第22話

樫月さんはそれを見て微笑みを留める。それから、指先で触れたままだった洋書の硬い表紙を捲った。



そこに挟まれていたのは、それぞれがハートの形に折られたメモのようなもの。



何も言わずそれを見つめる俺に、樫月さんは両手で掬ったそれらを差し出した。




「ヒントをあげよう。ここ一年から、何か月かに及ぶメモでよければ」




片手で受け取ったそれらは、紅や黒、白といった色に染められている。



「開けばいいですか」



「そうだね。私は、君に本当の意味で心を開いてほしい」




樫月さんは、その対象が誰かを口にしなかった。





一度手の平の中のメモをあの高級そうなテーブルにばら撒く。そこから、一枚ずつ手にして折りを解いた――――。

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