第7話 最後の春

アキがどうしたいか、分かった気がした


何処でもないとこへ行きたいんだろう


積もり積もった、日々の退屈や普遍的なものが、1つ1つは小さくても、それが溢れかえって捻れて、爆発した


何に、何処に着けたら、何を見つけたら、そういうことじゃないって思う


アキはもう現実から完全に目を逸らして、離れる事だけを考えていた


この先にあるものを、全て拒絶して


「アキ、帰ろう?」


ふわふわして来た頭の中で、自分の声が少し遅れて聞こえる気がした


「もうええってホント」


虚ろな目をしていた


小さな瓶のアルコールを煽って、小さな声で零した


その顔は知らない人に見えた


そんな顔初めて見た


「アキが帰らないなら帰らないよ」


一瞬、アキの表情が強ばった


「ねえ、もう学校とかさ別にいいなら卒業だけはして、春になったらどっか遠くへ行こうよ。この街から離れて、なんか変わるかもしれないじゃん。」


「変わらへんわ、別にそんなの。それに、、」


「なに?」


「お前を巻き込みたくないし。それにこれは俺の問題やし。」


「ここまで来て突き放すん?煙に巻くよくよーなことゆうて、関係ないって?」


「ちゃうわ!」

声を荒らげたアキ


「なんも違うくない。」

一蹴した


アキは頭を抑えため息をついてる



アタシは、アキが何処へ行こうと一緒に行く


理由とか、そんなのいちいち考えたり言葉にする必要なんてない、昔からそうだった、今もそうだから


それだけの事



「アキ、あたしは昔も今も、アキが何処へ行くのかそんなの気にならないしなんだっていい。ずっと一緒やったんやから、今この瞬間も変わらない。それだけの事なの。アキがどれだけ変わっても」


「アカリ、、」

色んな感情が混ざった顔でアキはぽつりとあたしの名前を呼んで、下を向いて無言になった


「まだ、もう少しだけ時間はあるでしょ」

そう言ってあたしは踵を返した


アキは何も言わず追ってもこなかった




家に戻ったあたしは、もう1本くすねたアキの(煙草)に火をつけて、バイクのキーを手持ち無沙汰に手のひらで遊ばせた


「最期は、こんな感じかぁ」

窓の外に吐き出す紫煙と共に零した




その日からアキは家にはたまに帰るけど、学校へは1日たりと来なかった


アキの両親は諦めて、留年か、単位を使って1年通信制に行かせて高卒をと、考えていた



連絡がつかなくても、夜工場に行くとアキは大体居る


次の春、進路の話はせずに、前の事が無かったように、触れないように当たり障りの無い話をした


それ以上は、その時まで話さないでおこうと思った


数ヶ月が流れ、卒業式目前となった


「さてと、アキどないするん」


工場に来てみれば、やはりアキは居た


「アカリ、卒業出来るんやろ。頑張れやこれから」


拒絶に等しい言葉、でもアキ、言葉と表情が全く一致してないよ


「するかどうかは、アキ次第」


「は?」


「そのまんま、アキが居なくなるならそこに行く。そこが何処でも。」


その何処かは、戻って来れないとこ


知ってる


変な煙草だけじゃなくて、錠剤とかテーブルに増えてた


恐怖を殺して、アキはもう戻らないとこに行くつもりって


「あかん、アカリは」


無視をして、アキを抱きしめた


「いいから」

















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