第二次戦闘体勢(?)
刃物の形をした何かは灰色の男を襲う。間一髪のところで男は体を捻り、斬撃をかわす!黒い何かは体勢を立て直し、再び地面を滑るように近づき!……そして消えた。男が前にと手を
「あ、あの、うで……」
「大丈夫ノープロブレム、無問題、安心して、あ、でも気安くじゃなくて気高くね」
「あ、そうだ、せっかく帰ってきてくれたんだ、腕こっちに投げてくれる?まだちょっと痛いからさ、あんま動きたくなくて」
「え……」
「き、キミは何者だい?その服装を見る限り政府の人間だろう……何故こんなところに、」
私が返しに迷っているところに正直、存在を忘れていた中年の警察が男を訝しげに見つめ、そして問う。いわゆる職質である。
「警察の坊やも付き添いかい?俺は何者でもなくて寿命も、死だって無い、いわゆる不老不死、あのさっき現れた
男は
「……」
そして、眉をひそめて警察は困った顔をする。男もまた同じ様に困った顔をして、
「あ、そうだ!警察の人って困ったら助けくれるんでしょ?」楽しそうにそう言った。
「ああ、無論そうだが」
少し口籠もりながら中年の警官は直ぐに答えた。
「そうか〜、」
灰色の男はニヤリとこちらを微笑むと
「じゃ、あの腕取ってきてもらっても?」
ベンチの前に落ちる腕を指してそう言う。その発言同じタイミングで
[ジ、ジジ]と。
「あ、すみません、呼ばれてしまいまして、それでは!少女ぉ、君はそろそろ帰りなさいね」
トランシーバーに呼ばれた警察の男は薄情にも走り去っていった。そんな警察がいてもいいのかと思うほどに。シンプルにさようなら、と一言だけ残して。灰色の男は少し眉をひそめてから、笑顔で残った方の手を振る。ほっとしたような顔をして警察は……
「あ、行っちゃった、んっと〜、なると?」
「じゃあ、きみ?」
と、空を仰いでから私の方を見る。
「え、なんか、いやです、」
もう、この人はなんか大丈夫な人なんだな、と感じさせられた。腕が飛んだくらいじゃ、明らかにダメな状況って分かっててもこの人はこのくらいの事ではどうって事のない人間なんだなって。
「この〜正直者め〜!」
目を閉じてニヤニヤ笑う男。
「あはははー……」
私は死んだ目で男を見つめる。というか目を逸らす。
「まあいっか、それ」
そういうと、男は残った方の手の指を内側に、くいっと曲げる。すると、落ちた腕が浮き、彼の肩に戻る。まるで時間が巻き戻るように。時計の針が戻るように、腕飛んだのと同じ軌道を描き。月に雲がかかり、腕がかかり、光が朧げになる。瞬間的に真っ暗になったタイミングで男は私に言う。
「あ〜肩凝りに効くんだよね〜、にしても久し振りに取れたよ」と。
「凝りですか?」
「いや腕がね、」
腕だった、腕でした。
「…………」
二人の間に瞬間的な静寂が訪れる。別段、それが続くことは全くもって無かった。私でも灰の男でもない声がそれを突き破った。丁寧に、そしてむしろその静寂よりもひっそりと。朧月の周りの雲の様に。雲の隙間から見える光はより一層目に刺さる。そんな風に、
「そうですか、ならばこの僕が腕をいただきます」そう、こんな言葉が、何者かの言葉が入り込む。
「だ、だれっ!?」
声を発した瞬間に誰かが現れた。私と灰色の男の間に一人の男……の子が立っている。学ラン?いや軍服だ。黒の軍服に帽子。真っ黒な少年が、中学生くらいの少年が。立っていた。この場にいる一人の少女が楽しく自転車を漕いでいた時の頃、一人で空飛ぶ車を睨みつけていた一人の少年が。
彼は私達から離れてこんな事を呟く。
「陰陽呪装
ん?
「ドロー、」
ん、かーどげーむ?彼はデッキのような何かをポケットから取り出し、カードを引いた。彼の目の前に、宙に浮く山札から。それを手札に加える。
「げ、
そうすると男の子は口惜しそうな顔をして、その
[ドゴーン!!!]
「おっと危ない、」
灰の男は私の前に立つ。
─「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」
《爆烈呪符》効果 爆発 カードタイプ 霊符
このカードをドローした時、それが最初のターンであれば自身は使用しなければならない。
「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」─
そして、軍服の男の子は吹っ飛んだ。
「あーーー!!なんでーーー!!!」
ロケットの如く。非科学的な爆発を地面に伴って。一つの小さな紙が文字通り爆ぜて。静かな夜に星になる。
「おっ、ほ〜吹っ飛んだ〜」
男は遠くを飛ぶ飛行機を眺める様に手を上にして少年を眺めている。
「何が何だかな……」
私は文字通り、下を向いて、頭を抱え、苦笑いする。ははは……家に帰ったらAIにでも聞k…
「あはは!そこらの人工知能に聞いても答えは帰って来ないよ」
私の思考をそのまま読んだかの様に男は事実のようなものを述べる。現在の気候のように生暖かい微笑みを浮かべながら。
「しっかりと管理させてもらってるからね」
そう続けて。私は困惑しつつも男の顔を眺める。月明かりに照らされる顔を。
そうしていると何故か心が、なんだろうこの気持ち……この人普通にかっこいいし、2回も助けてもらっちゃったし、
「ん?どうしたんだい?」
私が俯きがちに少々ぼうっとしながら眺めていると、男はそれに気づき、目を合わせてくる。そして──
「おい、なんでいい感じになってんです?」
正論である。意味がわからない。
「ひぇっ出たっ!?」
軍服の少年が再び現れる。いい感じになっていると思ったのなら水を差さないのが基本でしょう?公園入り口付近で丁寧に立ち止まって二人を見る。
「あ、おかえり〜さっきの霧と爆発の少年、」
瞬時に顔の向きを変えて、男は問う。目を細め、公園の入り口を見て。少年は深々と被る帽子のつばを抑えて、口角を静かに上げる。
「……ああ、そうですよ、あの霧は僕のものです」
そして、そのドヤ顔の数秒、彼が困った顔をする。
「あ、、言っちゃいけないんだった、これ……今のは無かった事にしてください、またおじさんに怒られる(どうしよ、あの人怖い……)」
「いーや、しかと聞かせてもらったよ、お国がその気なら僕は堂々とやれるって事だね」
間髪入れず男は言葉を返す。へ?やるって何を!?
「えっ?あ、いや、そういう事じゃなくて、あの、その、えっと……まあ、いい、相手をしてあげましょう、この僕が!」
灰の男の金の目は月明かりを反射して、ギラギラと光って──少年は困惑の表情から徐々に……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます