七章(完+エピローグ)
「サザナカ!ナニエヤットイルノ!」
見ると女性だった。髪の毛の長い、長身な…
キリサナだ
サザナカ、隣人を睨みながら近付く。そして捕まえる。隣人はもがくがキリサナの力の方が強い。キリサナは俺達に「早く逃げろ」と言ったように聞こえた。他にもこれからについて何かを説明しているようだ。喋ってる言語は日本語なのかもしれないが微妙に何かが異なる部分があってよくは分からない。キリサナが指を刺した方向に扉があって開かれていた。中から光が出ている。
俺達はそこに向かって一身に走る。
そして扉を潜るとそこは元の展示室だった。後ろを振り向くと元の踊り子の絵画だった。しかし何やら描き加えられているようなものがある。……拳銃を持った紳士服の男性だ。
この絵画の作者は名前が無い。
あの後はどうなったのだろうか。あれはキリサナだ。スバルも感知をしていたらしいがあの者には特に何も感じなかった、生きているという。彼女の言っていたことを再確認する。発音の違いを正確にこちらの言語に当て嵌めると、あの者は不可思議な世界の旅人のようだ。あちこちの世界に行き、様々な仕事をしたり、時代も飛び越えた旅もしているようだ。かなり厄介な者で、人へ攻撃をする傾向があるようだ。精神病を抱えている事は確かで何と言う病なのかも知れていないという。あまりにもとにかくとして悍ましい者なので人は「旅人」と呼ぶそうだ。
しかしキリサナは「大丈夫。これ程悍ましい者だがあの男程では無い。」と最後の辺りで言っていたと思う。俺の訳が正しければ。
同時に理解をした。アイラは「おひめさま」をユウマの前で演じる事によってキリサナへ伝心をしていたのだ。この博物館はユウマの居た施設から見ると屋上がちょうどその辺りになると思う。施設の山から見たというのは実際にはこの博物館の屋上だ。そこでアイラは踊っていたのだろう。
この博物館は恐らくキリサナの居場所の一つでもある。俺の元職場には単にレイや土竜を閉じ込める為。自分の怨念向かい先である王への復讐。
この絵画を描いた者はキリサナだ。アイラはそれを分かっていた。毎夜のようにここの屋上で踊っていたなら説明が付く。キリサナは生前からここに自分の絵画を飾っていたのだろうか。恐らくアイラと同じくキリサナも力がある者で、何かしらで描いたこの作品を飾っていたのだ。
流石に俺には彼女が王に対して何の念を持っていたのかは分からない……
が、あの者は一時的に抑えられているようだ。時が来たら、また俺を追ってくる。
このように絵画の中にも入れて隠れられる事も出来るような者に対しては流石に悍ましさを覚える。この博物館から脱さなくてはならない。
いいや、何とかあの者を 倒す、と言ったらそれで正しいのかもしれない。殺す、というよりはその響きの言葉の方が正しさがあるのかもしれない。……何千年も生きているのだろうか。ガクルスやバゾマイのように。この博物館を抜け、ふと上を見るとアイラが居た。
「アイラさん!?フリーの推測は当たりか……?」とスバルは彼女に向かって手を振る。アイラはここでキリサナの絵画に対する念を感じているのだろうか。姉妹で念を感じ合うのが好きなのだろうか?すると近くで「今はあの者、サザナカを止める為に居るのですよね……。」と言われたらアイラが直ぐ隣に居た。スバルは真顔だ。
「姉は、絵を描くのが好きで…。このように博物館へ力を使ってでも自分の描いた絵を見て貰おうとするくらい。迷惑な事なのにね。そこまでの念なのです。」
「生前から?」と訊くと「ええ。生前から。」
と、そう言ってアイラは突然消えた。瞬きをする間のように。
あの者を止める為、と言っていた。止められるのだろうか…と言ったら二人に対して失礼になってしまう。が、そのような者だ。とにかくは逃げるしかない。あの二人は姉妹で念を感じるのが好きなのだろう。スバルは「俺の家へ戻れ。」と言ってくれた。甘えるしか無い事に恥じらいを感じる気はするがこの場合は致し方が無い。
スバルの家に戻り、様子を見る事にした。
何か起これば俺が対応をする。様子を見ている……それしか出来ない。
その時、メッセージが来た。
王からだ。確認する。
「こんばんは。フリー。今君はどうしているだろう?何かあったかなと思ってメッセージをしてみたよ。何も無ければこれは無視をして構わない。」
このメッセージを見た時少し安心をしたように気がした。王が居れば安心するようなものはある。あったままの事を伝えた。
結論から、やはり隣人は防げてはいないそうだ
時が来たらまたこちらに向かってくるそうだ
隣人…旅人は、いつ何処に発生をするか分からない存在。
俺が目を付けられたのは不運だった。俺が強いかららしい。これは恐らく王を恨むしか無いのかは分からない。
が、この力や出来る事で助かった事も多い。王は謝ったが笑っているようだ。反省をしていないようにも感じられる。疲れてしまった。
しかし隣人は倒せるには倒せるそうだ。何千年と生きてきたあの者を倒すにはそれなりの力が必要。それを俺が持っているのかは分からない。
良かったらスバルも一緒に王の城へ避難をしには来ないかと提案をされた。スバルに相談をしたら許可だ。「俺では君を守れないのだろうか」と落ち込みが感じられたがそのような事など無い。彼はよくやってくれた。王も同じ事を言うだろう。
彼が俺への尾行者だった事はこのような反転でもあるのだ。
支度はそのままで王の城へ向かう。行く道は穏やかだった。一応誰も何もしてこないので気が休まる。
城へ着くと見回りの者に話をして通してくれた。城の中に入ると平和で平穏そのもので心落ち着けた。
すると向こうから走ってこちらに何者かが向かってくる。あからさまに背丈が出ていたり髪の毛の色が妖艶で可憐に動いたり大柄だったり胴も足も長いので王だ。目の前になると上を見上げるが顔も最高だ。思わず俺もまた目が眩んだしスバルも同じようだった。
「よく来たな!君達。無事そうで何よりだよ。おいで。守るよ。」
王が俺達を迎えて王の部屋へ連れて行ってくれた。ここなら王、センタロウの部屋である為、何に襲われても大丈夫だそうだ。自分の家に居るように普通に過ごしていたらいいという。
こういう時に俺はアプリで読み物がしたい。スバルは念じ始めた。暫くすると彼の中から霊体が様々に出現をした。黒は勿論、日本武士のような服装をした者や女性のような者や動物のような者まで現れた。「いざという時の為に」だという。それからは彼も王のベッドでのんびりと機器でゲームだ。
バトルゲームだったり推理ゲームだったりアドベンチャーだったり将棋や囲碁の和風のゲームもチェスも勿論するようだ。彼が途中で一緒にやらないかと提案をしてきたりもした。囲碁や将棋は彼は強かった。チェスもかなり強い。
推理は二人共同じ結果になった。
アドベンチャーはその物語に二人で惹かれた。最後にどうなるのか、気になって見物だったりする。途中のバトルは敵を倒す爽快感がいい。レベル上げは地道に上げたり気が変わってサッと上げるようになったりした。何気にも楽しくて世界が楽しい。気が付いたらかなり楽しんでいる。これは王のお陰だ。世界が安心をしていられる。家具もきちんとした造りで安心出来る。
スバルから「お前…ここでかなり安心しているな…。良いことだけどさ、俺の家も良かったろ?」と言われる。勿論だ。しかし俺は王から生まれた存在である事は彼も知っている。彼は「まあよかった。」と笑顔になった。彼も休めているようだ。安心だ。そのように過ごしていると王がやって来た。ご馳走を持って来てくれたようだ。
美味そうだ。俺達はつい喰らい付いてしまう。
王は話を聞きたいと言う。食べながらでもいい。どのようなゲームが好きか、得意な事、苦手な事。過去の事など、何でもよかった。
王はストラテジー系が好みなのだろうか?パズルも偶にやる。
簡単に作れる料理や日常のアイデアの記事なども見るそうだ。そして大切な者が居るとも聞く。愛すなど無い王の大切な者…。見るからに「愛している」ように見えた。一体どのような者なのだろうか?
