第4話 囮
結局、俺たちは第三階層までやってきてしまった。
男たちは出現するゴブリンと戦っているが、第二階層の時とは違って余裕はない。
彼らはカメラがまわっていることなんて忘れているようだし、小粋なトークで視聴者を楽しませることも出来ていなかった。なにせ、次々とゴブリンが現れるからだ。
男たちは数と実力で、ゴブリンに押されてしまっている。明らかに負けが決定している戦いであった。
配信者らしいトークなど出来ないこともあり、視聴者も刻一刻と減っていく。そして、ほとんどのコメントは『にげろ』という言葉を発していた。
さすがの視聴者も全滅していくパーティの様子を見るのは嫌なようだ。
「どうしてなんだよ!いつも配信で見ている第三階層とは違いすぎるだろ!!」
それは事前調査をしたり、自分たちの力に合わせた階層で撮影していたからだ。
男たちは事前調査もなしでダンジョンで撮影を決行していたらしく、出現する敵の数や種類すら把握していない。あまりにも準備がたりないのだ。
苦戦するのは当然だったし、全滅するのは時間の問題だった。俺はもう無理だと判断して、力の限り叫んだ。
「駄目だ!もう逃げるぞ」
だが、男たちには聞こえてはいないようだった。目の前のゴブリンを倒す事だけで、一生懸命になってしまっている。
「ちょっとコレって、ヤバいんじゃないの……」
女の子たちは震えだして、恐怖を抑えるために互いに抱き合っていた。今回のことでダンジョンというものを軽く見てはいけないということがよく分かったであろう。
「くそ!もう駄目だ!!」
男たちが、一目散に逃げ出す。
ここまできて、ようやく自分たちの愚かさを認めたのである。自分たちの実力では、第三階層ですら力不足だと納得できたのだ。まったくおめでたくはないけれども。
男たちは、自分たちだけは助かろうとなりふり構わず逃げる。震えている女の子が置いていかれてしまったので、俺は女の子たちの背中を押した。無理にでも走らせて、出来るだけゴブリンとの距離を取らせる。
「後ろを見るな!走れ!!」
俺の怒声が響き渡る。
女の子たちは必死に逃げるが、怒り狂っているゴブリンは素早い。このままでは追いつかれると思った矢先に、俺の目の前に剣の切っ先が出現する。
剣の持ち主は、パーティのまとめ役の男であった。
そいつは、今までみたこともないほど醜悪な顔をしていた。
「お前が囮になれ!!」
男は、俺の腹を蹴り飛ばした。
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