第12話

「ほらほら、こっちだよ哀斗くん」

「花火大会の会場じゃないですか、ここ」



 誘導され着いたのは会場近くの神社。周りには大通りと比べれば少ないとはいえ、それでもそこそこの人数が始まるのを今か今かと待っている。人ごみはあまり好きな方じゃない。



「何しに来たんですか」

「もうちょっとで始まるから」

「こういうの興味ないって言ってませんでした?」

「うるさいな、ちょっと静かに待っててよ」



 境内に入る前に屋台でたこ焼きやら焼きそばやらを買ったといえ、待ち時間の暇つぶしには力不足だった。成長期の食欲をなめるな、10分で食べ終わったぞ。かれこれ30分くらい待っていて、舞さんが花火見たいなら1人で見れば?とも思ったが、わざわざ連れて来たのにそんなこと言ったらとんでもないことになりそうだ。

 と考えていると、ドォン!という大きな音と共に花火が打ちあがった。一発一発がとても大きくて、あれだけ悶々としていた僕でもさすがに目を奪われる。それも10分もすれば飽きが来るというものだが。まばらになってきた花火の音をBGMに手元のスマホを確認する。時間は9時。



「もう満足しました?」

「ね、待って」

「……は」



 ――ババババ!ドォォン!!


 袖をつままれて振り返った瞬間、轟音と共に視界がチカチカとはじける。周りの人と同じように空を見上げると、今までの大きなものとは違う、色とりどりの花火が連続で上がっていた。スターマイン、とかいう名前がチラシに踊っていたのを思い出す。今年一番の主役だって書いてあった、ソレだろう。

 ぎゅうと袖を握り直される感覚に、少し下にある顔を見る。普段の軽い雰囲気は鳴りを潜めていて、ただ真剣に空に咲く花を見上げていた。



「キレイだね、とっても」

「そうですね」

「……本当に、キレイ」



 しみじみとそういう彼女はどこかぼうっとしているように見える。それは寂しさだとかを含んでいるようにも見えたけど、何よりも光を反射して彩られた瞳は、楽しい、と伝えているようだった。

 チカチカと輝き続ける空に少しだけ目が痛くなって、ジワ、と視界が揺らいだ。



「哀斗くんもそう思うでしょ?」

「まぁ、はい。期待以上でしたけど……どうしたんですか急に」

「いや?せっかくの夏休みだから恋愛イベントをつくってあげたんだ」

「余計なお世話ですよ」

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