第13話
「すみません、じゃあ……あの……中で待たせていただきますんで」
急いで車から降り立ち、後部座席からバッグを取り出す。
ドアを閉め、冷たい夜の空気に身を縮めて玄関ポーチの浅いステップを昇れば、それを待っていたかのように軽快なエンジン音を唸らせて、彼の運転する車はアプローチを走り去っていった。
玄関前で車のランプが見えなくなるのを見届けてから、私は渡された鍵で古く重厚な扉を開錠した。
扉を押し開いたその先の広い玄関ホールには、白熱球の柔らかな明かりが灯っていて、暖かい空気と、どこか懐かしい家のにおいが私の心を和ませた。
ホッと息をついてホールを見渡すと、その天井の高さと漂う高級感に一瞬、意識が眩んでしまう。
壁紙等は最近張り替えた様子だけれど、大理石の床や調度品はおそらく昔のままなのだろう。
私にはやっぱり、思い出せないけれど……。
バッグを玄関マット上に置き、ブーツを脱いで広い敲の隅にそろえ、スリッパラックから一足のスリッパを借りてホールに仁王立ちになってみる。
玄関ホールに面しているドアは4つ。
私は、外に明かりが漏れていた窓の位置を思い出し、玄関に入ってすぐ右手に位置するドアを勢いよく引き開けた。
古めかしいドアは軋みもなくすんなり開き、同時に、一層暖かな空気が私を迎え入れた。
「おおっ」
思わず呻いて仰け反ってしまったのは……その先に広がっていた光景がとても素敵だったから。
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