第15話 文化祭前夜祭前夜 Part.1

『ただいまー』


「おかえぇ…カナぁ…」


『え?どしたのユズキ』






彼女は指を指す。指先はキツネの幽霊へ。




家に帰る過程で聞いたが、彼女の名前はスタシア、というらしい。

初代校長は良いネーミングセンスをしている。



「誰よぉ…その女ぁ」


ユズキが2人で話がしたい、ということなので私の部屋で、幽霊がまた憑いてきた理由を説明。






『…ってわけ』


「ほほう…」


ユズキと結構いるからわかる。


絶対納得してないなこいつ。眉間にしわ寄せてるし。



「ケモミミはわたしで間に合ってるでしょぉ!なんで連れてくるのさぁ、またぁ!」


『作者の最近の好みらしいです…』


「いや作者の性癖聞いてないから!…わかったって」


『お?意外に素直』


「一言余計ですねぇ、百歩譲ってやったのに」


何か怪しい、私はそう感じた。


『ねぇ…ここは譲って、どこがでナニかしてもらおうとか考えてない?何もしないからね私』


「ギクッ」


『何を考えてたのか…正直に言いなさい』



その場で伏せ、うあああああ!と叫びながら…!


「1日中カナとぉ!イチャラブセックスがぁ!したかったです!うあああああ!」


『(最低な告白だ…)』









校舎の突貫工事のための休校が終わって1週間が経った。


特に変化もなく、みんなで屋上でご飯食べたり、


購買部を頑張ったり…


何気ない、毎日だった。




…だったんだが。


『文化祭前夜祭、有志募集…』


永崎先生から、あるプリントが配られる。


「えーと、有志を募集してたんだけど、集まった有志がゼロらしくて」


この学校の文化祭はなかなか力を入れているらしく、一学期の定期テスト後に前夜祭が始まる。


前夜祭は主に体育祭、そしていろいろな部活の寸劇や本題の有志の出し物がある。


後夜祭が夏休み後。同じく有志の出し物、そしてアニメとかでよくあるクラスの店作るやつだ。


名前忘れた。みんながみんな『誰かがやるんだろ』精神なんだろうな、この学校。…日本人らしいが。


「だからこのクラスで抽選で誰か選ぼう!」


おいちょっと待て。おい永崎。


「ど…どーする?カナ」


『誰かやってくれるでしょ?げげたん』


周りを見てみても…やりたいという意見の人は誰も。


「はい!私やる!」


「わぁ!先生嬉しい!…その声は…」


「はーい!赤坂仁栖(アカサカニズ)です!出席番号1番!」


お世辞をいくら抜いても、あの子はすごい。いろんなことを進んでやってくれるし、男子からもモテてるらしい(情報屋ハツカ情報)。まあ当たり前だ。



「でも一人じゃ出し物心細いし…」


「俺がやろーか?」


「室長は黙ってろ」


「えぇ、酷くね?」


色々な人が一緒にやろうか?と言っているが、彼女は「大丈夫だよ!緊張するでしょ?」と気持ちだけ受け止める。優しいなー。


彼女が席から立ち上がり、辺りを見渡す。


あ!と声を出してこちらを指さす。


おいおいまたいじめか?


私のいじめはもう間に合ってるぞぉ。










「今田カナ…だっけ?一緒にやろ!」




新手のいじめきたわ。










放課後、教室で。2人きり。




あの、赤坂ニズと。


「ごめんね?急に選んじゃって。どうせなら、抜けても構わないんだけど…」


『抜けたいです』


「包み隠さず!?…ちゃんとカナを選んだの、理由があるんだよ」


『?』



ニズは教卓の前に立ち、私の前で一曲サビを歌う。


私でも知っている有名なJ-POPだ。


素人の私でもわかる。


この人、すごい歌上手い。

元より聞こえやすく耳に優しい可愛い声質なのだが、それが相まってとても聞いていて心地よい。



「この学校、なぜか校歌がないんだよね」


『あぁ、確かに、気になってた』




「だから、私たちで作ろ?」


『無理ですね』


「えぇ!?今の断る!?すごいストーリー展開されそうだったよ!?」


私はあの天使の代名詞であるニズを手こずらせている。今誰かクラスメイト来たら瞬く間に次の日いじめに遭いますね。


『だとしても、私である必要は』


「私、頭悪いから歌詞とか、考えれないんだよね。歌は自分でもできる方だと思ってるから、カナなら歌詞づくりくらいできると思って!」


「くらい」って言った。全世界の作詞者敵に回したよ今。


『えぇ…でも、他の楽器はどうするの?』


「そこはこう…なんとか!」


『無理ですね』


「諦めないでよぉ〜!」



そんなこんなで、今日は帰った。「また気が変わったら言ってね!」とニズのラインもらいましたありがとうございます。家宝にします。








机の上で、真っ白の紙、シャープペンシル、消しゴムとにらめっこ。歌詞って…どう作るんだ?


「困ってるようじゃの」


『あ…スタシア』


カクカクシカジカ、と伝えると、彼女は一つ提案をする。


「あるじがなんで彼女に選ばれたのか、それを詳しく聞いたらいいと思うぞ?」


スタシアは、私のことを「あるじ」と呼ぶ。


『電話…してみるか』




《ごめーん、ちょっと出るの遅れて!どーしたの?》


『なんで、歌詞づくりに私を選んだのかなって』


《んー、深い意味はないかな?》






《ちょっと前、カナ、いっつも昼ごはんの時、どっか行っちゃうじゃん。それでみんなは「このクラスにいづらいんだろ」とか、「居場所なくて草」とか、ボロクソ言ってた。私は…そうは思わなかったけど、でも、人と関わるのが嫌いなのかなーって、思ってた》


ひでぇな。ヒトは怖いですね、やはり。

私もヒトですけれどもね。



《私は、どこで昼ごはん食べてるんだろう?って思って、カナについて行ったの。…まさか、屋上で、食べてるとは思わなかったけどね》





《みんなが、みんな、笑顔だった》




《みんながみんな、あなたを好きになってた》





《あなたもみんなすべてを、好きになってた》





《これ以上青春を楽しめてる人、いないかなーって思って!ただそれだけ!じゃあね、また明日!》


ブツ、と電話が切れた。


「これは、すごいものを託されたようじゃな?あるじ」


『めんどくさい…けど』








『そう言われたら…やるしかないよね?』





私は、思うがままに、歌詞を書き記した。


あ、やべぇやっぱ無理かも!ヤヴァイ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 20:00 予定は変更される可能性があります

『○○○○○』 米津玄師が大好きなエセ小説家 @tutinoko_darkness

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