5.七人の兵士
私とクラウドは村の入り口を抜けると、すぐに馬に乗った七人の兵士と向かい合った。
兵士たちを一瞥してから、彼らの後方に視線を向ける。
後を追う人影は見当たらない。
周囲にも人の気配は感じない。
少なくとも半径百メートル以内にいるのは目の前にいる七人のみ。
プレセアの予想よりも
対峙している七人の内、二人が前に出た。
後ろにいる五人は、前に出た二人に従うような形で横一列に並んでいる。
身に着けている鎧と剣の形も違う事から、見立て通りの関係なんだろう。
後ろの五人が頭部を含めた全身を覆うシンプルなデザインをした鎧を身に着けているのに対して、前に出ている二人は兜を被っておらず、剣の
後ろの五人を兵士とするなら、前にいる二人は兵士たちを従える騎士といったところ。
一人はウェーブのかかった長い金色の髪をした若い女性。(二十代前半くらい)
もう一人は、長身で体格のいい髭を生やした白髪交じりの初老の男性。
金髪の女性が腰に帯びた剣をおもむろに鞘から抜くと、
「青い髪をした女、お前は我々と一緒に来い」
切っ先を私に向けてそう言った。
クラウドが反応して前に出ようとするのを、手を軽く横に出して止める。
「理由を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「理由? 罪人が従う理由を問うだと? 舐めた女だ」
(私が、罪人……)
プレセアの予想は当たっていた。
彼女たちの目的は私たち……いえ、私だけを指定した。
標的としているのは私だけ?
なぜ罪人なのかを聞いても、たぶんあの感じだと教えてくれそうにない。
素直に従って無事でいられる保証がない以上、今は逃げるのが最善。
けど、その前に確かめないといけない事がある。
それはユミル村の子供たち。
この人たちは子供たちを保護してくれるのだろうか。
たとえ保護してくれなかったとしても、害を与えないとう確信が欲しい。
そう思って子供たちの事について聞こうとした時だった。
「まってください!」
村の方からマリアちゃんの声が聞こえた。
振り返ると、村の入り口にマリアちゃんとロキ君を中心に子供たちが集まっていた。
マリアちゃんは私とクラウドのところまで歩いてくると、
「騎士様、アリシア様は罪人なんかじゃありません! アリシア様は村を襲った盗賊から私たちを助けて下さいました!」
私の横に並び、女性の騎士に向かって強く訴えた。
「マリアちゃん……」
守ってあげなきゃいけない子供が自分を守ろうとしている。
情けないという感情を覚えながらも、それ以上に温かい気持ちに心が包まれた。
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