第5話 ルシアナとの魔法勝負

「ルナ!ルナはいる⁉」

「ル、ルシアナ様⁉」

 …!なんでルシアナが⁉

「…!いた!ルナ、どうゆうことよ!貴方が聖女だなんて…!」

「聖女?なにを言ってるのよ」

「はぁ?とぼける気?あんたなんかより絶対私のほうが聖女にふさわしいに決まってるでしょう⁉」

「はぁ?さっきからなにわけわからないことを…」

 聖女…。ん?せ、聖女⁉それって…!

「ル、ルシアナ、せ、聖女って…本気で言ってるの…?」

「本気に決まってるでしょう⁉」

 聖女ってあれじゃない⁉この乙女ゲームのヒロインが中盤で気づく…

「ちょっと!ルナ!どうしたのよ、急にぼーっとして」

「へ?あ、なんでもないわ。それで?私が聖女だとして、ルシアナはどうしたいの?」

「私は、ルナより聖女にふさわしい。それを証明するために、決闘してちょうだい」

 急に雰囲気が変わった?

「別にいいけど…」

「ありがとう」

 私はふと、ルシアナの手元をみた。

 ドレスをギュッと握り込んでる…?

「ッ―」

 そっか。ルシアナは本気で悔しかったのか…。そうよね、よく考えたら私がルシアナ達を超えたいのと同じで、ルシアナは聖女になるのを本気で目指してたんだ。

「じゃあ、本気で頑張らないとね…」

「何か言った?」

「いいえ、なにも。はやく闘技場に行きましょ?」

「…!そうね。聖女になったからって、自分を過信しないことね!」

「…!ルシアナも、私を下に見過ぎないようにね!」

 私達は笑顔で闘技場に向かった。


「いい?ルールは相手のダメージストーンを壊したら勝ちよ」

「わかったわ」

 ―ダメージストーン。身につけている人のダメージを肩代わりする魔法道具。決闘するために作られ

た道具。ダメージストーンは魔物モンスターからのダメージは肩代わりできないから、本当に決闘するためだけに作られたのよね。

「このコインが落ちたら開始よ」

そう言ってルシアナはコインを落とした。

カランッ

「『火球ファイアーボール』」

…!詠唱短縮!

「『ウォーターウォール』!」

「なかなかやるわね、ルナ!」

「ルシアナこそ!」

「どんどんいくわよ!『攻撃範囲増加』!『ファイアーアロー』!」

「『ウォーターアロー』!『ウィンド斬撃スラッシュ』!」

ファイアーアロー』は『ウォーターアロー』で打ち消して、『ウィンド斬撃スラッシュ』で追撃をする。うまく発動できたはずだけど…

「痛っ!なんで―」

「油断したわね、ルナ!私は『ファイアーアロー』を打つ前に、『攻撃範囲増加』を使っているから、なにもしていない『ウォーターアロー』では打ち消せな―痛っ!なんで⁉ルナは詠唱してなかったはず…!」

「甘いわね、【完全無詠唱】よ」

「【完全無詠唱】⁉魔法騎士団でも団長しか使えないのに、なんでっ!」

「…私の努力の結果よ。あなただって、努力で【詠唱短縮】ができるようになったじゃない。それとおなじよ」

「そんなはずないっ!私のほうが圧倒的に魔法を学ぶ環境は良かった!専属講師だってつけてもらったのよ⁉なのに、なんで独学のルナのほうが魔法が使えるのよ…!」

「それは…」

多分それは、私のヒロイン補正のおかげで、他の人が私と同じように練習しても、私と同じぐらい魔法が使えるようになるかといってら、そうじゃない。ルシアナはヒロインでも、悪役令嬢でもない。悪役令嬢の取り巻き。何の補正も得られないモブキャラ。なのに私が使えるものの1段階下のものまで使えるのは、本当に、血の滲むような努力をしたからなんだろうな。それなのに、補正を受けてる私なんかが、ルシアナに勝ったところで、それは本当に勝ったと言えるの?

「っ―ごめん、ルシアナ…」

「…!ど、どうしたのよ急に!謝るなんてらしくないじゃない!」

「本当に、ごめんね…!」

「本当にどうしたのよ!」

「…」

「あー、もういいわよ!こっちこそ、その…わ、悪かったわよ、あなたのこと散々悪く言って…人のことを悪く言うような人が聖女にふさわしいわけないのに」

「そんなこと…!」

「そんなことあるの。それで?私はあなたに謝られることをされた覚えはないけど…」

「あ、そ、それは…」

どうしよう…転生したことを言う?でも信じてもらえないだろうし…

「…話したくないなら話さなくてもいいわよ」

「え?」

「私だって話したくないことの1つや2つあるわ。あなただって同じでしょう?」

「え、ええ…」

「じゃあ話さなくてもいいわ」

「っ、ありがとう、ルシアナ」

「感謝されることなんてしてないわよ」

「それでも、ありがとう」

「まったく…どうしようもないわね。今年の聖女様は」

「ル、ルシアナ、今、聖女って…」

「ええ。認めるわよ。あなたは私より強い、聖女様で私の双子の妹よ」

「ルシアナ…!これからは、仲良くしてね」

「…姉妹なんだから、当然よ」

「あ、そろそろ授業ね」

「そうね、はやく教室にいくわよ」

「ええ」


キーンコーンカーンコーン

教室にチャイムが鳴り響く。1時間目開始のチャイム。今日は魔法の実技の授業―

コンコン

「失礼します。ルナ様はいらっしゃいますか?」

「え?ルナちゃんに何か用ですか?」

「はい。シルフィーお嬢様がルナ様にお話したいことがあるそうです」

げ、シルフィーが?嫌な予感しかしないのだけれど…

「あなたはルナちゃんの顔を知ってますか?」

そういったのはリリーナだった。いくら伯爵令嬢でも、伯爵令嬢の従者に歯向かうのは失礼なんじゃ…

「いえ、存じ上げておりません」

え?私の顔も知らずに呼びに来たの?

「そう…わざわざ来て頂いたのに悪いのですが、本日、ルナちゃんは体調を崩されてしまって、お休みなんです。なので、シルフィー様にもそうお伝え下さい」

「そうなのですか。お時間割いて頂きありがとうございました。シルフィーお嬢様にお伝えさせて頂きます」

出ていった…なんだったのかしら。ほんと、いい迷惑ね。

ガラッ

「皆さん、すみませんっ!緊急事態のため、今日は学校は終わりですっ!各自寮に速やかに戻ってください!」

「ソフィア先生⁉何があったんですか⁉」

「ごめんなさい、上からの命令で伝えることはできないの」

「…わかりました。ルナちゃん、はやく行こ」

「?ええ」

そう言って私達は教室を出た。

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勝ちヒロインに転生したけど、私はヒロインが大っきらい! リサ @ririchanyo

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