて。静まるほど居た堪れないから、か。

怒りを現した側から立ち去り最後に、

俺と椎堂。

先に出るかとした時に呼びかけられた。


キャプテン、と。

『したい、だけど、出来ないのって悪ですか?俺が、悪いことですか?』


『いいや。出来ない理由が、あるんだろう?』


『実はもう、働き始めるために、学校、前から辞めようとしてたんです。』


担任の江島先生から卒業までは、と言われて、それまで、楽しもうとした結果欲しかった推薦枠の話がきたけれど。


一部学費免除、では。

そして、必要なお金は。彼の、家族のためだから。


夏、楽しかった。

1番良い結果が出た、大会結果は学校を有名にするくらい、だったから。

活躍した何人かに、推薦があり。

受ける奴がいて、俺みたいに何のお呼びもなく、塾通いして、受験生に、なる。


その2択だとおもっていたのに。

冬が近い、今。

息白く喋る椎堂の、夏の顔と今の顔が別人のよう。


まるで電車で乗り合わせたサラリーマンみたいな、仕事で疲れ切った親に似た。

もう、すでに、大人な顔で。


少しだけ。

部活の話をした、時と

推薦を蹴った話の時だけに、わずかに滲んだ、食いしばる歯が、ぎりと音を立てた時だけが、俺の知っている、椎堂だった。


神様が、いるならと、最後に彼は。

『まさか掴めそうになる時にできない状況にして、梯子外ししするなんて、酷いですよね』

と笑って見せた。



悔しいくせに。

皆んなには、意地でも見せないつもり、らしく。時に泣いて見えるその顔はずっと、笑顔を張り付けたままにして、俺より先に出ると部室を出ていった。



寒いからか。

椎堂、俺の方が泣きたいよ。


説明したら、悔しいと泣き喚くなら、

角田は、きっとあんなにがむしゃらにお前に掴みかかって、といつめようとはしなかっただろうし。


キャプテンとは言え、椎堂の、お前の生活が傾いてきて、それを必死に普通なふうに装っていたのか。

それは、いつからだったのか。


そして、

弱音すら吐いて貰えない自分にがっかりするとともに、誰か。

話せる人が、いて欲しいと思って。


思いついて、副キャプテンの、八代にへ電話を掛ける。

(なんだよ、今彼女と、いるんだって言っておいたじゃん、芳我)


『おまえ、真っ先に部室出たけど、知ってたか?』

(ああ、奴はお前にはいい難いって言ってたよ。1番喜んでくれたからって)


『知らんかったん俺だけか?顧問のタッキーは知ってたんだろう?』


(多分部内なら、俺と先生だけだって。先生の提案から、俺に事情言って。で俺は芳我に言ったらと何度か勧めたんだが。)