しかも女性のようだ。恐らくだが、そこに性別など関係無い。ただ愛しているようだ。このような王から愛される女性はどのように感じるのだろうか。
少なくとも、善悪判断も付けなければ良いのかもしれないが…。後は何気ない日常を楽しむような事などで普通に、普通の者と同じ。レイは今は都内で部屋を借りて住むのを辞めて王の中に帰っているそうだ。
また会いたくなったら会いに行ける、会える。歪なこの王の体質はこの世にこの者以外に一人も居ないと言う。
Tは院内でマアサの遺体をまだ診ている。土竜は九州の地域で普通に仕事をしているという。闇仕事は続けている。
しかし彼はあの者を知らないそうだ。彼なら知っていそうな感じがするがそのような者は知らないという。ひょっとしたら何気に知っていたのかもしれないが、忘れてしまっているという。
「軽蔑をしていたのかもしれない」と分かり切ったような顔をしていたという。彼は本当に知らないのか知っているのか以前に良くない者として認識をしているようだ。「見掛けても関わらないな」と言っていた。
思わず、攻撃をしてしまいそうだと言っていた。その者こそ本当に薬物をぶつけてやりたいという。つまりここから察するにあの者は闇を仕事としているというよりも世界を旅をしているというのだろうという。
部屋にあった繋げられた遺体は今はその部屋には無くて持って行ったのだろう。そもそも兄さんがあの家に近日に少しの間だけでも居たとは知らなかったな。
本当に少しの間、らしいが。彼が出て行ったのもあの者の影響なのだそうだとか。俺を見つけたから来た、という。これらは単なる偶然とは思えないと思ったら偶然なのは兄さんが隣に実は居た事くらいだ。
後は、スバル自身が俺への尾行者であった事を王が説明をした。スバルは目を丸くしていたが直ぐに元に戻った。「そうだったか……」と落ち込んだが納得を何処かでしているような雰囲気だった。
スバルが王が来た瞬間の逃避なんてしなくても良かったと察したようだ。「君が守られているようでよかったよ」と笑顔になった。しかしこれからの事で何処かを睨んでいる。その時、厨房から火災が発生をしたとアナウンスがあった。
直感した
来たようだ
俺達は行こうとした。しかし王は「待て。」と笑顔で言った。なるほど。スバルも理解をしたようだ。行ってはいけない。この部屋で待っていたら案の定だった。
この王の部屋に攀じ登って窓に手を掛けていた
王はその者へ近付き「こんばんは。」と言った。すると隣人は固まった。「悪いがこの子やこの子は疲れているから君との変わったお話をさせてあげたくないのだ。
俺とならいい。」と王は言った。そして王は窓からあの者と飛び降りた。何階も高いのだが王にとってはそうでも無いのだろう。すると下から物音がした。何かを破壊しているような感じの音だ。そして上に向かって何かが上がっている。
見るとそれは王が人外の姿に変化をした姿で隣人を掴み、宇宙へと舞っていくようだ。その様はあからさまに大型怪獣が小さな人間を掴んで殺そうとしている寸前のようだ。上へ舞って行き、居なくなった……。
使用人がこちらの部屋へ説明をしに来た。
「火事は無事に鎮火をしました。何やら何故か付いた着火でした。どうも何かの線が切れていたみたいだった。意図的に切られたものとしてます。
王様は、お二人を守る為にお出掛けになられました。お帰りはちょっと分からないけど、安心してね。」と言われた。無事に解決をした、のだろうか?使用人は安心していいと言う。俺達は顔を見合わせ素っ頓狂な気持ちで王のベッドで横になった。
「無事に解決をしたのだろうな…。」「ああ。王だ。やってくれるのかもしれない。ただ何かあったら俺達も行く。いいな?」「勿論だ。」
俺達は待っている事しか出来ない。が、普通に過ごしていても……いいのだろう……か………?そう思ってしまった。それ程には王は強い
よく見ると城の中の人々も怖がっているような表情をしているので確定だ
王の帰還を待つのみとの事…。
これまでにも色々な事があったような気がしたがそれを引っ括めるような事をしているようだ。王は。ひょっとしたら本当の監視人は王なのでは無いのだろうかと思った。色々と何故か知っている。
しかし使用人達は「違う。それは違うよ。」と言う。この辺が何やら変わった感じで答えは出ないというか、無いのかもしれないというか、考えないのが正解なのかもしれない。使用人達は「考えないのが正解だよ。王様は王様だよ。」と言う。
スバルは霊体と話して楽しんでいるようだ。暫く。ここ数日は帰って来なかった。今日の昼頃、帰って来た。姿は元の王のままだ。そして何も連れていない。
あの者は「居るべき世界を教えたので今は居ない」との事だった。それが何を意味しているのかは不明確だ。恐らく現れないようになったのは確かだろうが。
それ以上には何も分からない。スバルもこの事は解決をしたような顔をしている。「君が無事になってよかったと思うよ。本当に。」と言う。
スバルにも本当は王が前みたいにまた問題人だったのでは無いかと言ったら「いやそれは無いと思うぞ。」と言う。それは王が居たらあの者にも物怖じない安心があるからか?と問うたら「そういう事では無い。」と言った。では実は世界はあの王の創造したものだと思っているのか?と問うたら「そうとも思って無いさ。」と言う。
「ただあの王は強いんだよ。希望を抱いている。何かあったら頼りにしてしまいたくもなるし…。俺達もやれる事はやれるんだよ。王の事はその際は認識をしていない。が、王は王だ。あの性格優しそうだし、懐広そうだし、容姿もああだからな… つい、頼りたくなってしまう。君だって、あの方が側に居たら安心していそうだったし、嬉しそうだったぞ。」
俺は何も言えなかった。確かにそのとうりだ。つまり、気にするという事はあってもなくてもいい。気にしたらそれが答えで気にしなかったらそれが答えなのだ。俺は「分からない」が答えだった。
俺達も強者だしあれ程沢山散策をしたり問題事に直面をしたり避難をしたり戦ったり拳銃を向けられたり、といった事があったにも関わらず解決はこの有様だ。
それに対して俺は少なくとも「何の為にしてきたのだ」という感覚があったのだが、それもまた答えなのだろう。
答えは自分で選ぶものだ。王が苦難をしたとするのであればそれでもいいだろう。俺達はよく頑張ったとするのも立派な答えだ。
俺達にもあの者を倒せていた。が、王が留めを刺してくれたとしてもいいだろう。キリサナとアイラがあの者を弱らせたとしてもいい。笑顔で終わらせてもよいのだ。
しかし王はこう言っていた
「俺だけなどではあの者、サザナカを葬り去れなかっただろう。そもそも君達があの者を弱らせてくれたお陰で俺はそうする事が出来たのだ。」と。
それはどうも真逆で言っているように俺には聞こえた。何を言っているのか、よく分からなかったのだ。「それもまた君の力なんだよ。」と言う。
少なくとも、悪い言葉では無いのは確かだ。スバルは穏やかにその言葉を受け取っていた。こればかりは考えても答えは無い。
この王、センタロウが俺は少なくとも好きだろう。「それも理由の一つだよ」と教えられた。なるほど。と少しだけしか思えない。
しかしその後は平和という訳では無かった
俺はまた狙われている。
夜寝る時にどうも誰かに見られているような気がするのだ
気のせいか……?と思っていたが、俺への視線を確かに感じる。
その時に目を開いて見てみようとしたが金縛りのような感覚になって目が開かないのだ。これは何事か?もしかしてこれはスバルへの相談向けか、と思ったが不遇な事に彼は出張で九州だ。文体で伝えた。
ともあれ、今回の事は取り敢えずは起きたので散歩にでも行く事にした。以前のように色々とあるとこれだけの事では余り驚かなくなる。隣の家は今はまた空き家となっている。しかしあの家に見知った者が入って行くのを見た。
………アラタだ
彼が何故ここに?
気になって話し掛ける。すると振り返ってくれた。改めて顔を見ると本当に美青年だ。
「こんにちはアラタ。城は」
「こんにちは。出たよ。刑期を終えた。」
「その家に何か用事があるのか?あんまり今は入らない方がいいぞ。」
「ここに、遺体があるって。」
「無いよ。あったのは遺体だ。今は持って行かれてるよ。」
「そんな。……残念だな。有難う。……待って。君は何か落ち込んでるの。」
「! 察しがいいな。まあそういう事だ。ではな。」
「何を落ち込んでるの?僕でよければ聞こう。」
アラタは相談に乗ってくれた。最近の夜の事を。すると「それは興味ある。僕で良ければ何か対策をしよう。」と言う。
彼の力で俺に毎夜に来る者をガードをするらしい。スバルは今は居ない事を話したら代わりに僕が、と提案をしてくれた。直接彼の家に行こうか。あの中部の県の家へ。しかし彼の実家は九州らしい。
今スバルが居る所と近いのだろうか。九州では遠いのでアラタの家がいいか…?
そもそも遺体でしようとしていた事は単に研究をしてみたかったかららしい。
人間の遺体を見るのはあまり無いから、との事。その為だけに関東のここ迄来るとは。それなら俺の家に泊まればいい。
それを言うと了解してくれた。俺の毎夜の憑き物を取ってくれるらしい。安心する感がある。「じゃあ、少しの間だけ泊まらせてね。」。夜になるまでは近所を散歩をしたり買い物へ行ったり図書館へ行ったりとした。その最中も彼は単一な返答なので彼の性格は無心で考え方が無い。
こちらの話は聞いているようだ。「夕方か…。そろそろ気を準備させようかな。」「頼む。何が憑いているのかを教えて欲しい。」「うん。」夜になるまで彼と本を読んだり趣味の話をしたりゲームをしたりなどをした。彼は楽しむと割と表情は笑うようだ。本で共通の笑いの点が出来た。
互いに好きな小説が出来た。そのように家で遊び、夜を待った。彼と居るのは十五歳のスバルより二つ年上の十七歳なので話題も考える事があって楽しい。夜は直ぐに来た。そして寝る時になる。
アラタは不敵に静かに笑っている。アラタのベッドを用意をするのを忘れていた…。これはしまった…。
そう思っていたら「僕は大丈夫。床で寝させて。君に何が憑いているのか、見てあげる。」というので心強い。
何だか悪い気がするが、彼が笑顔でゆっくり寝てねと言うので言葉に甘えて寝てしまう。すると…来た。
何者かの視線を感じる。目を開きたいが金縛りに遭い、開けられない。アラタの名を呼びたいが口も開かない。
するとアラタの「ん…。君がフリーに取り憑いている者?ちょっと、この子が迷惑をしているから別の所で暮らしてね。」と言った。すると少しして俺の身体は自由が効くようになった。金縛りが解けたのだ…。
憑き物が、取れたのか…?見るとアラタが片足を着いてしゃがんで前を見ている。見るとそこに居たのは
マアサだった
背を壁に付け、足を曲げて座り、両腕で足を囲んでいた
「君さあ、僕と会った事あるよね?」
マアサは何も言わない。というより言えないのだろうか
思わずアラタに話かける。マアサは何も言えないらしい。若しくは言う気力も無いという。
「マアサ。俺だ。最近毎夜に俺の所に出て俺を縛っているのは、君か?」
アラタが「フリー。無駄だ。今はこの子は話せない。何か億劫そうだ。
何故フリーに取り憑くのかを聞いてみたけど、何も答えない。しかし今だけかも。もう少し待ってみよう。」
マアサに明日にまた出て来れたら答えれたら答えて欲しいとアラタは言った。マアサは座って何も言わないままゆっくりと透明になって変えた。
「いいよ。このまままた寝て。フリー。僕も寝る。おやすみ。」
再び寝る事にした。ともあれは毎晩の自然の正体がマアサだと分かって何やらスッキリとした。アラタのお陰だ。
しかし、何故彼女がまた俺に取り憑くのだろうか……?
