#明日もきっと雪が降るから隣に

STORY TELLER 月巳(〜202

#明日もきっと雪が降るから隣に

#明日もきっと雪が降るから隣に


【storyteller  by  Tukimi©︎】

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たまたまの幸運ってあるんだな、神様。

と、思ってガッツポーズしたい気持ちを抑えた。





わざわざ、不審な人みたいに。


どうしたコイツ?みたいな目で八神さんに見られたら、次はもう、立ち直れないからな。



普段は雪など降らない場所に、吹雪と、10センチの積雪だけで、街は半分停止した様に。

車はのろのろと、列を作り。



視界は、白。見ようとしたら氷の様な硬い雪が当たってヒリヒリする。


そんな日に。


そんな外に。


目の前で、彼女が。

傘を開いて、歩みだそうか、少し考えているのか首を傾げ、手をひらひらして、


指を折り、そして諦めた様に歩みだそう、と、している、みたい。


いつ話しかけるか、悩んでいるうちに、

動きを目で追い、見たことない姿に見つめていたら。

あと少しで。

靴箱前から離れてしまう、と、気づいたら。


「あ、坂本君、傘ない?バスだよねー」


「あーうん。いや、あるけど、折りたたみじゃ持たないかなと思って」


タイミングよく振り返る彼女から、話しかけてくれた。


手元にたまたま置いていた傘を見せると、外を見て、無理だねと笑って。


お迎え、親に頼んだら?と。


また、前を向き歩み始めかけたから。

勇気を神様、と。


「いや、八神さんは?お迎え来たら学校出たら?」

話しかけて見たら。


「え?帰るよ、そんなん、無理だし」

バスもこなそうだし、歩くかなと。


教室で迎え待ちして、

親遅いと、言う、タイプじゃない、とは思っていたけど。


まじで、この吹雪、歩く?


「大丈夫、歩いて四十五分くらい、近いから。」


なんとなく。

一緒に歩いていい?と。声を掛けて。

急いで靴に踵を入れた。


方角が、自分と彼女同じかはわからないけど。とりあえず、使うバス停同じことまでわかっていて。


ご一緒の道のり、だからと並んだら。


傘に入れてくれた。

八神さんが近い。

まつ毛も、赤い鼻先も、手が届く距離で、なんか落ち着かない。


「バス、動いてないね」


うちの学校の子も大人も、並んで、時計を見たりスマホを見たり、来ないと寒いにイライラしているんを見たら。


あわよくば、バス待ちしながら、話そうかと思ったけれど。


イライラの隣も。することないからしている噂話の隣も。


あまり居たくない感じ。


じゃ、と離れかけた八神さんは、元から歩く、と言い。

もし、バス来そうだったら乗って帰ったら、と僕が言ったから、一応、と。


バス停を見たけれど。待つ気にはならなかったらしい。


「帰るか」

と、道を返し行くのに。

「あー、俺も歩くわ、いい?」


同じ方向じゃなかったら、とか、

お家どっちの方だと、聞く彼女に。


こんな日は、車がスリップしてくるくるしたり、事故が起きたり、


何かしら危ないことに巻き込まれたら、大変だと押し切り、隣、歩かせて貰う。


「うちの親父さ、前山道、道路の真ん中で雪用タイヤだったけど、スリップしてさ。


もう、遊園地のコーヒーカップみたいに、もう、グルングルンしちゃってさーまじ怖かったよ、あれ。」


「事故にはならなかったの?」


「あー。対向車なしで。雪深い場所だったから、車突っ込んだのは雪の壁で。ほんと運良かった、奴よな」


親父の、スキー好きの、お陰で。

エピソードを聞いて。


危ないことも、あるんだね、って言う八神さんは、一緒にいることをなし崩しに許してくれたか。


その後は、僕の心配を諦めて。

ありがとうと言い。


僕らはもうすぐある、テストの話をした。




「わたし、ここだから。またね。」


意外と早く、着いた彼女の家の前。

傘を貸すと、渡して。


目の前でドアに吸い込まれた、最後の、長いコートの裾が消えて、閉まった、戸の音を聴く。


さて、道、帰るかと。

二歩、いつもとは違う景色から、自宅の方を読み当てる、間に。


「坂本君。カイロ持ってって!」


消えた彼女が。

カイロを。


今度こそ、彼女が消えたら。


僕も帰る。


カイロをコート両ポケットに二つずつ。

四つあれば凍えないよね?と、くれたカイロは、流石に暑いから。


ズボンのポケットに、左右する一つずつ、入れて。


もう、濡れて爪先の感覚が無い足を動かす。


寒いし、足痛いし、顔も雪で痛いだけど。

手やズボンのポケット部はやたら暖かく。

心もウキウキして。


道のり存外早く、帰宅したら。


電話で迎え呼ぶの待っていたのに、と。

慌ててバスタオルを取り拭く、母とおばあちゃん、がいて。


そう言えば。

八神さんのご両親は、昼間、居ないのかもしれないと気がついた。


彼女が、入って付けた家の明かりは。

付いてなかったから付けたんだし。

切れている部屋の暖房が、効くまで時間かかる。


今、僕の、ようなすぐ暖か、すぐ風呂にはならない、って寒いなあと。


今彼女が何をしているか、寒く無いかが、気に掛かって。

でも、追い払う。


借りた傘を干さなくては。




残念ながら明日も雪、と言うニュースに。

内心、嬉しすぎて踊り出したい気持ちだったが。押し込めて。


貰った数のカイロと、傘、そして明日の準備をして。

明日雪でも、自力で帰るからと、母に言いなんやかんや言う声を無視、部屋で寝る。



明日も楽しみだ。

傘をダシに話もできるしうまくいけばまた、一緒に、話が出来てしまうかも。


明日もきっと雪が降るから隣に。


何か、楽しみすぎる、眠れないんだけど。


会ったら彼女がどんな顔をするか、何を話そうか、それだけで、胸が苦しい。


夜なのに。

体が熱い。



-お仕舞い-


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【今宵の独り言】


天気が悪いと。

親に迎えに来てと、言うのが。


当たり前なんだなぁ、と

思うのは、出先の駅前、バスロータリーにずらっと並んだ車たち。



うちの親は、呼ぶな。もしくは仕事で基本呼べないだし。基本自分で歩けだし。


呼んだら、行くまで待たせた、だ、

感謝しなさいだと、お礼を込め敬意を伝えても、悪い事してないのに、お説教コース。


と言うことで。

私はすぐに、面倒なので、頼まない習慣になる、環境だったから。


「来ない、車遅い」

と親に怒る子を見たりすると、すごい、なあ。

感嘆、だ。


うちの親なら

迎えに来てもらって怒るなんて何様だ?と二度と頼めないことを、する姿に。

びっくりします。


迎え頼む?いや帰るし、自分で帰る前提で生きているからか。

傘なくても、買えばだし、雪?歩けばだし。


何とかなる事までして貰うと、


普通できる事すら、自分で何とか出来なくならない?大丈夫なんだろうか。


まあ、私が心配する事ではないが。

よく見る光景、これ、

少なくとも、して貰ってありがとう、じゃない、怒るより、と思うそれが。

感謝だよね、と。私は思うけど。


ああ、人は

不思議なものですね。

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