第八話 ギャル達の異世界転移 その二

≪榊原 美佐子 視点≫

「でさぁ~、エルサは三百年前の勇者の事とか知ってる~?」

「もちろん知ってます、有名な物語ですから。三百年前にこの国を魔王の脅威から守ってくれるために来てくださり、恐ろしい魔王と勇敢に戦って勝利し、この国を守ってくれたんです」

「じゃぁさ~、魔王を倒した後の勇者はどうなったの~?」

「この国で幸せに暮らしたとされていて、勇者の子孫が今もこの国で生活しているそうです」

「そうなんだ~」


 アヤはあたしと違って、誰とでもすぐ打ち解けて仲良くなる事が出来る。

 今も、会ったばかりのメイドのエルサと仲良く話ながら、この国の情報を聞き出してくれている。

 あたしは人見知りが激しい方だし、アヤみたいに誰とでも話す事は出来ない。


「ミサ~、このお菓子意外と美味しいよ~」

「あぁ、ありがとう」

 アヤがエルサと話している間に、あたしはモモとエルサの出してくれたお茶を楽しんでいた。

 モモは人を一目見て、善人か悪人かを判断できる。

 エルサも、モモが善人だと認めたから選んだ。

 モモはあたしとお茶をしながらも、アヤとエルサの会話に聞き耳を立てている。


「うん、嘘はついていないね~」

「それは良かった」

 モモは、話し相手が嘘を吐いているか見抜く能力も持っていて、以前、馬鹿なあたしが男に騙されそうになった時も助けて貰った事もある。

 こんな変な世界に連れて来られても、あたしとアヤが安心していられるのは、モモが傍に居てくれるのが大きい。

 あたしは力しか取り柄が無いし、二人を守るために必要だったら、遠慮なく力を使おうと思う。


「あの、大きな声では言えませんが、お城にいる男性達には気を付けてください。

 魔王を倒した後、皆さんに子供を作らせようと狙っています」

「やっぱそうだよね~」

 あたしらは魔王を倒した後に子供を作らされると、エルサが教えてくれた。

 つまり、あたしらを元の世界に帰す気は無いと言う事だ。


「じゃぁ~、ちょっと委員長の所に行って来る」

「あたしが付いて行こうか?」

「ううん、エルサについて来てもらうから良いよ、ミサはモモを頼むね~」

「分かった」

 アヤは委員長を通じて、クラスの女子達に注意喚起をしに行った。

 あたしにはモモの護衛を頼まれたけれど、あたしらに与えられた部屋の中で危険があるはずもない。

 アヤの帰りをモモと待ちつつ、これからの事をモモと二人で話し合う事にした。


「魔王を倒しても帰れ無さそうだし、やっぱり帰る方法をあたしらで探すしかなさそうかな?」

「うん、モモもそう思う~」

「だけど、どうやって探すかが問題だな…」

「う~ん、図書館とかで調べる~?」

「仮に図書館があったとしても、帰る方法を記された本があるとは思えないな」

「そうだよね~」

「三百年前の勇者の話が聞ければいいんだけれど…」

「勇者の子孫を探してみるとか~?」

「うん、今の所それが早そうだ。日本に帰るまで、モモとアヤの事はあたしが守るからな!」

「うん、モモ弱くてごめんね~」

「あたしに出来る事はこれくらいしかないからな」


 しばらくしてアヤが戻って来て、あたしたちの会話に加わった。


「勇者の子孫を探すのはいい考えだね~。それと、うちらには仲間が必要だと思うんだけど、どう?」

「う~ん、確かにこの三人だけだと心許こころもとないけれど~、信用のおける人っていないよね~?」

「確かに、委員長は信用できると思うけれど、あたしらの事嫌ってるかな」

「魔王を倒させるってことは~、モモ達も戦わないといけないんだよね~?」

「ミサはともかく、うちとモモは無理っしょ」

「だよね~」

「だからさ、うちらの為に戦ってくれる男子を一人、仲間に入れようと思うんだけれど、どう?」

「アヤ、クラスの男子達は頼りないと思うけど?」

「そうだけど~、いないよりはましっしょ」

「そうだね~」

「アヤがそう言うなら、分かった」


 アヤが誰を仲間に入れるのかは、その時まで秘密だと言って教えてくれなかったけれど、アヤがあたしとモモが嫌がる男子を仲間に入れるとは思えないし、安心してて良いと思う。

 外に出るのは危険だと判断し、この日は部屋の中でずっと過ごした。


「お風呂は無いの~?」

「お風呂とは、何のことでしょう?」

「温めた水に体を付けて温まる場所だよ~」

「それでしたら、魔法で体を綺麗に出来ますので、お風呂と言う物はございません」

 たいして美味くない夕食を食べた後、エルサにお風呂が無いと言われてあたしらは落ち込んだ…。

 でも、魔法!魔法だよ!

 エルサがあたしらに魔法をかけてくれて、一応体の汚れは綺麗になったのかな?


「あたしらも魔法が使えるようになるの!?」

「はい、明日にはその事を教えてもらえるはずです」

「そうか、明日だな!」

「うちら、本当に違う世界に来たんだ…」

「モモもびっくり~、でも、魔法は使ってみたいよね~」

「うんうん!」


 アヤとモモも魔法に興味津々だけれど、あたしは二人以上に興味を示していた。

 あたしは幼い頃に魔法少女にあこがれて、漫画やアニメはほとんど見ていた。

 日本に帰りたいと言う気持ちは変わらないけれど、魔法は使ってみたい!

 幼い頃にあこがれた魔法少女の様に、あたしもなれるかもしれない!

 二人には悪いけれど、魔法少女になれるのなら、この世界も悪くないのかとも思ってしまった。

 ううん、その考えは駄目だ!

 アヤとモモは日本に帰りたがっているし、あたしも二人を無事に日本に連れ帰りたい。

 あたしの帰りを待っている妹二人と弟がいるし、一刻も早く帰らなければならない。

 魔法少女に未練はあるけれど、アヤとモモと家族の方が大切だからな。

 しかしその日の夜は魔法が使える事に興奮して、あたしはベッドの中で眠れない夜を過ごすことになってしまった…。

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