第7話 異世界生活と政治の作り方2

樹「魔王の復活で世界中が大変な事になる、その事が分かっていながらも、何故世界中の国が助け合わないのか?答えは単純で、その魔王の脅威が分からないからだ」


学「何を言っているんだ。実際に小さい国なんかは滅んでいるんだよな?それなのに魔王の脅威が分からないって、そんな事有るのか?」


樹「有るだろう。じゃあ聞くが今から300年前の日本で何があった?」


学「今から300年前って江戸時代か?何が有った?」


樹「なっ、紙も有ってインターネットで調べれば直ぐに分かるこの時代でも、300年前の事ほとんど知らないだろ?」


学「いやでも、歴史はある程度残っているんだから、魔王の復活についてはだいぶ分かっているんじゃあないのか?」


樹「そんな事ないって。300年前の時代に大飢饉があって、それが気候変動によるもので、その気候変動は現代でも起こり得るほど危険な現象だった。って聞いてどう?」


学「えっ、えっと。それは時代が違うし、文明の発展も違うから現代では何とかなるんじゃあないのかな?」


樹「そういう事だよ」


学「新しい技術開発や文明の発展で、魔王が次第に弱くなっている。って事?」


樹「違う。300年前の事になると完全に他人事になるんだよ。誰もが。ああ、歴史の授業で習ったな。くらいの感覚だろ?でも、気候変動は起こるし、それに対抗できるほどの力は無い」


学「厄災や天災レベルの災害でも、時間とともに人間は忘れていき、そしてそのことを過小評価する。そのために300年毎に世界は絶滅の危機を味わう。そういう事かな?」


樹「そうだね、それに近い感じかな。それともう一つ、世界が助け合わない理由が有る」


学「それは?」


樹「人間は、人間同士で殺し合いをする生き物って事だな。魔王が倒され時刻の復興がある程度見えてきたら、必ず他の国へ攻め入るだろうからな」


学「何でそんな事言い切れるんだ?復興を助ける国も有るだろう?」


樹「もちろん助ける国も有るよ。でも、世界で一つの国でも他国を侵攻したら、侵攻された国をそのままにはしておけないから、戦争になるだろ。連合国軍として周辺の国を巻き込んでな。実際に今、現代に至るまでに戦争の無かった時代が300年間あったか?って事だよ」


学「世界中の何処かで必ず戦争が起こる。起きている。確かにな。そうだな」


樹「だから、魔王という脅威が誕生しても各国は協力し合わない、これは確実に言えることだな。もちろん1,2カ国間の協力なんかは有るだろうけどね」


学「つまりは、異世界でも現代社会でも人間の愚かさは変わらない。って事か」


樹「それが愚かかどうかは分からないけどな。まあ、そういう事だ」


学「そうか。勇者って大変なんだな」


樹「そうだな。それと、ついでだから言っておくと、必ず宗教国家も存在していると思うぞ。これもよく異世界アニメなんかで出てくるけどな」


学「そうそう、なんで宗教国家が出てくるんだ?」


樹「日本に住んでいると分からないかもだし、俺自身も宗教に詳しいわけでは無いから、キチンとした説明はしないけど、宗教の一つの側面として死生観があると言われているんだよ」


学「死生観って死んだらどうなるか、っていうやつか?」


樹「ざっくり言うとそんな感じ。同族が死んで弔うのは人間だけ、って言われているからな。当然に宗教が有って、その宗教を元にした国家があるのは当然のことだからな」


学「そんなもんかな。他にはどんな国家があると思う?」


樹「まず、現代のような民主国家は無いと思うよ。ほとんどが王政国家だと思う。日本の戦国時代みたいな感じかな」


学「王政国家ね。何でそうなるんだろうね。優秀な人が上に立ったほうが良いのに」


樹「それは単純だろ。例えば織田信長の息子と名前の残っていない農民の子供、どちらを跡取りにするのか?考えるまでもないだろ?」


学「信長の子供。か」


樹「なっ、そこに能力は関係ないだろ。必要なのは血筋なんだよ。特に国王ともなればな。周りは愚鈍なほど有難いしな」


学「いつの時代もそんなもんなんだな。陰謀渦巻く世界はどこも一緒なんだな。けれども、そんなんじゃあ経済とかはどうなっているのかな?」


樹「経済かあ。どうなんだろうな。でも、古い国は汚職まみれにはなっているだろうけど、新興国はそこいらへんはしっかりしているだろうしな。難しいけど、これほど冒険者がいる世界で、人と物が動く世界ではある程度国は関係なく経済は動くだろうな」


