Episode2

「・・・あの、何かついていますか?」



あまりに俺がじっと見過ぎていたのか、女は顔を上げ俺を少し困ったように見つめる。



可愛い。



小さな顔にちりばめられたパーツの全てが俺の目を奪う。



長いまつげに縁どられた瞳は大きすぎず、綺麗な形をしている。小さな顔の中心には、形の整った高い鼻。



下唇だけ少しぷっくりしていて、甘い色気を纏う。



何より薄く色の白い肌。それに映えるさらりとした黒髪。どこか知的に見えるのは、大人しそうな雰囲気のせいか、優しそうに見えて、どこか冷たさも纏う独特な雰囲気のせいか。



何もかもが俺の真ん中にハマっていた。



彼女は唯一無二だ。



「いや。何の本を読んでるんだ?」


「これ・・・これは、"梁山伯と祝英台"。中国の有名な昔話です。」


「へぇ。どんな話?」


「身分の差から結ばれなかった男女の話です。最後は蝶になり、永遠の愛を誓います」


「悲しい話だな。」


「そうですね。」


「今の日本では、考えられない話だ。」


「はい。」


「名前は?」


「え・・?」


「君の名前。俺は新【アラタ】だ。」


「新・・・新しいと書いて、新?」


「ああ。」


「とても素敵な名前ですね。」



彼女のゆっくりとした話のペース。綺麗に見せる表情をつくったりしない、そんなところもいい。



「ありがとう。それで、君の名前は?」


「涼【スズミ】です。」


「涼。君によく似合う名前だ。」


「・・・ありがとうございます。」


「ここにはよく来るのか?」


「たまに。」


「涼、また会いたい。」


「え・・・」


「駄目か?」


「いえ・・」


「それは、会ってくれるということ?」


「さあ。」


「さあ?」


「私はたまにしかここへ来ないので、また会えるかは分かりません。」


「じゃあ、連絡先を交換すればいい。」


「携帯は、持っていますけどほとんど使いません。連絡をしてくださっても、多分数日後にしか気づかないと思います。」


「じゃあ、毎日俺から連絡が来てないか確認すればいい。そうすればまた会える。」


「」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チーク @ejoubn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る