第18話 崇斗~成人式の日③~

廊下から物音がした。

俺は驚き、咄嗟にその方向を見る。するとそこに陽斗がいた。


「…いつから…いた?」


陽斗は苦笑いをしながら、リビングに入ってくる。

俺は芽衣に服をかけて、自分は下着を身に着ける。


「最初から…部屋にいたけど…見たのは本番直前から?」


最初から部屋にいたのか…。俺は何とも複雑な気分だった。


「っていうか…マジ、ヤバくない?芽衣ちゃん妊娠したらどうすんの?」

「うるさい」


正直、迷ったけど…芽衣だから良いと思った。芽衣となら…子供がデキたって後悔しない。

だから最後まで突き進んだんだ。


「でも、まさか崇斗が浮気とはねぇ~。驚いたよ」


陽斗が楽しそうに言ってくる。何かイラつく。


「最初から素直に芽衣ちゃんと付き合ってれば良かったのに。今更、彼女と別れられるわけ?」

「お前に関係ない」

「芽衣ちゃん、傷つくんじゃない?」


そんな事、わかってる。傷つけてしまうだろうと…罪悪感がないワケじゃない。


俺はとりあえず、着替えをする。いつまでもこの姿ってわけにもいかないから。


「悪い男だな~新しい一面?」

「少し、黙ってろよ」

「はいはい」



俺が着替え終えて、リビングに戻って来たと同時に芽衣が意識を取り戻す。


その様子を見て、俺は察した。


戸惑う芽衣。

きっと…俺と初体験をしたとは夢にも思っていないんだろうな…。


どのみち、今どうこう出来る事でもない。直ぐに彼女と別れる事も出来ないだろうから。

だったら…俺は何でもないフリをするとしよう…そう思った。


ズルいかもだけど、芽衣が思い出せるまで。

変に関係を壊したくない気持ちが、保身に走らせている自分がいた。


この後に何があっても、この瞬間に確かに愛し合った事実を胸に頑張れるだろうから。

多くは望まない。


芽衣と変わらず…この先も…そんな未来を夢みていたい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る