空がいつも薄曇りなのは

 死にたいなんてそんな大層なこと、考えたことはあまりない。嫌なことがあったって悪いことがあったって、会いたくない人がいたってそのうちいなくなる。消えてなくなる。離れてしまえば見えなくなる。人一人の身に比べれば地球は十分すぎるほど広いし、人の数は十分すぎるほど多いし、時の流れは足踏みしていられないほど早い。

 逆に、生きたいと思ったことだってない。どれほど嫌だ嫌だと言ったって苦しみが見えていたって過ちに心を痛めたって、放っておいたら明日が来る。いつも通りの顔を見ることになる。また日が昇ってしまう。たった一人で生きてゆくには世界はあまりに広く、雑踏は迷うほど多く、太陽は懇切丁寧に私に毎朝挨拶をしに閉めきった窓をノックする。

 私は生きたいと思う希望的観測と死にたいと思う希死念慮の両方を肯定しない。載せられたベルト・コンベアーの上を流れるだけの人生で、生きようと思うことも死のうと思うことも馬鹿らしくて堪らない。雨も晴れもない薄曇りの空を歩くような日々に希望も絶望も見いだせやしない。降りるには多大な苦痛を伴って、立ち続けるには継続的な苦難を堪える必要がある。望んでもいない二者択一の結果、惰性のまま走ることを選び続けてまた歳を重ねる。

 そんなこんなで、今死ぬことと少し生きてみた先の利得を秤にかけて、最後に痛みを生のほうに置いた結果として今日を生きている。まるで搾り滓みたいな人生だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

4TH LIVIN' Garm @Garm

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る