また、後でと。

電話が向こうから切れた。


部員みんな、チームで使うSNSで。

19時によっちゃんの店で、と。

行きつけお好み焼き屋が書いてあり。

先生も、来るからと、書き添えてある。



悔しいが。

とりあえず戸締りして、部室の鍵を閉めて。

よっちゃん行くまで、河原でランニング、しよ。と独りごちたら。


『ヨーヘイさんは?』


下の名前で呼んで、躊躇わず背中を追いかける、後輩は。椎堂は、数分前に出たことを伝えると、走り去る。


多分、励まされろ、

泣けよ、と。

やっぱり、人に追いからるくらいの彼に少し悔しく腹が立って。

湿った気分が落ち着いたから。


とりあえず、本当に。

走りに行く。そして。走り疲れたら、よっちゃん行く。

キャプテンとして、話を聞く。


それからだ。



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side B


よっちゃんの、店の中は。

仕事終わりのおっちゃんで賑わって、いつも酒と大声でいっぱいだったけれど。


俺らが、打ち上げする、作戦会議するときは決まってお店の2階、おっちゃんやおばちゃんの住まいの方に通された。


そして、今日も。

メガネが曇るタッキーと、芳我がいて。

芳賀は後から来た俺に口を尖らせて、

いかにも、不満気に時間すぎてると言った。

いつも通りの顔だから笑えてまた、怒る芳我を真ん中にして。のれんの隣の勝手口から、おっちゃんを呼ぶと、オレンジジュース瓶3本片手に顎をしゃくる仕草。

サービスだ、と。



すでにあったおしぼりで、顔を拭きながら。

タッキーが、今の椎堂の話を手短に、淡々と話す。

だんだん、湯気の向こうで、眉を吊り上げていく芳我を見ながら、飲むオレンジジュースは減らない。


まるで材料を説明するだけに留めた、タッキーの声はお経みたいに、そして、湯気やヒーターの熱にさらされ眠気が来て、

人の声が、大きくなり、小さくなる波のなかで。


『それ酷すぎじゃん!!』


我慢し切れなくなり叩いた拳がちゃぶ台をたんと揺らし、ジュースが自分の指先に流れて、二人の顔を見たら。


俺そっち抜けで、椎堂いないのに、

酔っ払いみたいに怒って泣いていて。

タッキーが、泣き虫だってことを初めて知った。



泣きながら怒るうちの兄貴で見慣れていたが、まさかへらへらしたり、いじられる、大人が真剣に、さ。

身近にいる人が誰かの為に泣いて怒る姿に、戸惑う。

真面目に、熱くなる二人と違い、あまり、怒れない、と言うか。


『そんな、怒っても、どうにもならないじゃ無いですよ』


口が、勝手に言葉を押し出したら、

二人が同じ顔をして。


分かってる、わかっているけど、文句位言いたいんだ、と芳我は芳我らしく。


タッキーは、悔しいときは悔しがらないと、後から何度でも思い出して悔しく泣きたくなるぞ?と言った、が。


タッキー大人やん?と言ったら、

息が掛かる距離で、先生は。

結果はあるが、感情と、結果を飲み込むための理屈や現実は別物で。


頭でわかるだけじゃなく、

気持ちも納得するまで、愚痴ったり悲しんだり付き合ってあげないと、あとあといつまでも悲しい悔しい世界に引き戻されるんだ、と。


なんか熱い話の中身は全く分からないけど、お前は大丈夫か?悲しまなくて悔しがらなくて?と言ったそれは。


正直に出した方が楽だと、労わる先生の顔で。

分からないと言うも躊躇うし、真剣な心配顔されるのも心地悪くて。申し訳ないが茶化すことにする。


『わかったけど、さ。先生、鼻水垂れたその顔じゃさあ』

俺の声で、正気に戻った芳我が先生を指差し笑い出すと、いつもの、やらかした芳我を諌める部活の二人。


こっそり、こっちの空気がいいなあと思いつつ二人がひとしきり戯れ合うのを見て。

乾いていた喉に最初に注いだ生温かいジュースを流す。上手くない。


『美味しいかそれ?』


『飲んでみたら』


芳我も、水滴が落ち切ったグラスの中のジュースを飲んで。いけると言うと、メガネを外し顔拭くタッキーについで、素知らぬ顔で差し出したから。


『まずっ』


『そんな言っちゃダメだろ、せんせー』


先生は、また泣き上戸に入り。

焼きそば持ってきてくれたおっちゃんが、開けた襖を戻して、無言でお店に戻る。

足音すら消して。



何だかなく二人を

慣れた良く泣く兄貴の世話するようにしながら、二人と。


卒業までに、なんかしたい話をして別れた。

少なくとも、椎堂を一人にして卒業だけはしたくないよな、と言うのが一致したけど。



あまりに泣くから。


中身は別の日、別の部のやつも、入れて、再度仕切り直し、と言うわけ。


おやすみと手を降り別れた外は、残念ながら曇りで街灯がピンクにした空は、全く悲しみを誘わないはずが。


恥ずかしいが。

今更遅れて、悲しみが。

悔しさが。


とりあえず。拭える分、袖口で拭うと足早に帰ることにしたいが。

困る。キャラじゃ無いが。

視界がたわんでとても、自転車運転できない状況やん、まじか。


帰り着いたら戸を開けた先の兄貴に、驚かれ。また、夜が長く騒がしくなって少し。


落ち着いたからか、夢は見ず。

久しぶりに、朝が早く目覚めたが。

腫れた目、どうする?

