第9話
いつもの様に始発で乗り込む事で、席に座ることが出来て本を読んでいた。
乗車率の多いあの駅の1つ手前で、杖をついた老婦人が乗ってきた。
扉のすぐ側には生憎開いた席がなく、彼女は杖をついて危なげな足取りで車内を進んでいこうとしていた。
「あの、ここどうぞ?」
本を鞄にしまい、立ち上がってその老婦人に声をかけた。
「いいのかしら」
そう言って彼女が振り返った時電車が動き始めた。
グラリと傾いた彼女の体を支えて、私が座っていた席に導く。
「ありがとうねぇ」
柔らかく笑う老婦人に笑顔を返し、自分はそのすぐ側の扉に向かって立ち、手すりに掴まった。
間もなくあの込み合う駅に電車が到着する。
嘘!なにこれ?
正直ここまでとは思っていなかった。 まるで人が波みたいに押し寄せてきた。
手すりに掴まり、両足で必死に踏ん張った。
駅員が中に詰めるように言っても、私を始め皆不安定な場所に立つのがイヤなのか出入り口の扉への密集度が高まる。
痛い!キツイ!なんなのコレ。
周りをあっという間に背の高い男子高生や、香水臭いOL、慣れたとばかりに鞄を抱き締め上手くバランスを取って立つサラリーマンに囲まれる。
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