改めて考えると彼女は王との戦いの時に一緒に戦った戦友でもあるのだ。そのような彼女が亡くなるなど、悲しさがある。
それなのでこのようにしてでもまた会えたなら物怖じなど無い。俺もまた夜に今度は縛られない。また会話が出来たらしよう。
翌朝、仕事に取り組みながら支度をしていたらアラタもこちらに来た。
「おはよう。フリー…。それ、仕事?」
「おはよう。そうだよ。朝飯は既に作っておいてある。また食ってくれ。」
「有難う。僕も手伝おうか?」
「え?いいのか?俺は直ぐに終わるからいいよ。有難うな。その気だけ。」
「うん。僕も何かしたいなって。泊めさせて貰っているだけでは何か申し訳ないなって思うのは自然かな。ちょっとこの地域でも出来る事とか内職などをしようかな。」
「ああ。それなら自由にしたらいい。俺としては毎晩の事を助けて貰っただけで嬉しいよ。」
「有難う。ちょっと内職発見。あ、バゾマイの会社って確か君の。」
「お、おうそうだよ。まさか同じか……?」「同じだろうね。じゃあ、僕も同じ仕事を貰おうかな。稼いだ通貨は君にあげる。」「ああ…。いいのに。」
そのようになり、彼も直ぐに採用となり俺と同じ仕事をやった。手際は俺と同じような早さだ。
俺は先に終えたが彼は黙々とやっている。彼も終えたら外へ散歩でもしに行こうかと提案をした。彼は了承をしてくれた。
この街を二人で歩く。切る風が心地いい。何故か俺の近くに乗り物での販売が現れた。今時にしては珍しい。
品物は変わったアイテムばかりだ。そういえば最近はどうもこのような物ばかりが……
「最近はこういう、変わっていてあんまり使うのも難しいような感じの物が売られているのだよね。ただただ人気を得たいかららしいよ。作っている会社は実は君達が遭ったという人が担ってた。今は既に居ないから間も無くこのような物も無くなりそうだ。」
「デザインは面白味が有りそうな気がするが」
「確かに。けれどそれ以上に良い所はないよ。」
「まさかこういうのもサザナカが作っていたとは」
「何でもする人だからね」
「狙いは世の中の支配かな」
「うん。多分。」
「今もこうして売られているのはどうして」
「名残。後はこういう特異な見た目を気に入る人がいる。」
ごもっともだった。それならもう少し世間での流行が静かになるのを待つべきか。買い物へ行くと凡ゆる必需品があった。全てを買い、家に帰る。その途中にも何やら変わったものがあった。さっきの販売車の物か。
「これ、何かを感じるか?アラタ。」
「いいや特に何も。ただ人が落としていっただけ。貰っていく?」
「いいや。俺はいい。」
誰かが貰って行ってくれるといいなと思いながら無視をして家に着く。家の中は寒かった。何故そのような気温でも無いのにこれ程迄も寒いのだろうか
ふと目にすると下に玩具があった。あの外に落ちていた物だ……
アラタは考え込む。
「ちょっと動かないで。」と言い、玩具を拾って指を宙に丸を描いた。するとそこに穴が出来たのでそこに軽く投げた。そして穴は閉じた。「これで何も無い筈。」と言う。
玩具に込められた念が物を移動させたという。サザナカ自体は居ないのでアイテムに宿った念も少しだけ。もう暫くで消える。すると皆安全だ。マアサの念とは関係は無し。マアサは今晩も現れるだろう。そしたらまた話をしよう。
その晩もマアサは現れた。金縛りには遭わなかった。アラタが居たお陰だろう。昨日のように俯いて座っていて何も言わない。アラタがマアサに話し掛ける。
「こんばんは。今日は何かを言って欲しいな。ねえ、これに覚えはある?」
そう言ってアラタはまた宙に穴を作り、中からあの玩具を出した。するとマアサはハッとしたように身を引き後に引き下がる。それを見てアラタは面白そうに少し笑った。俺もそのマアサの反応でとんでもない結末が視えたような気がした。
「なるほど。君を殺したのはサザナカでは無いのだね?」
マアサは頷いた。
この玩具はサザナカの作った物だが、念が消えている。マアサはこれの別のものに怯えたのだ。例えばこの、手に持っている刃物のような。Tによるとマアサは刃物で刺されて殺されたのだ。その殺した人物は……
「マアサ。俺だ。フリー。君を殺した人物は、俺達の知る人か?」
するとマアサは
頷いた
アラタと顔を見合わせる。繋がってきた
「今から名前を順々に行って行くので、その中に君を殺した犯人が居たら頷いて合図をして欲しい。」
マアサはゆっくり頷いた
「先ずはこの男。アラタか?」
無反応だ。違うようだ。
T…違う。レイ…違う。ガクルス…違う。スバル…違う。………土竜?……違う……。あの兄さん、ヨハン?……違う…。マダラ?……違う…
もしかして、センタロウ王か……?
………違う………。
レイの姉、レイラを思い出した。彼女か?……違う……
ユウマか?……違う……。アンネか?……違う……。
海底都市に行った時の助けてくれた男性を思い出した。ここまで思い出してこれまで違っていたら、お手上げだ……。
………違うようだ………。
参った。これは降参だ……。分からない……
アラタは考え込んだ。
「もしかして一周反転して、フリーに殺された?」
……違うようだ。俺は人を殺さない…。
「自殺?」
アラタは変わった聞き方をする。しかし違うようだ……。
「有りったけの砲を数打てば当たる。」
「何という個性的な考えだ。確かにそれも有りだよね。俺ならもう少し考えてからにするけどね。」
「僕は今やる。マアサ。僕の念で作った街の人?」
……違うようだ
「……フリーの飼ってたハムスター?」
……違うようだ。今は彼は別の家に移っている。俺も言ってみよう。
「メイドのメラかな」
……違うようだ
………まさか
俺はある可能性に行き着いた。
「藁人形か……?」
………ゆっくりとマアサは頷いた
やはりか
藁人形だ
マアサを殺した犯人
そして、工場の裏の地下を進んでいる時に後ろから尾けてきている者の正体
巨大な藁人形だ
「藁人形?」アラタが考え込む。
土竜の念が篭っている。アイラが土竜の念を捕獲する為に用意をしたもの。後ろが藁で出来ていて人型だった。それに土竜の念が僅かにでも残っているとしたら、十分可能だ。
あの後は片付けをする前に先に皆で館に戻った。その時に藁の部分だけ外れていたとしてもいいかもしれない。そう考えると「おひめさま」はアイラだとも状況の距離からして考えられるのだが。
! アイラは忘れていたか気が付かなかったのだろうか
ともあれ、マアサを殺害したのはあの巨大な藁人形だ。
……が、そうなると本当にマアサを殺したのは アイラだ
「マアサ。殺される直前に、藁は務所の中に散っていたか?」
……頷いた。
「それは、警察官達はおかしいとは言っていなかった?」とアラタが聞く。マアサは何も反応をしていない。恐らく、彼女にしか見えていなかったかもしれない。
「藁は警官達には見えていないような感じだったか」
頷いた。
という事は、刃物も同じ筈だ。これで確定をした。
マアサを殺害をしたのはあの隣人では無く
…………アイラだろう
「君が刺された後にサザナカは脱走したんだな」
頷いた。
ここまで分かったら問い詰めるべきは彼女だろうか。
「最後に一つだけ教えて欲しい。……俺へ毎晩、金縛りにさせて現れる理由は、俺への恨みか?」
……
……………
………頷いた。
そしてマアサは消えて行った
俺達も寝る事にした。
翌朝、目覚めは良かった。かなりの謎が解けたからだろうか。身体を洗い、支度をする。アラタは少し遅めに起きてきた。眠そうに目を擦る。
「おはようフリー。今日、何処かへ調査をしに行く予定…?」