ふと見た鏡のはしににやにやする兄貴を見つけて、握りしめた手に息吹き掛けると、慌てて引っ込んだ顔だが、残念、目は1ミリもどうにもならなそうだった。


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side C


顔に、悔しいとかいてあるぞ、と話しかけたらヨーヘイは。

当たり前だろうと、手を差し出す。

その手にアチアチな、ヨーヘイが苦手なホットレモンのペットボトルを渡したら、明らかに嫌って顔をしたが。

引き上げようとした僕の手を避けて急いで口をつけたから、ますます、泣き顔はひっどいものだった。


「すっぺーよ」

「嫌ならやめておけばいいじゃないですか」


大体人が少ない小遣いから、出した飲み物に

ケチつけつつも、飲むなんて。

今からでも返してくださいよ、と言うと。

冗談で、関接キスだぞ、と言う顔が全然、笑いも怒りも誘わない、悲しい人の姿だから。


笑えなくて。

笑えないけど。


気のいい先輩が笑わないのに戸惑う隙に奪い返して、しっかり仕返してホットレモン飲んでやった。

最後の一口以外。


だって、力一杯泣きぬれた体力使い切りの人からなんて、余裕で、逃げられる。

普段は無理でも。


「はい、お返しします」

「おう。え、ほぼ無いけど」


もうその、酸っぱい飲み物は役目を果たしたし。下手に中身があると、飲めと言われてまた困るだろうに。


後輩のささやかな気遣いにこの人は、気づいていない。今日も、じっと答えを待つ顔に、僕は説明をしてあげる。


「泣いたのホットレモンのせいにしてしまったらと思いまして」

「俺部の人に、ホットレモン弱いなんてバラしてないけど」


「だから、うっかり出くわして聞かれたらそのペットボトルと、俺の分のペットボトル持って、嫌がらせで飲まされたから泣いてるってでも、言うのはどうかなあと」


お前悪人なるぞと言う言い方に少し笑いながら。

ヨーヘイさん探しに部室前で、部の人に会ったから、より信憑性出ていいかもよ、と言添えたら。

ますます、俺にムッとしたらしいけど。


泣いたのバラします?との答えには断固拒否との事。そうでしょうとも。


「さあ帰りますよ」

街灯が付くから辛うじてアスファルトの紺色道がわかる程の暗がりになれば。


顔を見てわかる、そんな人は少ないし大体部活動ない、テスト休みの今日にぶらつく同じ学校のやつは、まあいないはずで。


そっとさいごまで、自宅まで送り。

僕も引き返して帰る。


先輩は、今日も気づかない。

僕が実は同じ種類のペットボトルを買った理由や、それを騒動に紛れてこっそり僕のとすり替えたことも。


気づかないから出来ること、側にいる権利をくれているけれど。

本当に、気づかないところが憎くて可愛くて、それが苦しいが。


まあ、これはこれ。

とりあえず一番、辛いとき励ますあれをやると、少なくとも前より仲良くなれるんでしょ?


明かりがない近道を走って。

急いで帰る。だって。

帰ったか?と、もう、ヨーヘイさんからメールが来てて。

帰ったって家からちゃんと言わないと。

また、可愛い気遣いから、送るの怒られて避けられるからな。


10年来の家鍵を出し、電気を付けると僕は。

帰りましたコールをして。

切る。


どうかヨーヘイさんが。

好きなだけこの後1人で泣けるように。

実はもう一つ仕組んだこと。


先輩のお母様と共謀して、炭酸系やレモン系ドリンクに、酢豚や、梅干しなど。

冷蔵庫は酸っぱいものしかない作戦をしたんだが。


そろそろ本格的に泣いているんじゃないか?


