1-18 距離
いつもの陰鬱なお茶会から解放された所を急に腕を掴まれる。
「ちょっといいか。」
いつも以上に鋭い眼光のレインにただならぬ様子を感じて、立ち止まった。
「なんだ、手短に話せ。」
アレックスとの雑談の時間を取られたことに不機嫌さは、時間の経過とともに増幅していく。
「アレックス様、コイツ、少し借りていいですか。」
レインの声はいらだちを隠しきれないでいた。彼女はアレックスとの時間を、以前にまして大切にし、他の誰が入る事を露骨に嫌がるようになっていた。
あの生活感のない、無機質な家を知っていることは、彼に心を許している証だと思っていたが、知られたからといってどうでもいい有象無象な存在である可能性を拭いきれず、敢えて彼女を『コイツ』と距離の近い表現をすることで、自分が相手より優位にあるとアピールする。
「えっ…。ああ…、セリスがいいというのなら、私の了承を得る必要はないと思いますが。」
ガンメタリックグレーより、白い…どこまでも清らかな純白が似合う人からの突き放すような言葉に、どこまで行ってもこの気持ちは独りよがりなのかもしれない事をセリスは思い知らされた。
『せめて私の話が終わってからでいいですか。』と彼女は彼に言ってほしかった。
元々、独占欲は無く、神の元の平等を説いている彼が人前で、それを言動で示すとは思っていなかったが、それでも彼女は嫉妬して欲しいと…、難しい気持ちを持て余す。
『禁忌』
その一言が見えない壁となって、ふたりの間に立ち塞がる。
高すぎる壁。あの日…、緋色のドレスを着て会いにいった日から、ふたりの間にはギクシャクしたものがあった。
禁忌を犯してしまいそうになった事実。
シュテルン最高位の教皇が掟を破ること、その相手も
それでも思い合っていのに…。
『また抱きしめていいですか。』
後から抱きしめられ、漂うバラの香りを覚えているのに、その言葉は2年たっても実現されることはない。
独占欲を抑え、平然とレインに向き合う。彼の銀縁の眼鏡に一瞬、自分の顔が映ったが、彼女はその顔を…、一歩先に進めない自分を好きになれないでいた。
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