「ああ。とは言っても話を聞きに行くだけだよ。アイラだ。」
「ああ。君が言っていた力のある女性の事だね。」
「そのとうり。俺一人で行ってもいい。君はここに居て悠々と過ごしていたらいいよ。」「僕も行かせて。」
笑顔で彼は言った。昨日に仕事を全て終わらせた。「ひょっとしたら攻撃をされるかもしれないよ」と言う。彼はその時に守ってくれるそうだ。有難いので甘えてしまう。確かに根底を突くのでその可能性は有る。
身支度をして家を出る。アイラの家への道筋を思い出す。そして一番近そうな交通機関で行く。館は相変わらず綺麗だった。呼び出しを押す。暫くするとアイラが現れた。
「あら、こんにちは。フリー君。そして…アラタさん。」
「僕を分かる程お強い力をお持ちですね。」
「うん。…どうしたのかな?」
「アイラさん。少しだけお話をしたいのです。」
「良いですよ。中にお入り下さいませ。」
「有難うございます。……アイラさん。貴方はある者の念を吸い取った藁人形を使ってマアサを殺害に使用しましたか……?」
「…………」
「答えて下さい……」
「………うん。」
「どうして?」とアラタが問うとアイラは「あの子は小さい時から知っているけど、私の事を何であるのかを調べようと熱心にしていた。それを辞めて欲しかったからだね。」と言った。
「なるほど。殺害動機はそれのみですか?」「はい。そうですよ。しかし藁人形には土竜の念は全て落としてありました。込めたのは私の念だよ。」
「それが偶々、世間をも騒がせる変人を牢から脱走させる結果になってしまったみたいだよ。」
アラタは淡々と問う。
「そのようですね。私もあの旅人は知ってはいたが、まさかあの子の署が担当をしていたとは…。しかしあれは世界をも超える旅人。私がそうしていなくても確実に殺されていましたよ。」「そうかもね。…こうして普通に行為が明らかになってしまったが、貴方は出頭しないのですか」「うん。この館で生活をしていたいからね。」「なるほど。」
そしてアラタは小声で耳元で「逃げるよ。この人僕達も殺そうとしてる。」と言った
アラタは「お話を有難うございました。では、これ以降は何もしないで欲しいです。」と言い館の外に少し早足で俺と出た。
そして扉を閉めると両手を広げて透明なオーロラのようなものを張った。そして宙に丸を描き、穴を作り、入れさせられた。
アラタも入り、穴は閉じられた。先に穴の終わりが見え、抜けると俺の家だった。一瞬で帰って来れた。
このようなものは世界線が歪むリスクが伴うので人が移動する手段には使わないのだという。
今回は急いで逃げるべきだったのだ。アイラには勘付かれないように口論をしたという。バレてもいいように扉に意識を裂く為のものを施しておいた。何とか俺達の尋問の事を忘れて欲しい。
しかしこれで確定だ。工場裏で俺の後を尾けてきていた者も、アイラだ。藁人形かもしれないが。しかしこれは俺達のみが知る世界の闇として受け入れるしか無さそうだ。マアサの成仏を祈るばかりだ。
「でもマアサは君の事を恨んでるって言っていたよね」
そのとうりだ
俺は恨まれているのだ
何故。何をしただろう。それも考えていたのだが……
「思い当たる所は無いの?何も。」
「……ああ。残念ながら…。恥ずかしいのかもしれないが。」
「そういう風に言わなくても大丈夫。」
アラタは助長をしてくれた。
命を賭けた戦いまで共にした者から恨まれているなど考えられなかったのだ。
俺が気が付いてあげられなかったのだろうか
メッセージが来た
………これは…… ヘブライ語か……?
筆記体も書かれる方向も我が国の言語とは余りにも違い過ぎて暗号のように見える
何故、このような言語から俺に……?
名前も読めない。しかしアイコンはクラスのネックレスだ。これは見覚えがある。確か……
「シャローム。フリー。おはよう。イザヤだ。覚えているか?」
内容は日本語だった。
そしてイザヤからのメッセージだったとは。
俺のアカウントは土竜から聞いて知ったらしい。
自分が殺害をしたかれが生き返った事は知っていたみたいだ。予測済みでもあったらしい。
そして土竜が俺のアカウントを知っている理由は恐らくマアサの持っていた情報を盗んでいた形跡からと思われる。
何となく、俺のアカウントを知っただけなのだろう。彼は常識があるので悪用にはなっていない。
しかし土竜はマアサが亡くなったのを知っているみたいだった。
俺は最近の事をさっくりとイザヤに伝えた
「なるほどな…。色々あったのだな…。実は最近、君の周りの動向がおかしいなとは思ってはいたんだ。いや、世の中がおかしいのか。妙な事件ばかりがあっただろ?君の事が心配になってたよ。元気を確認したかったんだ。それでメッセージをした。元気そうで何よりだよ。マアサの事は、残念だ。祈る事くらいしか俺には出来ないが……」
「恨んでる、ねえ……。」
「まあ俺はマアサが君を恨むとしたら君が冷血過ぎる所とかではないかと俺は思うけどな。笑ってしまってすまないが。まあ、あまり気を落とすなよ。元気でいいよ。またな。」
冷血過ぎる……?
それならアラタも同じというか、彼のように、何もかもがどうでも良い、とするような意識では俺は無い
それで恨まれるとは、何だろうか
今夜にまたマアサと話が出来たらいいな。
夜になるまで一応、待機。
何者かからの攻勢に備えている。しかしいつになっても何者も来ない。アイラが攻勢を加える可能性を危惧していたのだが。
結局、夜になっても何も無かった…。
寝る時にもなった。俺は特に眠くなくて起きていた。アラタも起きている。
暫くすると、ベッドの向こう壁に何者かが現れた。マアサだ。しかし両腕に刃物を持っている。
「俺達を、殺す気か……?」
反応が何も無い。
「それ、そもそも僕達に向けてる?」
そうでは無いかもしれない。マアサはゆっくりと首を横に振っていた。
彼女はそのまま動く気配はない……
しかし俺は金縛りにはなっていない。俺への拘束はどうしたのだろう
このように刃物を持って動かない……という事は、何かがあるのだろう。俺達を刺す目的では無いというが油断はしていない。
「じゃあ、僕達は寝ててもいいの?」と直球な事をアラタは言う。マアサはゆっくりと頷いた。つまり、何者かを待ち構えているのか……?
俺も待ってみる事にした。アラタは眠りはしなかったが座った。暫くすると突然、何者かがマアサの立つ側の壁とは反対の壁から何者かが物凄まじい速さで飛んできた。
そしてマアサへ突撃をしたようだ。同時に物凄まじい衝突音がした。見るとマアサは刃物に血を付けて立っていて、下には倒れたアイラが居た。血を流している。
しかしアイラは起き上がり、また反対側の壁へ向かって飛んで行った。逃げたようだ。
この場にはマアサが血の付いた刃物を持って立っている。そして、涙を流した。
「今のはアイラ。君は彼女を殺せなかった事に悔しさを抱いているの?」
とアラタが問うと頷いた。アイラはどうも俺達の側にマアサが居るのを察したようだ。
多分日中の会話の中で何かを察されたんだ。あからさまにマアサを殺害した容疑を掛けていた事から察されたか。
「アイラは君が殺害をしようと向かっている事を察しているよ。良かったら、君は小さな頃から彼女に何を思って追求をしたかったのか、教えてくれるか?」
そもそも口が開けないだろうか。マアサは渾身の力を振り絞ったようだ。
「あのひと さつじんきよ」
殺人鬼……?
そう言ってマアサは消えて行った
殺人鬼……
人殺し……アイラが……確かにマアサを殺した。が、あの人は殺人を犯しているような人なのか。レイは察さなかったのか……?
