第61話

そのとき、廊下の曲がり角先から、「hano、次の仕事控えてるから早く!!」と声が飛んできた。



ハノは少し振り返った後で困った表情を浮かべる。





あー、帽子か。



多分間違えたってことはロゴの違いくらいの帽子、どっかに忘れてきたってことだ?




やっぱり取りに行こうと迷いを見せたから、俺は手に戻ってきたキャップを再びハノの頭に被せた。





「顔バレしちゃうもんなー。いいよ、それあげるから」




「!」



驚きを見せた彼女は一瞬動きを止めてその後すぐに深々と頭を下げ、キャップを深く被り直しながらその場を後にした。


帰国子女って、日本語喋りづらい子もいるのかな?





引き返したスタジオで、同じ黒いキャップはすぐに見付かったから、それはスタッフに渡して返してもらった――――。

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