第5話


ー俺は、何をしているんだ。


夢を見ていたんじゃない。現実だ。きっと


身近な奴らが、記憶が、消えていく、失われていってるのに薄々気づいていた。


しんでいるのか。俺は。


かず、も、居なくなるのか。


大切な、友達を。


「どうしたら、いいのか、分からない」


頭を抱えている動作をするが、腕も上がらなくなってしまっている。


頭が働いては、いるが。心が動かない。


存在が否定されるだけ。


このまま、しぬのか。憧れの俳優になったのに。

何も成果を出さずに、終わるのか。テレビに出るって約束したのに。

このまま終わるしかないのか。


誰か。見つけてくれ。お願いだ。


それまで、生きていくと信念を持って待っているから、このままじゃ嫌だ


「しゅーちゃん?」

「しゅうと」

二人の声が聞こえてきたような気がした


かずSide


俺は、朝を起きリビングに行くとコーヒーを

飲むために水道の蛇口をひねり水をためようとしていた。


(今日も、仕事があるの嫌だな)


毎日、思っている事だ。何も変化がない。行動するのが出来ないだけだが。


コーヒーを作る用意をして、待っている間がつまらないため、テレビの電源をつけた。


ー昨日、入ったニュースです。

橘修斗さんが、道路に飛び込み車に引かれたというニュースが入ってきた


(嘘だろ…昨日、会ったのは…?


本物だったはず…よな)


あいつに、電話をかけよう


スマホを、慣れた手つきで触り、すばやくあいつの電話番号を探す


コールが鳴り響く。

数回、待っていたら、繋がった。


「もしもし」

「なあ、ニュースをみたか?」

「みたよ、しゅーちゃん事故にあったらしいね」

「そうなんだよ、なんで、他人事なんだ」

「かずと同じタイミングで知ったから?」

「まだ、身元確認してたらしくてさ」


俺にとっては、深刻には感じなかった。

心配しなかったのか。とさえ、疑問に思っているぐらいだ

何も言わなかった。


「そうだったのか。言ってくれたら良かったのに」

「今まで通り、帰ってくると思って」


「仕事が、終わったらそっちに行くよ」

「ありがとう、待ってる」

「仕事があるから、じゃあな」


と返した後に、あいつから先に、切った。

久しぶりだと、色々と雰囲気が変わるところもあるんだなと感じた。


コーヒーを時間が許す限りゆっくり飲み、片付けをして、身支度を整えて、自分の職場に向かった。

ご飯を、食べる気にはならなかった

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