第59話
「あー…すみません、」
廊下を出てすぐ奥に見えた彼女のところへ走り、声をかける。
不意に振り返った彼女の頭には、うん。
これ俺の帽子だー…。啓ありがと。
「それ」
「はい?」
「……俺の帽子です、けど」
「は?」
何で俺がこんな怪しまれる目で見られなきゃいけないのかわからない。
「だからー」
「だれですか?」
「へ」
誰ですか!!?
…いや、まぁ、うん。こう、なんつうか、驕ったらだめだとは思うけど。
俺、だれですかなんてこの仕事始めてひっさびさに言われた。
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