第18話
学生ホールで峰岸さんと別れ、カフェに入ったり展示を見て回ったりして、2時間ほど過ごした後……私達は、軽音楽サークルと有志のバンドのライブが行われるという中庭のステージに向かった。
開演までに30分もあるというのに座席は満席。
私達は、会場の隅の植え込みの傍に立ち、ステージ上で機材の設置をしている学生の姿を眺めていた。
突然、後方にいる陽菜が「あれっ?」と声をあげた。
「えっ?」
隣に立つ明穂とほぼ同時に、背後を振り返る。
次の瞬間、視界に飛び込んできたのは、陽菜と麻衣ちゃんの後姿と……
「久しぶりだね」
そう、親しげに言いながら微笑んでいる十和田さんの姿だった。
「ご無沙汰してます~」
「こんにちは~」
「こんにちはっ」
私以外の3人は朗らかに挨拶をしているけれど……。
私は声も出せなくて……ただ、顔を強張らせて会釈をしただけ。
何もしていないのに、掌にはじっとりと汗が滲んでいて、動悸も激しくなってきて……凄く不快。
思っていた以上に、私、平気じゃない。
「莉奈ちゃんも、久しぶり」
「お久しぶりです」
なるべく平静を装って挨拶を返したものの、やっぱり視線をあわせる事はできなかった。
「みんなが来てるって峰岸から聞いて……もしかしたら会えるかなって思ってたんだ。……莉奈ちゃん、ちょっといいかな?」
「はっ?」
跳ねる心音と共に、視線を上げれば……十和田さんの善人ぶった微笑みが私を見下ろしていた。
「事務のバイトの件、今更で悪いんだけど、先輩から催促されていて……良かったらこれから先輩に会ってくれない?」
いかにも困っていると言わんばかりに苦笑して見せるけれど……絶対嘘だ。
「いえ……その話は、もう結構ですので」
笑顔を引き攣らせながら首を振る。
そんな私を見て、自分達に遠慮して断っているのだとでも思ったのか……いきなり明穂が私の肩を押した。
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