すると頭の中に声が聞こえてきた
「フリー!お、俺だ。レイ。聞こえているか?仲間よ」
レイだ。流石俺と同じ世界から生まれただけある。このように直接頭の中に話し掛けられるとは
「あのな、フリー。アイラさんは人を殺している。それは分からなかったんだよ。君の推理を見るまでは。俺の非だ。が、土竜の念から俺達を救ってくれたのもあの人なんだ。殺人鬼かは俺にはまだ分からない。マアサを殺している事しか。だからさ、俺調査してくるわ。アイラさんの家。」
行くつもりか?そしたら今のその君でもバレると思う。思念の状態になっているが察されると思う。それを考えていたら既にレイは向かったようだった…。
「フリー?どうしたの。何か、仲間みたいな人が話し掛けて来た。聞こえたような気がするんだけど」
「ああ。そうだよ。俺と同じ世界の生まれの者だ。念波で会話が出来るようだよ……」
「なるほどね。流石はあの王の」
「知っているのか?」と聞こうとしたが彼は眠気が襲って来たようで眠ってしまう
眠る前に「解決はしていない。もう少し慎重に行こう。」と言った。マアサはアイラに対して無念を持っているようだ。それを晴らさなければ成仏は出来ないのだろう。その為に助力をする。それが俺達のする事だ。俺への恨みとは何なのかは未だ分かっていない……。
翌日、目が覚めるとアラタは居なかった。帰って行ったのだろうか?下に降りると彼は居た。……レイも。
「お、フリー!おはよう。アイラさんは裏で人を殺しまくってる殺人鬼だったわ……。正常を保つ殺人鬼だよ。しかしそれは見つかっていない。
裏でやっているからというのと、そもそもあの人は力で人を欺けるからというのだろうな。
殺された人達は土竜の念を施したあの庭の所に埋められている。殺害理由は深い理由がありそうだよ。そこまで詰めると流石に分からないけど、恐らく自我を保つ為、だ。
人を殺す事に対して何も思っていないのかもしれない。俺達を助けてくれたのは本当に良心からだよ。」
「僕もそのような性格的な自然さは感じていた。なので、この事はこれ以上は追求出来ないのかもしれない。罪にも問えない。これは世の中の闇だ。」
「闇が多過ぎるんだよな……そもそも世界はそうなのは知ってるが、何やら不正をされてしまうというか。望んでいるものを潰されてしまうというか、遊ばれて……などと考えていたら切りが無い。これ以上は辞めよう。そのようなものがあるのだ。」
「うん。否定していない。しかし世界というのはそもそもそういうものだ。が、忘れないで。自分の人生を間違えているという事だ。悪い事をするというのは。それはそもそもその者の人生で確実に理解をする事が発生する。
何故ならその人自身が生き方、自分が心地よいと感じる言動の仕方を間違えているからだ。悪い事をするという事はそういう事だ。が、されても別にどうという事無いと思えた事はその人との相性は悪くは無い。
が、不快として受けた場合はその人とは生きる世界が異なっていたり、合わなかったりする。」
「確かになあ。俺達も間違える事くらい、知ってる。それなので怒る分無駄があるか…。」
「そうとも言わなくていい。」
俺も教えた。
「そのとうりだレイ。無理に怒りを鎮めようともしなくてもいい。ただその中で間違いを犯しているその人を認識して、自分はそうしようと思わなければいい。
またその人のような者が現れたら気を付けたらいい。悪い事をしたその人は、誰だか分からなくなってしまうまで忘れてもいい。」
「そうだよ。レイ。合う合わないは誰にでもある。余り気にせずに自我を持っていたらいい。」
レイは頷いた。アイラの家の探索が無事に出来た事が先ず凄まじい。「あの人の良い所のみを考えるようにするわ…。」と言った。
そうでいいと思う。が、万一あの人が理解をする事になったら教える、だろう。俺は支度をした。
レイが言うにはマアサはこれ以上は現れる事は無く、アイラの元へ行くらしい。感じているらしいのだ。殺すつもりだという。
これに対してはマアサの念なのでアイラは受けるしかない。後は様子を見るのみだという。しかしレイはまた何かを感じたようだ。「………これ、アイラさんとよく似てるな……」
キリサナか?
「そうだよ。俺を攫った女性だ…。その人が、アイラさんの所へ行くような感じの念を感じる…」
レイが再びアイラの館へ様子を見に行って帰って来たのは夜だった。マアサがアイラを殺害する前にキリサナが止めたようだ。キリサナは「大丈夫よ。」みたいに言ったらしい。
「あの男…センタロウ程では無い。」とも。その時マアサは驚いたような顔をしたらしい。
「この子は私の妹なの。残念ながらこの子はこの子で成り立っている。貴方にとって申し訳ない事をしたのは認める。私もこの子に教える。が、あの男程では無い。」
するとマアサは行き場の無いような表情になったという。そして恨みの念の先がアイラから…
王に変わったという。同時に俺への恨みの念も沸いた。多分レイにも。
「いいや。あの少年達の事は恨まないでいい。」とキリサナは言う。マアサは王に対してこれまでも無い程の恨みの念を向けた。アイラへのよりもずっと、ずっと強い…
するとマアサはアイラの館を出た。
キリサナはアイラの前に降り立ち、アイラへ命の大切さを自作の物語にして語った。アイラは徐々に人を殺す事への罪深さを自分なりの感覚で芽生えた。
そこでレイはこの事は無事に解決をしたものかとして帰って来た。マアサの念の行先は方向は王の城だという
王へ攻撃を加えるつもりだろうか
気になる。アラタには事態は解決をしたとして帰る事を勧めたが、彼も何やら気になるようだった。スバルからはメッセージで俺への謝罪と今から関東に帰るとの事だ。
王の城へ俺達で行く事にした。
城内は落ち着きがあった。王は王座で仕事をしているという。行くと風景の綺麗さと一致をしている王、センタロウが身体を使ってゆっくりと、それながらも確実に気を上に放って何処かへ送っていた。
そしてやってきた燃え物類をグルグルと巻物にして纏めて燃やした。これは一体…。何なのかは分からないがどうも壮絶な事をしているのだろうか。
ふと、王がこちらに気が付いた。「こんにちは。」と少しだけ優しい笑顔で言った。やはりとんでもない顔をしていて凄まじい。俺達も返す。「何かしたのかな?」
あった事を話す。
「なるほど。俺はマアサから恨まれているのだね。」
「何かをしたのですか。」
「いいや。俺はあの子には特に何もしていないけれど……」
そう言って王は自身の目から目の皮のようなものを取った。
宇宙のような神秘的な色の瞳がある。それを使用人から鏡を取り、映し出した。すると鏡の中に風景が映し出された。……どうも何処か薄暗い所のようだ。
「遺体安置室だね。君達も行く?」
突然何を提案されているのかも分からないが、行くと答えた。
王と一緒に映し出されたこの場に行く。場所を王は知っていた。少し直近だ。移動は城の乗り物で行った。中に入ると少し冷ややかだった。ライトを付けた。その中のある遺体に目を付けた。
「君達もこちらへおいで。」
と王が言うので行くと目の前にマアサの遺体があった
すると外から「困りますよ!貴方達!」と管理をしている人達が入って来たが王は被り物を脱ぎ「この私が行っている事だ。」と言うとこの部屋の風景に綺麗になっている王から威圧を出せたようだ。
そして王はマアサの遺体を乗せている台を裏から軽く叩いた。軽く音がして一瞬だけ眩しく光った。
更に叩くとまた偶に一回だけ目が眩むような光が出、また叩いているとまたとんでもない光が出、遺体の腹部が天井辺りまで一瞬盛り上がった。それを繰り返すと行形遺体が「ぐはあっ……!」という悲鳴を上げた
何という事だ
センタロウは何をした
この王は何をした
事態は割と飲み込める。それ程王のする事は凄まじいものがあるという事だ。
王がその後少しだけ静かに様子を見たらまた叩き始めた。
すると時偶に息遣いのようなものや短い声のようなものが遺体から発声された
それは確実にマアサの声そのものだった
そして偶に休み、叩きを繰り返した。
周りで見ている俺達も脅威を見ている。
叩き、発声し、叩き、発声し、休み、叩き、発声し、休み、発声し、休み、叩き、発声をした
「ぐはあぁぁっ……! !」
マアサの遺体が動き、身体を押さえ付けて長く発声した…!
しかしそのまままた横に倒れ死のうとしたその時、王がマアサの遺体……いや既にそうでは無いのかもしれない、マアサを少し抱き、上半身を少し揺らしながら口元に己の口元を近づけようとしたその時
背後から「君達、ここで何をやっているの。」と言われた。
土竜が現れた
「ま、待って。今いい所なんだ。」
とアラタが言うが土竜は「いい所?」とこちらに来る。「ここは関係者以外立ち入り禁止なんだよ。」と言う。王は人に見えない被り物をしているので居ると気が付かれていない。
「悪いのだが、ここに居たら悪いのだ。何をしているのかは知らないが…… ………………!?!」
土竜は今目の前にあるマアサを見て驚いている
「こ、この者はどうやら奥底で死んでは居ないようだ……!何故だ……確かに死んでいたのに」
そう言い、王はマアサから避けた。すると土竜はマアサの身体を掴んだ。
「……うん。やはり、根底で生きているね。」
「僕が死んだ時と同じようだ。無理矢理気合いで生き返れたけど、この子もそれが出来るかな……」
そう言い、彼はマアサの口元に口を付け、呼吸を始める。
少しづつ、揺らしを入れ乍ら。
するとマアサの身体は再び「ぐはああぁぁつ………! !」という生命の雄叫びをあげた
「頑張って。マアサ。後少しだよ。君も、生き返れる。」
それを聞いたのかマアサの身体がピクピクと動く
土竜はもう一度、マアサの口元で呼吸を始める。息を吐いて、吸って、少しづつ揺らす幅を広げて 呼吸をして、吸って、吐いて、揺らして
それを繰り返していた
するとマアサの身体が動いているのを確認した。息を、している…
「後は、自分で頑張って心臓を動かして。大丈夫。ゆっくりとで、いい。」
それが聞こえたのか顔が僅かに上下に動いたように見えた
土竜がマアサの口元で息を吐いて、宙で吸って、吐いて……を繰り返した
すると、マアサが自身で呼吸をしているのを確認をした
僅かにだが、呼吸をしている。
その際の腹部からの流血は王が既に患部に自身の粘液を塗っている為、土竜も独自の掴み方で抑える事が出来た。死亡原因となった傷だ。そして土竜の呼吸が続くと……
「い いたい いたいいたい たすけて たすけて」
と生命の声を出した
マアサが、生き返ったのだ……!
