第64話

「るい、これ本当に環が書いたの?未だに有り得ないと思うし信じられないわ」





デトワールで。潜めた嗚咽の合間を縫って、グレーのソファで膝を抱え、文字を追っては涙を流す。


一応こっそり。


そう言い聞かせてはみても、悔しいほど止まらない。それは傍にいるルイの気にしなさにも問題があるといっておく。



対角の端に座る当てられたルイは、環が置いていった漫画から顔を上げた。




そうしてゆるりと、目を細めて微笑む。




「波音、こっそり環の書く話のファンだっけね」

「ぎゃああ気持ちが悪いから言わないで」



「ん、誰が気持ち悪いって?」



「あ、環」


「…」

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