第20話
「用があるならここで聞きます」
「ここじゃ賑やか過ぎて話せない」
顔は微笑んでいるけれど、苛立ちを孕んだ口調。
ここで怯んでは、と、思い、私は努めて表情を凍らせた。
「ここで聞けない話なら聞きません。無理矢理連れて行こうとしたら、声をあげますし暴れます」
「うわ~……それは勘弁して欲しいかな~……そこら中に俺の知り合いがいるし……」
やれやれと言わんばかりにせせら笑い、十和田さんは周囲を見回した。
雑談に興じる人、忙しそうに歩き回る実行委員の腕章をつけた人、音響の機材を設置している人、友達同士ふざけあって笑っている人……騒々しいし、誰も私達の事なんか気に留めていないように見えるけれど、もしも私が悲鳴を上げれば絶対に人々の目線がこちらに向けられる状況だ。
『悪事に手を染めない範囲で上手くやるつもり』というのは、やっぱり彼の本音なのだろう。
あくまでも、善良な人として、周囲から思われていたいと……。
それなら、峰岸さんも……無関係?
改めて確かめるのも怖いような気がするけれど、今、この機を逃しては、という気持ちの方が上回り、私は逸らしていた視線を彼に戻した。
「峰岸さんは……峰岸さんと麻衣ちゃんの事は……関係ないですよね?」
十和田さんと対峙している緊張感は解けないながらにも、公の場にいるという安心感のおかげで、私の心は落ち着きを取り戻していた。
「ん?……何が?」
皮肉な笑みを浮かべたまま首を傾げる彼は、意味が分からなくて聞き返しているというよりは、しらばっくれているように見える。
「私を騙すために……峰岸さんに協力させて、麻衣ちゃんと付き合うように仕組んだとか……あの2人を利用してるとか……」
「ははっ、なるほど。そういう心配してたんだ。友達思いなんだね~」
わざとらしいほどの優しい口調で、十和田さんは感心して見せた。
「どうなんですか?」
キッ、と睨みあげて問いかける。
彼は、ふふん、と鼻でせせら笑った。
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