俺達は感動に打ちひしがれたが生き返ったというか生きる為に助けを請うている叫びを俺達は助ける。
土竜が「大丈夫だよマアサ」と言って傷口をぐっと抑えた。変わった抑え方だ。手の指を器用に使っているようだ。
するとマアサはハッとしたように目を丸くしている
「なんで……?なんで、いきなりいたくなくなったの……?」と驚いているようだ。
「これは痛点をちょっとね。ちょっと口貸して。」と言い、マアサの口の中に何かの薬を幾つも放り込んだ。
「鉄剤だよ。それで出血を補充できる。」
そうして暫く土竜がマアサの患部を手指を変えながら持っていたら、傷口が治っているのを確認した。何という事だ……。
血の巡り方を変らせて直ぐに傷口を結合させたようだ。
「咳とかくしゃみとか駄目だからね。そうしたら今は痛むよ。二週間は安静にしていて。」と言う。
マアサはまだ言葉がよく分からないようだか、上下にこちらから見ても分かるように頷いた。
マアサはその後、やってきた救急で搬送をされていった。Tの病院だった。土竜も一緒に行った。
俺達は王と城に戻る。道中で「折角だから、城から近辺のカフェでも来るといい。」と言う。俺達は甘えざるを得ないという感じだ。
席に移動をし、王の勧めのとうりにコーヒーやお菓子など好きなものを注文した。これは美味そうだ。これで癒される。何もかもが平和にもなったし。
事態はこれで無事に解決……
では無い。
一つ疑問に残っている事がある。
「センタロウ。」
「おう。どうした?」
「貴方はアイラの姉のキリサナとどのような関係だったのかを知りたい。貴方が話せる範囲だけでも。いや、傷口を抉ってでも知りたいのだが……」(フリーお前、王に向かって名前を普通に呼べるとか…)
思念となっているレイが俺の頭の中で何やら暮夜いている。君も聞け。
「恋人だと言ってしまった事があるよ。」
「恋人?その為恨まれたのでは」
「かもしれないね。恋人だと言ったのはあの者への一時でも気を楽にして欲しかったからだ。」
「……?何とも思って無いのですか。」
「うん。少しでも気の安めになったらよかったんじゃないか?」
(それって騙しではありませんか?弱っている人に「自分は君の永遠の味方だ」と嘘を言うと大変な事になりますよ。恨まれたりとか。特に女性の場合は感性から成る考え方をするからその傾向が強いのではなかろうかと思いますね。)
「うん。が、俺には何とも無いんだ。」
(や、やっぱり、聞こえているのか。)
「そうだよ。アラタには聞こえてはいないけどね。アラタ。気にしないでね。レイは君と同じ事を言っている。少しでも気が休まったのだ。それで良しだとしている。が、余りにも気に乗り過ぎに関わって来たので腹部にこれを」
そう言って王は手から気を出し、棒状に伸ばして先を尖らせた。
「こう、普通にな。」
それは何やら気休めのような動作をしているように見えた。本当は風をも切るように思い切りやっていそうだ。キリサナはこれでは成仏出来ない。
「王様。マアサは自分を殺した人間を殺す気でした。が、その方が説得をした事により犯人への念は晴れ、王様へ向かっていますよ。」
「そうだね。いいよ。」
「いっ」
思わず吃ったが、この王は何かをするのだろうか。そしてマアサは多分、生き返った。それもというのもこの王のした事……しかし「土竜がよくやってくれたんだよ。彼が彼女を自身の力で生き返らせたんだ。彼の凄まじい力だよねえ。」と言う。
それも何か含みがあるのかと思ったが無いに近いというか、無いのかも分からない。しかしその言葉で王は優しさを人に魅せているような気がした。
マアサは完全に生き返ったらこちらに殺害を目的でやって来るらしい。そしたら王は対応をするという。
「キリサナも生き返らせてあげてください。」とアラタが言うと「それは無い。あれ程までの念があると生き返ったらまた何かをしてしまうかもしれない。
それでまた絶望という体験をしても彼女にとって辛く、何かしらの光を見出せたら良いがそうなるとも限らない。」と諭す。
そして「そもそも生き返らせる力が俺には無いよ。」と言う。話は着き、コーヒーを飲む。美味い。「皆。もう少し要るか?お菓子もいいぞ。」と王が勧めた。
どうしようかを迷っていた。ただ勧められるがままになるしかなかった。美味い。皆も美味さは感じているようだ。「王様。有難うございました。美味しかったです。」とアラタは言う。単に腹が満ちたらしい。
何かを整えようとしているようにも見えた。「そうか。帰るか?」「うーん。ううん。ちょっと、王様のお城の中の寝る所が見てみたいなあ。気持ちよいのでしょう?」「それは単に興味があるという事だな。いいよ。寝てみても。」俺達も王の城が近くにある事から一息つこうとした。
城の中は平和そのものだった。皆で王の部屋の中へ行く。アラタは王の寝所で横になった。直ぐに寝てしまった。
レイは思念体から肉体に変わって「俺も気になる」と寝所を触って確かめている。スバルからメッセージが届いていた。
「事はどうなってる?」と一言が来てる。今の状況を説明した。すると「遂に元に戻ったのな?全てが…。まあ、王にはあまり近付かない方がよいのかもな……。」と言う。それは王の力に畏怖をしているように見えた。
俺だけでは無かった。そう感じていたのは。畏怖を感じる反面、どのような状況に陥っても安心を感じられる者だ。
しかし世にそのような者が存在しているという事自体がそもそもこれ程までも飲み込めない。そしてこれで恐らく全ては平和に戻った。しかし俺は思わず訊いていた。
「王。俺に対しての干渉や最近で何かを起こしていた事は何も無いのですか?本当に?」
すると
「ああ。俺は今時何もしていないよ。前はこの世を我が物にしようという邪な欲に取り憑かれて身勝手な事をしたがな。」
「それは何の為?」
「大切な者の為だ。俺のな。」
「それは前に話していた、貴方にとっての大切な女性……?」
「そうだよ。あの子の為に、壊れた世界から抽出できるものを使いたかったよ。」
「……余程、大切な方なのですね。」
普段は何処までも強くて計り知れない王が初めて揺れているように見えた
「ああ。俺の大切な方だよ。ずっとずっと助けてあげられなかったのだ。その為、世界を壊し切ってしまおうとした。が、それは不遇な結末に終わった。
なので、俺の編み出す事であの子を救う事にしたのだ。誰も攻めないが、俺が出来る事で全てで。まあ……。また嫁が何かをされたら思わず無意識で暴行を振るってしまいそうだがな。」
王は語れるだけの事を語ったようだ。見るからにこういう王が後ろめたい事を考えているようには見えない。純粋な欲を秘めているような。恐らく、その女性に対して何かを仕出かさなければ大丈夫だ。色々に。
「助けてあげられなかったと感じる。」
「そうだ。俺が鈍かったんだ。もっと早くに、気が付いてあげたかった。」
「その方は俺達の世界に住まう者?では無いですね。センタロウの前に現れる存在か、この宇宙には居ない者というか、この世界の住人では無さそうなイメージだ。」
「フッ。そのとうりだフリー。流石、俺から生まれた方…者なだけある。」
どうやら当たったようだ。王には自分の身と同じくらいかそれ以上に大切な存在が居るのかもしれない。
「その方は王が狂われる事を望んでいるのかは分からない。が、貴方の狂気でその方が自身を苦しめないで欲しいとは思っているかもしれない。」
「ああ。それは分かる。俺の容姿や力くらいでしか癒しを与えてあげられないという考えは今はしていない。」
「それはある程までは良くても、後でその方自身は空になりますよ。」
「分かってる。なので、出来る事を遂行している。見守ってあげているなどは今でも出来る。」
「そのようにしてあげておられたら、その方にとっては十分に幸福であると思います。気が付いてあげられなかったなど、悩まれる事を望んではおられないと思いますよ。」
「有難う。その言葉で十分だ。」
王は自分で自分を許せないようだ。
「そもそも、何故そうしてあげられなかったと思うのですか。」
すると王は考え込んだようだ。少し考え込んだ。
「この俺様だから。」
その言葉には計り知れないものが有るような気がし見えた。王は真顔で俺を見ている。
「さて…。そろそろ中へ戻ろうか。フリー。」
城の中へ戻って王の部屋へ戻ると二人は寝たままだ。この部屋の窓から外を見るといい感じに紫色の空だ。このような時にはゲームや小説や踊り等がよく合うのだが…。
どのようなゲームがいいかとしたら迷ってしまう。機器から探ってみるのも楽しい。王が貸してくれたゲーム機もいい。王の嵌っているというストラテジーもいい。
様々に色々ある。塔を建て続けていくのもある。中で一番無難そうな同色消しの神経衰弱をやる事にした。とても楽しい。気が楽しくなる。次々に消えていく感覚が楽しくて、無心になる。
外に散歩をしたくなる。この紫の空の中で歩いている感覚と切る風が心地よい。そもそも、空が紫色とは聞いた事も無いのだが……おかしい事実に頭が混乱しかけた。一瞬だが。
