第二話 ボッチの異世界転移
≪前田 満 視点≫
僕の名前は前田
クラスメイトとは一切関わらず、夏休み前の高校生活をいつも通り送っていた。
一時間目の授業が始まる五分前に気配を消して空気の様に教室に入り、窓際の自分の席に音もなく着席する。
鞄から教科書とノートを取り出し、授業が開始されるのをじっと待つ。
授業が始まれば、教師が黒板に書きだす文字をノートに写す作業に取り掛かる。
午前中の授業が終わると、鞄から弁当と水筒を取り出して、教室からスッと抜け出して行く。
行先は、人気のない屋上の入り口の前と決めている。
ここには予備の机や椅子が置かれていて昼食を食べるのには便利だし、屋上出る扉の鍵は掛かっていて誰も来る事が無い。
一人で弁当を食べるのに適している場所だ。
昼食を食べ終えるとここで時間を潰し、午後の授業が始まる五分前に教室に入り、授業が始まるのをじっと待つ。
放課後は皆の邪魔にならないように素早く教室を出て、買い物が無い時は寄り道もせず真っすぐ帰宅する。
家に帰っても両親は二人共仕事から帰っておらず、僕が毎日両親の分も食事を作る。
家事は小学生の頃からやっていたので、手慣れたものだ。
今夜の献立は、昨日作っていたコロッケを揚げて、みじん切りにしたキャベツと合わせ、きんぴらごぼうとみそ汁を作れば完成だ。
両親の帰りはいつも二十一時を過ぎるので、僕は作った夕食を一人で食べる。
風呂に入り、勉強と趣味の読書をしている頃に両親が帰って来る。
僕は玄関まで両親を出迎えに行き、作っておいた夕食を温めなおす。
両親が夕食を食べている間に、両親と今日あった出来事などを話し合う。
まぁ、僕は学校での出来事は殆ど無いので両親の仕事の話を聞くだけだけれど、僕にとっては楽しい時間となる。
夕食の後片づけをした後は、早めの就寝となる。
そんな何も無いボッチの日常だったが、担任の北条
突然床が光ったかと思うと、教室中が目を開けていられないほどの光に包まれてしまった。
クラスメイト達は騒ぎ立てるも、光で何も見えないのでどうにも出来ないみたいだ。
僕は目をつむり、教室から逃げ出した方が良いのか考えているうちに、眠るかのように意識を失ってしまった…。
くっ!!!
僕が意識を取り戻したのは、頭が割れるようなひどい頭痛を感じたからだ。
僕は両手で頭を押さえ、暫くの間頭痛が収まるのを待った…。
頭痛が収まって来て、ようやく他の感覚も取り戻せて来た。
僕は目を開き、自分と周囲の状況を確認する。
僕は今、硬くて冷たい床に寝転がっている状況で、周囲の景色も教室とは全く違う場所に来ている。
クラスメイト達も僕と同様に床に寝転がって、頭を抱えている…。
あの光が何だったかは分からないけれど、僕達が眠らされて、他の場所に移された事だけは確かなようだ。
学校の一クラス全員を移動させるのは尋常な事では無いし、身の安全を第一に考えて行動した方が良さそうだ。
手足は縛られていないし、服に乱れも無い。
起きて周囲の状況を調べる事から始めようと思う。
ゆっくり体を起こして立ち上がると、数名のクラスメイトも立ち上がって周囲を確認したり、友達の様子を心配している人もいた。
僕達が倒れていた場所は広い円形の広間で、西洋風の鉄製の鎧を身にまとって槍を構えてた人達が僕達を取り囲んでいる。
僕達は、この人達に教室から連れ去られたてきたのだろうか?
いやいやいや、学校内からクラスメイト全員を連れ去るとか無理がありすぎるし、鎧姿の人達も不自然すぎる…。
僕達は縛られたりしていないし、頭痛がする以外に目立った怪我をしているクラスメイトもいない。
僕の体にも異常は無いけれど、僕達に対して槍を向けている事から、敵意がある事だけは確かの様だ。
しかし、襲ってくる気配はなく、僕達が逃げ出さないように警戒しているだけなのかな?
円形の広間に窓はなく、両開きの扉が一か所あるのみで、そこにも鎧姿の人が四人いて出られそうにない。
気配を消して入り口まで近づけた所で、扉を開ければ見つかるだろうし、逃げ出すことは難しそうだ。
今はじっと様子を見守るしかないと思うが、隙があれば逃げ出そうと思う…。
暫くしてクラスメイト全員が意識を取り戻し、北条先生が表情を引きつらせながらも、鎧姿の人に声を掛けていた。
「あ、貴方達は何なのですか?わ、私達をこんな場所に連れて来て、ど、どうするつもりですか!?」
北条先生の声は震えているが、その声は広間全体に聞こえるほど大きかった。
槍を向けられていて、向こうの反感を買えば突き刺されてもおかしくない状況だと言うのに、立派だと思う。
北条先生の問いに対して鎧姿の人達は誰も応えてくれなかったが、一か所動きがあった。
鎧姿の人達が数人左右に分かれると、男性が前に出て来た。
その姿はどこかの国の王様のような格好で、頭には王冠を被っている。
右手には大きな宝石の付いた杖を持っていて、一目でこの場所で一番偉い人だと言うのは分かる。
その男性は僕達を一望した後、ゆっくりと口を開いた。
「余はアルロレーネ王国国王、ランレミール・ドルド・サルダン・アルロレーネである。
王国の危機に瀕し、そなた達、勇者を呼び寄せたのは余である。
勇者達に感謝すると同時に、勇者達の事情を考慮せず呼び寄せた事に謝罪する」
…。
勇者!俺達勇者だってよ!
一部のクラスメイトが騒ぎ始めていたが、僕はその言葉を理解するのに時間が掛かった…。
呼び寄せた…勇者…まるで物語の様な話で信じられない…。
僕は教室で居眠りしていて、夢でも見ているのだろうか?
最近、そう言う本を読んだし、これは夢なのだな。
そう思って頬をつねってみたけれど、夢ではなかったみたいだ…。
アルロレーネ王国なんて聞いた事も無いし、本当に異世界に呼び寄せられたのだろうか?
王様、鎧姿の人達、どちらにしても現代にいない人達だと思う。
コスプレでもないだろうし、僕達を
何にしても、もう少し話を聞いてみない事には何も分からない。
クラスメイト達も混乱しているし、北条先生は呆けていないで、話をしっかり聞いて欲しいと思う。
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