学「まあ、そうなるよな。そういえば農業とかもあるのかな?」


樹「もちろん有るだろう。そうだ、その農作物だけどな。これも魔素の影響を受けてこの現代よりも早く作物は育つだろうな」


学「そして、その作物にも魔素が含まれている。って事か。それが人間に吸収されて人間に影響する。なるほど、食物連鎖か」


樹「そうなるな。良く出来ているよな。魔素の影響力は凄いよな。現代でもそんなような食物連鎖は有るけどな」


学「まあな、でもこれでほとんどの事が説明できたのか?」


樹「うん、全てでは無いけどな。何で魔法が使えるのか?に対する答えとそれに伴う世界の成り立ちは、簡単だけど説明が付いたんだと思うよ」


学「そうだよな、最初はなんで魔法がつけるのか?の疑問からだもんな。大分異世界が作られてきたな」


樹「そうだ、一応言っておくけど、今話したことが全てでは無いからな」


学「そうだろ」


樹「いや、多分違う解釈している。俺達が話したことってほとんどが自分達で考えた事だろ?そうすると、今話したことと違う解釈のアニメや、説明の付かない魔法を使っているアニメなんかが、間違っていると思ってしまって楽しめなくなる時が有るからな」


学「そんなもんかな?」


樹「違うなら違うで良いんだよ。アニメなんかをそのまま楽しめなくなる事が、一番の間違ったアニメの見方だからな」


学「うん、そうだよな。間違えないようにしないとな。自分で考えたものが間違いない、って考えるのは分かるけど、それじゃあ世界がつまらなくなるからな」


樹「分かっているなら良いや。余計な事を言ったな」


学「そんな事は無いよ。少し話を変えるか。じゃあさあ、今考えた異世界に転生や転移をしたとしたら、樹ならどうする?」


樹「異世界転生かあ。この世界にねえ。そうだなあ、俺ならまあ、遊び倒すかな?」


学「遊び倒すってどうやって?」


樹「おそらく、というよりかは絶対だと思っているけど、異世界でも物理法則は有効、というか当たり前に働くと思うんだよ。だからまずはそれを確認する」


学「物理法則って例えばどんなの?」


樹「そんな難しいことじゃあないよ。火が酸素がないと燃焼できないのか、とかだよ。それと魔法の範囲、どのくらいの距離まで魔法が飛ぶのか、あとは魔法の動きだな」


学「魔法の動きって何?」


樹「そうだな、例えばだけど、風魔法にウインドカッターが有ったとしたら、魔素はどの様に動いているのかを、実際に目で見ることは出来ないけど、魔法の動きとかで憶測は付けられるだろ?」


学「だろ?って言われても、想像がつかない。そんなもんなのか?でも、物理法則や魔法の動きを確認してどうするの?


樹「物理法則や魔法の動きが分かれば、新しい魔法が作れるかもしれないだろ」


学「新しい魔法?何でそれだけで新しい魔法が作れんだよ」


樹「いや、何で作れないと思うんだよ、逆に。あっ、新しい魔法って言い方が悪かったのかな。単純に既存の魔法とは違った魔法って意味なんだけど」


学「既存の魔法とは違う、って言われてもあまりピンと来ないんですけど」


樹「例えば火を起こす時に点火魔法と風を送る魔法を使うとするよな」


学「うん、火を着けて扇いで火を大きくさせる。それは分かるよ」


樹「じゃあ、それを大きくしたら?って考えたこと無い?」


学「大きくしたら?って、キャンプファイヤーみたいに大きくするって事?」


樹「違うよ、もっと大きな魔法でやってみるって事だよ。そうだな、ファイヤーボールがバスケットボールくらいの大きさで魔物に飛んでいくとすると、そこに風魔法を追いかけさせて、風魔法をファイヤーボールにぶつけるとどうなると思う?」


学「炎は大きくなる。なるほどそういう事か。確かにそれなら既存の魔法に囚われずに、色々な発想で色々な魔法が作れるかもなしれないな」


樹「そうだろ。物理法則がどこまで通用するかは分からないけど、今ある知識だけでも色んな事が想像できるだろ?」


学「そうだな、面白そうだ。考えただけでもワクワクするしどんな魔法が作れるか試してみたいな。あっ、でもそれは、魔王のいる世界でも同じことをするのか?」


樹「当然だろ。魔王を倒さないと世界が崩壊するかもしれないんだから。自分が勇者としてなのか、ただの市民なのかによって多少は変わってくるかもだけど。でも、魔法を新しく作ってはみたいよな」


学「作ってはみたいけど、じゃあ市民だった場合は魔王と勇者関係なく魔法を作っていくのか?」


樹「そうじゃ無いよ。やっぱり自分の作った魔法が誰に何処まで通用するのかは知りたいだろ?だからなんとしてでも勇者のパーティーに入るよ。そうだな、職業としては魔剣士かな?」


学「魔剣士?何で?剣も使うの?」


樹「当然。剣は使うよ。でも、剣より刀のほうが良いな。刀に魔法は付与して戦ってみたいだろ?」


学「剣に魔法かあ。憧れはあるよ。でも、なんで剣じゃなくて刀なんだ?」


樹「剣と刀の大きな違いは斬るところだろ。剣は叩き斬る、刀は引いて斬る。あとは、刀の場合は反り刃だからな、突きにも特化しているから色々と応用が利く所かな」


学「そうなんだ。考えたこと無かったな、そんな剣と刀の違いなんて」


樹「あっと、もうこんな時間だ。今日は色々と考える事が出来て楽しかったよ。良い気分転換になったよ、ありがとうな」


学「僕もいい刺激になったよ。ありがとう。気をつけて行ってきてくれ」


樹「ああ、またな」

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