空とは青色というか、赤色か黄色味があったり暗色、緑なども有り得ない筈だ。それが、このようになっている……。ふと、俺は自分が立っているこの世界が信じられないような気がした。
何かの夢ではないのか。
そのような気がした。そういえば東涌袮という名の並行世界線を思い出した。あそこも並行世界線だ。
このような世界線で生きている人々もいる。その人達はそれが普通だと過ごしている。俺もこの世界が普通だと思って過ごしているが普通とは無いのかもしれない。
が、空の色が紫色など且つて何も無かった。それは人々からすれば普通なのだろう。何気にメッセージをスバルやTへ送ったらこれはおかしいと言った。
確かに空はこのような彩りをしないと。Tは説明の台に自分の行ったマアサの遺体への診察がおかしくは無い筈なのにと言い、空の色の事を異世界線なのかもしれないと言いながら王への畏怖の念を示した。
空が紫色……。まるで妖精達の世界にでも来たような感じの感覚になるな……。幻想的な気がするが何故俺達はこのような事になっているのだろう。
綺麗なこの世界に浸っているしか今は考えられない。スバルもこの空を変だと言う。しかし綺麗でいいのではないか、と気楽だ。彼と同じように考えている自分はおかしくは無いのかもしれない。
そもそもおかしいというもの自体が有るのかも不明だ。スバルとは少なくとも同じ考えだという事くらいだ。
そしてTからメッセージでマアサが生き返ったという知らせだ。
同時に王への恐ろしさを感じた。
紫色の空は綺麗なので暫くはこのままなのかもしれない
旅人はこの世界に来るのは少し王への恐れとはまた違った恐れがあるが、安心感もある。生きている事自体に希望を見出すものだと思えるのはそのお陰なのかもしれないと思ったがその時、思念となったレイから頭の中に「君、さっきからこの空の色の事で長々と言っているけど俺にとっては普通に青色に見えるよ。」と言われた。割とそうでも無いのかもしれない気にもなる。
が、王への畏怖は変わらなかった。旅人は、何者なのかは分からない。が、受け入れたり優しくしたり出来る限りの対応をする事は出来る。
攻撃をされたら避けるかもしれないが。両性とは特殊だ。が、そのような人間も居るという事だ。奇怪で何が何だかよく分からない。が、その度に俺は対応をしていく。
マアサに会いに行きたい。どれ程完全に無事になったのかが見たい。歩みを進め、Tの務める病院へ行く。
人々もこの空の色に驚いているみたいだ。いつ頃からこの色になったのかが聞こえた。王と話した後の直ぐだった。
何なのかは分からないそうだ。ニュースにもなるという。「綺麗だ!」と俺と同じように歓喜をする人も少しだけ居た。
殆どの人が恐怖や驚きだ。病院の中も驚きの声が上がっている。俺はマアサの居る部屋へと案内をして貰った。
マアサは中でストレッチをしていた。
元気そうにしている。
思わずマアサの名を呼んだ。
「! フリー君。久し振りね…。元気にしていた?貴方の事が気になっていたのよ。私は死んでしまったから……」
「ああ。何ともないよ。君は元気そうで良かった。何より。よく、生き返る事が出来たものだよ。」
「死んでられなかったのよね。土竜が側に居て、私へそう諭して気を送ってくれていたのよね…。後は、自分自身で自分自身に気を送った。そうしたら、身体中に気力が溢れてきて……刺された所に痛みを感じた。が、土竜が直ぐに痛くないようにしてくれた。そのお陰で私は何とか生き返れた感じ。」
それは何かを隠して言っているように俺には聞こえた。そこは追求しないでおいた方がよさそうだ。マアサはこれから部屋を出て、生前から仕事をしていた署へ復帰をするそうだ。
「ごめんね。フリー君。貴方の家に現れてしまった。」
「教えて欲しい。君は俺の何が憎い?」
「何やら、全てを視ているような感じがしたから」
「つまり、誰かとリンクをされる、という事かな?」
「……そう。そういうような感じの人は何をしても敵わないの。まるで、あの王のように……」
マアサは俺が何から生まれたのかを知っている。レイの事も同じく憎いのかと聞けばそうでは無いらしい。
「恐らく、私と同じような思いを人は抱いているから気を付けてもいいかもしれないわ」
「それは知っている。なるほど。君が俺を恨む理由はそれか。すまない。」
「謝らなくていい。私もそのようなのがある自体どうかしてる。ただ、王には何だか許せないようなものがあるのよね。本心からの怒のような。」
「キリサナの諭しかな。王へ恨みの念を向けるように言っていたのだが、そもそも誰を恨んでも疲れというものが生まれる。アイラもあれは自然な行為としてやっていた。
不快な事をされたのは分かる。が、その者はその者なのだ。君の気はキリサナが伝えた。安心しろ。アイラは今反省をしている。
仮に君が彼女へ攻撃を加えに行っても虚しさが残るだろう。怒りが湧いて出るようであれば、内で彼女を殺害すればいい。何回してもいい。気は確実に晴れる。」
「ええ。にしても、王への畏怖が絶えないわね……」
「そればかりは俺も持っている。それでいい。持っていたらいい。無理にどうにかしようとしない。それでいい。」
マアサは決めているようだ。この世界を変えようなどとは思ってもいない。やってきた事を受け入れる。
マアサは既に隣人の事を知っていた。またそのような存在が現れたらその時に対応をするそうだ。対応というのは、マアサなりに感知をしたり何かあったら避ける、回復をする等。今回は死んでしまったと嘆いた。
世の不正を暴く為に警察官になった。負けていられない。生きたかった。だから生き返った。決してあの邪が過ぎる顔に惹かれてる訳も無い。自分は自分として生きている。
打ち倒せると思ったら打ち倒す。その眼で世に戻って行った。完全に治ったようだ。嚔や咳がまだ出来ないのは気合いで何とかなりそうだ。院を出ようとするとTと会った。
「おおフリー!マアサ、完全に治ったみたいだな。滅茶元気そうだった。本当はまだ退院しては駄目なのだけどな。あの様子では止められそうに無かったんだ。
元気そうでいいと思うけどな。仕方が無いと思ったので退院を俺が許させたよ。まだ無理は出来ないけどな。」納得だ。
俺もこの病院を出ると同時にマアサからメッセージが来た。署の人が俺へ送ったマアサは死亡したというメッセージのスクリーンショットの画像と「これは何かの幽霊が送ったのよ。迷惑よね。」と来た。
まるで彼女が死んでいたのが嘘のようだ。二度と戻らないと思っていた日常がこうと戻って来るとは… 俺は帰れる。家に。
何かが度々あるのは俺が際立つのかもしれない。その後は家に帰って仕事を終わらせて輸送。社長も空に驚いていたので明日の仕事は休みの予定だそうだ。空きが出来た。
その日は寝て、起きたら空は晴れていた。青色に。一時の夢だったかな。メッセージが来ていた。イザヤからだ。
「shalom!元気?昨日は君の国は空の色が紫になったね。あれは多分何か偉い人の仕業かガクルスのような感じの者の仕業かもしれないよね。有害性は無いみたいだよ。今は晴れているのではないかな?
元の空に戻ってるから、安心して過ごしてね。空のその着色は恐らく、妙な粒子だ。それ自体は無害。しかし色は何か強力な念によって彩られているみたいだ。
俺の勘だけどね。紫と言ったら……そう明瞭な感じの意志では無いよな……。」
イザヤの言葉は納得が出来る気がする。
それは誰が犯人なのか、までは考えない方がいいとのようだ
これはこれでいい。日常は普通。驚いているのは世間だ…。足を蹴って外に出、買い物に出掛ける。周りはいつもどうりだ。
店の中は綺麗だ。あれこれ品物があって楽しい。しかもあの旅人の考慮をしたと思われる品物が未だある。デザインが凝っているのに惹かれて作ってしまったか…。
それならいい。買っても特に何もない。ペンだが持ち手にふわふわとした雲が付いている物を発見した。原材料、雲の部分だけ不明だ。これは何だ…。甘い香りがする。購入をして、思わず舐めてみた…綿飴のような風味だ。危険物かもしれない。
俺はとんでもない物を口にしてしまったかも
怖くなって相談をTに機器でしたら「これは今流行りの砂糖筆だね。この部分、舐めると甘いんだよね。
原材料はある薬物を燃やして綿状にしたものだよ。しかも分裂性があるから舐めても齧っても直ぐに再生をして元の量に戻るよ。」
「分裂性…それはつまりこれ自体が宇宙外か生きているかのどちらかとしか思えない」
頭がぼんやりとした。
「有害では無い。甘い味が楽しめるんだ。これ数量限定だよ。ラッキーだよ君。」
飲み込み難い。味覚への快感はあるが理解に無理な物だ。楽しむとすればいいか。…本当だ。千切ってみたがまた再生をした。このような物が必要かはまた考えよう。
今はこれを持ってテラスでも行くか…。何気に甘い筆を齧りながら歩いていると前から子供猫がぶつかって来た。
猫?子供?
人の形をした猫だ。園児くらいの大きさをした猫人間、だ。
「お兄さん、それ、ちょうだい。僕それ欲しいの。」
「ああ…。これか?いいぞ。」
砂糖筆を猫少年に渡す。
「有難うお兄さん!あのね……僕、ユウマだよ。」
!
彼はこのペンの雲を舐める事でしか解けない何かに掛かっているのか?
