第35話

「今日、仕事は」


「終えてきた」



風華はお勤めご苦労さまです、モデルさま、とおどけて笑う。


それに俺も、苦しゅうないと返す。




「飯作りにきた」




どうしたのと聞かない風華に自らそう言うと、どこかで沈黙を作られる。


それに気が付かないわけない俺は、そこで、彼女の髪に手を弾ませた。





「手帳、何?」



ふと顔を上げる風華は一瞬止まって、それから気が付いて言葉を馳せる。


「立花さんの本が出る、から」




「……」




「え、どうしたの」


「環くんの、ね」



「あ、そだ。思ってたんだけど、立花さんって凄い綺麗なのにどうして顔出ししないの?」

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