物の力を借りてでも。

悔しいって泣きたいって叫んでさ。


少なくとも中途半端に何しても哀しみを堪えた顔するくらいなら出し切るほうが、

いつものように笑う顔になる、と思うけど。


明日は、明日。

また、顔を見ながら帰りたいなと思いながら。渋々今日は1人ご飯をする。


何故なら、

ヨーヘイママの、酸っぱいご飯のおかずが、

共犯だからとある訳で。

2人は1人ご飯な僕を心配し、隙あらば差し入れ攻撃を、ある日は親ある日は子、でしてくれる。


だからこそ。

チンしたご飯は。

こう言う時のは、ヨーヘイ親子2人が居ないのに、いるようで。

なんか変に笑える。


さて。

ヨーヘイさん、ゆっくり、おやすみなさい。幸いに。

明日から部活なしのテスト間にある連休、休みなんだから。

テスト勉強、いつものように、教えてくれたら、嬉しいが。

明日の顔がまあ、どうなっているかそれも楽しみに。


おやすみなさい。




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side D


テスト終わりに椎堂を呼んで話を聞く。

で。上手く引き止めて学校から返さないこと。


これが、頼まれごと①。


テスト終わりで切りよく部活止める話はすでに聞いていたけど、再確認と言う口実で意思を確認しながら予定時刻まで引き留めるのだが。


まだ何か?と言う椎堂に、なんか先生らしく励ましの言葉を言おうとして、足止めしようとしていたが。

目の前の相手の顔から、唾が飛んだ。

汚ねえと、言いながら入り口をみたら、何を考えたか、俺が居た。

違う、俺の顔のお面を付けた部員たち数名がいて。

思わず吹いたら、椎堂に避けられ。

避けたばかりに部員に両側から腕を掴まれ連行される椎堂は。

ただ目を白黒させるばかりに俺を見るけど。


俺は関わってない設定だから、知らんて身振りをした。

「せんせー、何?これ何?」

「知らん。仲良しこよし学生同士でなんとかしろよ」

しつこくなんか言う、生徒の声は、聞こえないったら、聞こえないと、

俺は採点があると適当に理由付けて離れた。



後は奴らと。奴らが頑張って集めた人たちの出番。


その成行を。

この空き教室から、缶コーヒーと眺める。

一応顧問だから。一応色々許可得たし、トラブルするなと部員たちには言い聞かせたけれど。

果たして大丈夫かと思う瞬間に、戸の開く音。一瞬生徒かと身構えたが。違う。


「監督しないわけにはいかないか」

同じ学年担任持ちの香山先生は、何故かあたりめを持ち。

「なんだ、牛島先生、もかい。もの好きだね」


許可を得る先の1人だった、教頭の吉田義晴先生は、双眼鏡をいそいそとポーチから出しながら。

俺の側の席にそれぞれ座って観戦体制。



『引退試合したいんす、先生』


そう言って。

他校の同じ部活仲間にに声かけて。

敵も手強いチーム、人数集めたら

俺らは、俺ら最後の最後まで椎堂と同じチームメイトとして、共に戦う試合をしたいと。


試合の場を設ける為に動いたのは、キャプテン以下全員の希望と、真摯な気持ちに大人が動かされた形。



在校生がほぼ帰り人気ないテスト終わりを、

上手く使い、説得したのは副キャプテンの八代。


後は試合後、いい年して送り出しの雰囲気作りね花吹雪の花の代わりに。

まさか米粒を撒く頼み②、これもこっそりとやれと頼まれたが。

見てわからんか、これコッソリ無理だろ。

そう言うもの、の押し切られたからあるそれら、手元にザルと米袋を見た先生2人はまじまじと見て。



理由を伝えたら。


「代わりに引き受けましょう」

と教頭先生、続いて牛島先生も。

代わりにやろうかとにやにや言った。


屋上から撒く?

木陰から撒く?などと楽しげに話しながら。


離れて行った2人を背に、また、俺は1人。

俺の教え子たちの試合を見守るために、姿勢を正す。


開始の審判の身振りそして。

さあ、試合の行方は?




-お仕舞い-

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