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第2話
書きかけの小説を保存して、パタンと開いていたパソコンを閉じる。図書準備室の札が掛けられたこの部屋は、文芸科の教室の1つだ。授業終わりのこの時間は私以外見かけないが。グッと伸びをすると固まった身体から、バキバキと悲鳴が上がった。窓の外に目をやれば、日が落ちかけて空の端が藍色に滲んでいるのが見えた。
図書準備室はいつも、現実から遠い場所のように感じる。生徒の声も聞こえなければ、人の足音も聞こえない。小さな部屋を埋め尽くすような本棚、あとは申し訳程度に机と椅子が置かれているだけだ。
そういえば今日は書店で予約していた本を受け取りに行かないといけない。広げていた資料をしまってから、私の周りをぷかぷかと浮かびながら眠っていた、手のひらサイズの半透明の小犬を起こす。
「……そろそろ帰ろうか」
クシクシと眠たそうに目をこする小犬がカバンの中に飛び込んだのを確認して、荷物を持った。
図書準備室を施錠して、鍵を返却しに職員室へ足を向ける。その途中で明るい髪、短いスカートにばっちりメイクの女子生徒の集団が階段で集まっていた。
「ねぇ、進路ってどうする?」
「アタシ事務職とちょっと悩んでるんだよねー」
「えぇ意外!私は彫刻系かなぁ、親にも言われてるし」
「あーそっか、でもどうせならやりたいことやりたくね?」
「いやそれなぁ」
「てかハルまだなのー?待ちくたびれたって!」
派手な同級生を横目に、階段を上って目的地へ向かう。夕日に照らされた薄暗い廊下を歩きながら、遠くから聞こえる部活動に励む生徒たちの声にうんざりする。
頑張っちゃって、まぁ。そんな冷笑気味な自分にも、ずっとうんざりしている。
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