南太平洋の孤島
同じく2年前の小説。登場人物は流用
登場人物
新城・河野 ジャパン・テクノロジー社の創設者でありジャパン・テクノロジー連盟の理事
大山・光輝 ジャパン・アーミー・テクノロジー社、社長
矢間・賢人 公安諜報部
覇田・文治 内閣総理大臣。革命党員
レイモンド・カレンズ ボストンの弁護士
ヴィクター・ハント カレンズの親友
ミシェル・ラング ニューヨークタイムズの記者
ハワード・ウェルズリー 合衆国大統領
ジョー・エリック 革命党の諜報員?
ロス・ヴェネッサ FBI?
ヒーバー・シェパード 中国のスパイ?
シン・イルフン 中国国防大臣
キム・リャオ
プロローグ
ウクライナでの戦いは欧米の結束力を高めNATOの拡大を加速させただけに思えた。しかしアジアの一国は違っていた。日本ではアメリカの力に任せるのではなく自国の力で国を守るという考えが浸透し、革命党という新しい政党が政権を握った。彼らは防衛装備の国産化と食料自給率100%を謳ったものの最初の3年の成果は無に等しく、自民公明が政権を取り戻すのは近いと思われた。だが、ジャパン・テクノロジーという全く新しい企業が出現したことにより事態は一転した。彼らはあっという間に日本の防衛産業会社のほとんどを取り込み、合併を果たし、さらにはバイオテクノロジーを駆使した植物工場や、家畜・養殖を展開し政府が達成できなかった課題を推し進めた。いつからか、国はこの会社と連携しはじめ、防衛装備の生産を依頼し、彼らが望む核技術の研究や植物の大幅な遺伝子組み換えを許可し、南太平洋の人工島に実験施設や工場設備を建設した。そして2030年、配下に何十もの企業をもつジャパン・テクノロジー社の後継組織、ジャパン・テクノロジー連盟(JTR)が創設されたのであった。
第一話 2033年9月3日
海面は太陽の光を反射して白く光り、空には雲一つない風景は、銀色に光るSVU-5垂直離陸輸送機の姿を余計に目立たせていた。優雅な流線形の機体はシャトルを思い浮かべる形で、核熱ジェット機の独特のエンジン音はまさにそれに乗っているのではないかと思うほど大きかった。機首よりの一二番列の第三座席にカレンズは日本語入門と書かれた本を読みながら座っていた。日本の市場が拡大するにつれて日本語は世界市場のビジネスで必須になっていたが、カレンズはその日本語に苦戦していた。ただでさえ漢字やら平仮名やらカタカナやらと何種類もあるのに、それぞれを使い分けなければいけない挙句、小さいもじが右下に来る発音しにくいあれがあるのだ。3年前にドイツ語を覚えたときはどうしたものかと、本をしまいシートに寄りかかりながら思いふけった。彼の思考はエンジン音に負けないぐらい位の大きな音❘|イヤホンをしていたのだがそれでも聞こえた|❘の機内アナウンスによって絶たれた。
「ご搭乗の皆様、本機は間もなく『シヴェレン諸島』に到着いたします。シートベルトをおしめ下さい。2時間だけでしたが本機にご搭乗いただき誠にありがとうございます。島での体験がきっといいことになりますように。」アナウンスはその後、窓から見える島や施設の説明を付け加えた。
カレンズは海上に浮かぶ無数の工場群に驚きを禁じ得なかった。これらの工場は全て浮島であり曳船をつかえば移動できるのだ。1000平方メートルのものが合計120基。JTRのシヴェレン諸島は全て浮島なのだ。JTR創設当初、憲法改正は難航しており国内で兵器の大量製造を行うのは不可能だった。法のすれすれと言えばまさしくこれであろう。JTRは日本の領海のすれすれの公海に浮島工場を建設したのだ。生産された兵器は憲法改正後、国内輸出され、浮島は領海内に移された。JTRはその後破格の性能の兵器を続々と開発し日本の防衛力は3年で13倍になり、JTRは民間軍事会社ジャパンアーミー(JA)を創設。このシヴェレン諸島はJAの艦隊の母港であり建造地でもある。数百メートル先には第三艦隊の旗艦、空母赤城が見えていた。それを取り巻く護衛艦艇とはけた違いの大きさの威容はまさしく圧倒であった。全長340m、排水量12万トン、搭載機はKL13戦闘機を40機、KE6多目的ヘリを20機、その他20機の80機。同型艦加賀、天城、土佐。次級は隼鷹型で既に3隻が進水している。その次級の事実上の原子力空母である大鳳型は計画が大幅に変更され新時代の艦艇になる予定だが、詳細は公開されていない。またJAは海上保安庁の巡視船に近いものを建造している。JAの海上総戦力は駆逐艦90隻、イージス艦30隻、空母7隻、無人機母艦ならびにそれに準じるもの、それと思われるもの30~70隻、潜水艦50隻、巡視艇および巡視船800隻(AI自立航行型無人艇も含める)、その他300隻。航空戦力は戦闘機200機、爆撃機50機、輸送機300機、ヘリ70機、無人戦闘機1540機、無人偵察機1200機、無人攻撃機5000機、多目的無人機2000機。陸上戦力は戦車300両、装甲車ならびに歩兵戦闘車500両、トラックおよびジープ700両、その他有人車両400両、無人戦車800両、その他無人車両100両。これらの軍に加えて宇宙軍、サイバー軍、輸送軍、AI軍があるほか、JARの各会社の支援もある。軍隊の総兵力は60万人である。また、近頃は自衛隊をJAに統合しJAを正規軍にすることを国が検討しているらしい。カレンズは遥か地平線に消えかけている第三艦隊を見ながら思いふけっていた。この第三艦隊の行き先が尖閣諸島だとはカレンズが知る由もなかった。
第二話
遡ること19時間前、海上保安庁第五管区尖閣諸島警備隊に指令が入った。中国の海上警察船が領海侵犯したのだ。10隻余りの巡視船が撤退勧告をしている矢先に
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