第4話
あわててテレビ画面に目を向けると、そこには赤いきらきらした生地にシルバーのラインの入ったきらびやかな衣装をまとった男の子たちが、マイクを片手に涼やかな笑顔で歌っている。
大人気高校生アイドルグループ『エクレール』。
今画面で歌っているのはリーダーの
その立ち姿を見て、じんと心が動く。
トップにちょっとだけボリュームを出した横わけのウルフスタイルの髪。
その大きな目を見ると。
なにより、メンバー1とも言われてるその歌声をきくと。
わたしは無意識に、自分の部屋の机にしまっているブロマイドのことを思い出していた。
ステージの上、タキシード姿でマイクを握って微笑む美谷島くん。
歌番組だけじゃなく、わたしは彼の出演するバラエティーもチェックしているんだ。
しんみりしたバラードを歌う美谷島くんはどこか大人びた抑え気味の笑顔。そんな表情もすてきだけど、バラエティーでメンバーとふざけているときや絶妙なトークで笑いを誘っているとき、目を細めて思いっきり笑っている顔が一番好き。
ちょっととぼけてるところもあるけど、そんなところも含めてすごくかっこいい。
唯一、大好きと言える人がそこにいた。
クラスの子たちが『エクレール』のことを話しているのはたまにきくけど、輪に入っていくことはなかった。
わたしなんて地味で、こんなに華やかなアイドルが好きなんて、似合わないって思われそうで。
ずっとさがしてた居場所 ようやくたどりつけた
世界で たった一人 心の中が手に取れる つかめる人
この世に訪れた唯一の奇跡
世界で一番 きみが好き
画面越しなのに、美谷島くんと目が合うとなんだか恥ずかしいような気持ちになって。
きゅん、と心が狭くなる。
この頃で唯一、幸せになれる瞬間。
「美谷島くん。わたしも大好き」
なんて小さく呟いちゃった。
えへ。
彼はわたしに対して言ったわけじゃないのにね。
そのときだったの。
かちり、と、時計の針が10時22分を指した。
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