少年はペンの雲の部分を舐めると途端にその身体中から泡が細かい粒子状に発生し、皮膚の細胞が徐々に人間の肌を帯びてきた。
体毛も禿げて下に落ちた。その姿は人間で、ユウマそのものだった。
「お兄さん。有難う。実は僕、捕まってしまった後にマアサさんから「貴方は何も悪く無いわ」って言われて牢を出られたのだけど、そしたら突然こんな事になってしまって。フリーさんがよく行く所を教えて貰ったの。そしたら偶然に出会えたんだよ。僕をそうした犯人は分からない…。」
「マアサはその時一緒に居た?」
「居た。生き返って元気あるから牢を出てもいいって分かるって言ってた。何かは分からないけど。」
「そしたら急に猫の姿になった?」
「そう。本当に何故か。身体中がむず痒くなって……」
「来い。ユウマ。恐らくあの人だ。」
俺はユウマを連れてアイラの元へ向かった。
厳密には会わない。館の庭に探し物をした。すると首飾りのような物を発見した。これは恐らく彼女の力だ。
これを壊すとユウマは二度と猫には戻らない。恐らくマアサに本来は掛ける筈だったものをユウマに誤って掛けてしまったのだ。この飾りはこの庭に落ちているのはアイラがそのような誤差を起こしたからだ。
何かを失敗するとその力の痕跡を落としていたように見えたのだ。これ迄からの推測。庭にはその気が入りやすいと土竜の件で分かっている。この飾りは物では無く思念で発生をした物で間違い無いだろう。
そのように考えている間にもアイラが襲って来ないかを後ろを見ていた。それは無く、無事に帰って来れた。俺の家だ。ユウマは冤罪を脱ぐ事が出来た。しかし児童養護施設は不味い。
別の関東の施設は無いかを調べたらあったので、そちらにユウマを保護して頂く事にした。今度こそ、信頼出来る所だといいな。そう何回も似たような事にはならないと信じよう。マアサにメッセージを送って説明をしたら砂糖筆は何者かが作ったものらしい。作者は恐らく力のある者だという。
その力で偶然にもユウマは術が解けた。本能から欲していたのはそういう事だったのだろう。それを作った人は何故このような嗜好品を作ったのだろう。単に独自の科学研究が成功したから、という理由では無さそうだ。
このように甘い思惑に導こうとする者は何かを考えている。よく味わってみるとこれはアラタの家にあった香水から発せられていた香とよく似ているような気がした…。アイラとアラタが何かしらで戦っている風景が浮かんだ。
マアサへ猫にするものをアラタが止めるというような。それはそれで面白い図だ。図書館へ行って小説を読みたくなった。何か面白い話を見つけてその世界に浸れたらいいな。行く道は歩道が綺麗にされていた。何か昨日の空があってからだ。世界が一度終わりと思って綺麗にしてしまいたかったのだろうか。
しかし何処かから不正な事故でオイルが流れて輝いて見えたようだ。その向こうに昨日の空の色のような液体者見える。気のせいか、何やら赤い液体が飛び散っているようにも見えた。殺されたか。どのような事故が起こったのだろう。様子を見に行こうとしたが何と無く、思う所があって辞めた。
世界的な問題事にならなければまあ、いいんじゃないか。歩みを図書館へ向き直して歩みを進める。面白い話を見て感性を潤したい。図書館の中は本の香りが大勢の感性を潤す話があるようで心躍る。色々と題名を見ていると沢山の楽しい世界がありそうだ。ふと、前に来た時に見た謎の子供向けの本を思い出した。
あの人のシリーズはあれ以上に無いみたいだ。恐らくあのような本は不思議な世界へ誘導させて不思議な気持ちにさせるのが目的だ。が、今思うとあの本は何かしらを感知した。筆者は恐らく俺が見た世界を綴っている。
作者名が書かれていなかった。あの本は今思えば王に渡しておけばよかったかもしれない。借り物と称したあげる物、か。王は喜んでいただろうか。あの本をもう一度探してみたが、見つからなかった。諦めて元に話を探す。タイトルを見て行くとあの兄、ヨハンの著書があった。「イキナリ現れた宇宙人の元で働く事になった僕」というものだ。気になったので見てみる。
すると兄さんの家の中に突然ガクルスが現れて「私の言うように世界を支配しろ」というもので始まりガクルスの好きなように働かされるがその分の甘い報酬というものを彼の星の肉や旅行などで受け取っていた。根深い悩みも聞いてくれていたという。
これからも彼と共に頑張っていく……という話だ。これからの兄さんの生き方の目的も綴られている。見てみると結構売れているようだ。底の生き方から味方が急に現れて裕福に……か。こうして著書にして見てもらうようにすると良さがあるのだろうな。
他にも海の生物の本やら地下都市の生き物やら実は眠れない人がいる話やら興味が惹かれて面白い。世界観がそれだけで広がりそうだ。何を見ても楽しかった。世界が楽しさを彩っていた。何をやってもいい感じになりそうだ。ずらりと一覧を見ていると何から何まで楽しそうな著書ばかりに見えて世界観が広がる。
猿から人間へ進化をした形態の様子について楽しく綴られてある著書もあった。これはこれでよい。何でも良いように考えられる。ゲームも交えてやると一層楽しい。パズルは世界を綺麗な海にしてくれる。
写真も見るだけで……というようにすっかりと没頭していた。ふと、何かを飲みたくなったので飲み物サーバーに行くと壁に背を付けていたレイが居た。
「ようフリー!俺も今、君の感覚を感じて楽しくなってた所。やっぱ君は見物とされている本の文字を見て感じるのが好きだよなー。君の楽しいが伝わってきて楽しくなるわ。」
「おう。お前は好きでは無いのか?」
「俺はこっち。腕立て伏せをして誰よりも強い肉体を手に入れる事を想像して幻想的な世界に入り浸れるのを考えるタイプ。」
「分かるよ。そういうのもいいよな。」
「ああそうだ。これを預かって来たんだ。これ。じゃあ、またな。俺は仕事だよ。」
レイから渡されたのは何で出来ているのかが分からない写真入れの首飾りだった。
見てみるとそれは写真ではなく、俺の誠の名前が綴られていた。
終
エピローグ
偶にスバルの家へ遊びに行ったりマアサの様子を見に行ったりしたが皆、いつも通りだ。Tも普通に仕事を遂行している。日常はいつも通りに動いている。
散歩に出ると風が心地よく吹く。いつもの楽しい図書館へ行きたい。このような時には少し歩速を上げて走り乍ら向かうと楽しい気になる。俺が前に飼っていたハムスターは確かこの辺の家で飼われていた筈だ。
見に行ってみるとハムスターはその家の者が飼っていた。「この家にはハムスターが居ます。」と表札があったのだ。安心した。歩きを上げて図書館へ進路を変えて向かう。穏やかな風景を確認したかった。余りにも様々にあったのでそのような和やかな風景が恋しかった。
後ろから声を掛けられた。
「君、フリー君だよね?この子の元飼い主の。」
話しかけられた。ハムスターを散歩に連れて行こうとしていたらしい。するとハムスターは俺の元に走って来た。悪いが今は俺は君の飼い主では無い。するとハムスターが「フリー。こっちに来て。」と言った。人間の言葉で喋ったのだ。思わず今の主と顔を見合わせた。
「ユウキさん、ちょっと行ってくるね!また戻ってくるからね!フリーさんもおいで!」と言ってハムスターは駆けて行った。
追って行くと図書館に着いたがその中の更に何処かのコーナーへ着いて、止まった。
「此処で本を読んでご覧」とハムスターは言う。この子は名前を結局最後まで付けなかった。今の家で「フワスター」と呼ばれているという。フワの案内をした本を手に取って、読んでみる。
すると題名の無い本真っ白い本で、捲っても何も書いていない。「何も書いていないな…。」「そうだよー。何も書いていないんだよー。でもそれ、よく見てみてご覧。」
本を見続けていると文字が浮かび上がって来た
「僕は王と冒険をした。我が忠実なる王よ。軈ては貴方の中に帰りたい。」
この本は何かで出来た本か?
「それ、フリーさんにいいかなって。世界でたった一つしか無いよ。この図書館にあるのも偶然ではないんだよ。」
「分かる。何者かの仕組んだ事か……?」
「ううん。違うよー。仕組んだのは、君自身だよ。」
「俺が…何かでこのような事をしたのかも知れないな。この本を見せてくれたのは偶然か」
「うん。偶々君が居たから教えたの。図書館へ行きそうに思えたから丁度いいかなって。」
「そうだよ。この本は何なのかは不明だけれどね。」
「それ、自分の身体にくっつけてみてご覧。」
「こうか?」
自分の身体にこの本をくっつけると本が俺の中に吸い込まれて行った
……特に体調的にもおかしな所は無い。
「これで君は何かを手に入れた。おめでとう!」
「うん。何を手に入れたのかは分からないがな。」
「まあ、いいじゃん。君は大切なものを手に入れたよ。じゃあ、僕はこれでね。またね、フリー。」
フワは駆けて何処かへ行った。帰ったか。
立ち往生だ。折角図書館に来たし何かを見て行くか。
少し先のコーナーに新しい新刊の観光メニューがあった。手に取って見てみる。関東で新しい観光スポットが現れている。目を通してみると近くにあった。気になったので目星を付けておいた。
気ままに本を見たら眠くなってきたので家へ歩みを進めた。
温風が吹いてきた。街の向こうで何かのイベントが行われているようだ。祭りか?
最近の事を考えたが特に何も無かった筈だ。
何かが出来たか現れたかだろうか。
見に行ってみると何かしらの企画が完成したようだ。職場の者達が万歳をして鮮やかな風吹を上げている。
そのように日常は輝いて彩られて行くのだろうか。
俺もちょっと気休めに近くに出来た温水水族館でも行くか。最近出来た所だが、温水で海の生物達が生息をしているという水族館だ。そのような事は本来であれば不可能なのだが……気になるから行ってみよう。
プロローグ 終
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