第51話

「刹」


「丁」


「はい」



お呼びする前に呼ばれました。


返事をすると、少し迷ったような表情を浮かべる刹鬼様。


話しにくいこと……なのですね。



「閻魔から召喚状が届いた」


「えっ!?」


「……っっ」



叫ぶ多鬼に、息を飲む真鬼。



「閻魔大王様からの召喚状……」



それは冥界……地獄へ来いということ。



閻魔大王。


冥界の主で死者の生前の罪を裁く神。


もちろんわたくし達も死ねば裁かれます。


故に罪を犯した者にとっては恐ろしい恐ろしい御方。


刹鬼様、わたくし、真鬼は大丈夫ですが



「奥様、俺もっ。俺も入れていいんですよ!」


「あらそうなの?ごめん多鬼」



何かやらかしてそうだからと多鬼を省いたら、潔白だと言ってくる多鬼。


ブラコンは……知りません。



そして鬼ヶ島の鬼たちの多くは地獄で働いている。


罪人の見張り、罰を与える等々。


閻魔大王様は、鬼たちの雇用主様でもあるのだ。


そんな御方からの呼び出し。


只事ではない。



「行かれるのですね」


「ああ」



質問をすると即答されました。



「「……」」



視線を合わせること数秒。



「俺が留守の間、鬼ヶ島は鍾鬼に任せる」



そう言って鍾鬼様を見る刹鬼様。


鍾鬼様は悔しそうに下を向く。


一緒に行きたかったのでしょう。



「すぐに出られますか?」


「ああ」


「承知いたしました。すぐに準備を」


「丁」


「はい」


「お前も残るんだ」


「……え?」



……え?


今、なんと?



「行くのは俺と多鬼だけだ」


「え!?」



多鬼ビックリ。


しかし刹鬼様のひと睨みで



「へいへい。わかってますよ。驚いてみただけですよっ」



なんて言ってる。



わたくしは……行けないーー?



「ここに残って鍾鬼の補佐を……」


「承知致しかねます」



冗談ではない。

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