第60話

「く、詳しいね……さすがストーブの精」





『?』





私の言葉に、彼は顔をしかめたまま首を傾げる。




「私、あなたのこと、電気ストーブの精だと思ってて……」





『なんだよ、それ……ランプじゃあるまいし……』





そう言って口元を綻ばす彼の……自然な……息づかいと口調。





本当に……生身の人間と話しているみたいだ。






「だって、いきなり取扱説明書みたいな事、言いだすから……」




私は、ベッドから降り立って、部屋の中央で赤々と灯っているストーブの前にしゃがみ込んだ。




すると、彼も私の隣に移動してきて、音もなくその場に膝をついた。




『そんなの常識の範囲だろう?………ああ、でも、そうだな……何故、それを常識だと……思えるんだろう』




戸惑うような彼の声が、どこか遠い世界を辿ろうとしているように感じられて、何故か急に寂しくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る