第45話 ノウムのメモリ

 銀の塔から帰ってきた全員が庭園のガゼボの席についていた。


「行方不明者を連れ戻してくれた。ありがとう」

 グベルナが、礼を述べた。真琴たちが、功績を称えられたと微笑んだ。

「だが、もう無茶はしないでくれ。とても危険なのだ」

 グベルナは、真琴たちを見渡す。

 真琴たちは、顔を上げられない。

 コロニクスは、知らんぷりに徹していた。


「では、話を訊こうか」真琴たちに合図をした。


 真琴たちは、行方不明の人たちを探しに行ったことを話した。

 それは、真琴の元の世界に戻すために、パイロに会わなければいけないことも。


 話すことがいっぱいあった。

 どうやって銀の塔に侵入したか、銀の塔で何を見たかを。


 絢音と響介は、なぜそれを急いだ理由は話さなかった。

 体が透けてしまい、時間がないことを。

 でも、ここではその事を話すことができない。

 真琴が気にしてしまう。

 真琴がこの席にいるからには、口に出せない。


 黙って下を向き聞いていたグベルナが顔を上げた。

「訊きたい事は、いっぱいあるが……

 銀の創造主とやらに訊かなくては、わからないな。

 情報がもっと欲しいな」

 グベルナは、しばらく沈黙し考えると、

「爺は、知っているだろうな」と呟いた。


「あっ、分かるかも」と突然、パイロが声を上げた。

 みんなパイロに注目する。


 パイロは、自分のポケットから、ノウムのメモリを取り出した。

 そして、自分の額に、えいっと張り付けた。

 メモリの足が、パイロの額に食い込む。

 パイロは、痛みで顔が歪む。

 痛いのは、誰の眼にも明らかだった。

 

 メモリから、じんわりとオレンジ色の光が発せられた。

 パイロは痛みを忘れたように笑顔で言った。

「これで、ノウムと話せる」

「そんなことができるの?パイロ」

「僕には、出来るんだなこれが……」パイロが胸をはる。


 絢音は、パイロを不思議に思っていた。

 どんな能力を持っているのか。

 真琴を元に世界へ戻すことも出来るのだろうとじっと見つめた。


「ノウム?誰だ?」

 グベルナとコロニクスが訊いた。

 パイロが、説明する。

 人間に憧れていたスーパーAIのノウムの話を。

 色々とコックたちの世話をしてくれたり、バルバルスから守ってくれたことも。

 最後は、バルバルスとハエ型ドローンの攻撃で破壊されたことも。

 パイロが、額につけたのは、壊されたノウムのメモリをだと話した。


「じやぁ、ノウムと話してみてよ」というとパイロは目を閉じた。

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