第4話 後半 お嬢に対する思い〜アルベルト•パート〜
「…サナ、この薬、魔力回復の効果があるの。あなたにあげるわ」
「魔力回復⁉そんな貴重なもの…いただけません!」
「でも…サナの魔力残量が赤色になったのは私のせいよ。だから、そのお礼も兼ねて、受け取ってほしいの」
「で、でも…」
「お願い」
「…わかりました。ありがたく受け取らせていただきます」
「よかったわ」
「いえ、ありがとうございます!」
「あの〜その薬、そんなに高価なんですか?」
俺はサナ様の持っている薬をみながら言った。
「ええ。王家でも数個しか持っていないほど貴重よ」
「そんなにっ⁉…?そんな高価なもの、なんでお嬢が持ってるんです?」
「…ひ、秘密よっ!」
「流石にそれは誤魔化せないですって」
「その、あの、ちょ、あー、サナ、もう夜遅いし、眠いでしょう?また明日ね」
「そ、そうですね。ルナ様も眠いですよね。また、明日」
「あ、ちょっと」
「はあ~、ルナ様、疲れただろうな〜。にしても、なんで魔力回復ポーションを…?」
「サナ様、流石にもう否定できませんよね?」
「…流石にみとめるわ。私はルナ様が思うようなか弱い令嬢じゃない。弱いふりをして、相手の令嬢を欺く。これが私の戦法」
「そう…ですか。まあ、そんなとこですよね」
「…私はサブヒロインなの。ヒロインを支えるための立場。それでルナ様は…」
サナ様はそう呟いた。
「は?サナ様、ちょっと言ってる意味が…」
「か弱い令嬢。妹と比較されるかわいそうな女の子」
「妹と比較される…」
「でも、ルナ様はシナリオ通りに動かない。他の人はシナリオ通りなのに…」
「サナ様?」
「…私、実は転生者なの」
「転生者?」
俺はサナ様の言っている意味が分からなくて聞き返した。
「ええ。私には前世の記憶がある。ここは乙女ゲームの世界」
「乙女ゲーム…」
俺はそう呟いた。「乙女ゲーム」この単語に聞き覚えがある。たしか、お嬢が前に…
「ここは乙女ゲーム「マジックスター学園〜愛されヒロインと運命の人〜」の世界」
「愛されヒロイン…」
まただ。この単語にも聞き覚えがある。この単語―
「お嬢が呟いてた単語…?」
「ルナ様が?」
「はい」
「…!だから、ルナ様はシナリオ通りに動かなかったのね!」
「ちょ、ちょっと待ってください!さっきからシナリオとか転生者とかなんなんですか⁉」
「…信じてもらえないかもしれないけど、私、一度死んだの」
「死んだ…?」
「ええ。こことは別の世界で。それで今いる世界は私が前世でプレイしていたゲームの世界」
ゲームの世界。それって―
「乙女ゲームの世界、ですか」
「…!せーかい。それもルナ様が?」
そう言うサナ様は少し、「面白くなりそう」というふうに、どこかおかしそうに笑った。
「…いえ。これは俺の推測です」
「ふふっ、あなた、おもしろいわね」
「そのっ!お、お嬢は、その別の世界から来たんですか?」
「予測では、そうね」
「日本…」
「…!なんでその言葉を?」
「お嬢がよくつぶやいてたんです、「日本…懐かしいわね。姉さんは元気かしら」とか「日本にはたくさん思い出があるわね…ふふっ、アルにも紹介したいぐらい日本は素敵だったわね」って」
「…」
「…お嬢はそういうことを言った後、絶対に泣くんです。普段、誰にも涙をみせないからか…」
「ルナ様…」
「…そういえば…サナ様は何故お嬢のことを「ルナ様」って呼ぶんですか?」
「…私はね、乙女ゲームをしてたとき、愛されヒロインが嫌いだった。だって、攻略対象の前で良い子ぶって、人の婚約者を取る最低な女なんですもの」
「その「愛されヒロイン」とお嬢になんの関係が?」
「その愛されヒロインは、ルナ様なのよ」
「お嬢がヒロイン⁉」
「ええ」
「あの気が強くて、良い子って感じが一切しなくて、「王子を超えてみせる!」とか言ってるお嬢が⁉」
「ええ」
「…でも、サナ様はヒロインであるお嬢が嫌いなんでしょう?だったらなんで…」
「私はゲームの中のヒロインは嫌い。でも、いまみたいに、筋トレしたり、熱心に勉強したり、負けず嫌いで、妥協しなくて、他の人の何百倍も努力しているルナ様のことは尊敬してるし、おそばにいたいと思ってるの」
「それで「ルナ様」と呼ぶんですか…」
「さ、話を戻すわよ」
「はい」
「多分、ルナ様はこのこと…転生者とかを知られたくないんだと思う。私も知られたら困るわ。だからこのことは…内密に、ね」
「はい」
「じゃあ、そろそろねましょうか」
「そうですね。では、また明日」
「ええ。また明日」
そう言って、俺は自室に戻った。
「ルリ!おかえり。返事は?」
「ピピ!」
「お、あった」
〜信頼はしている従者、アルベルトへ〜
ほぼ確定でルナは聖女だ。このことをルシアナが知ったら大変なことになりかねん。このことはルナにも言ったらダメだからな。あと、報告の手紙ぐらいまともに書け。
〜お前を少し羨んでるアードナルドより〜
「少し羨んでるって…」
まあ旦那様に羨まれるのも俺が勝ったみたいでいいな…じゃなかった!
「これ、どう隠せっていうんだよ…」
つーか、まともにかいたし!なんなんだ、この失礼な手紙は!!
「はーあ、どーしたものかねえ…」
今日はもう寝るか。
―翌日
「ちょっと、アル⁉今何時だと思ってるの⁉」
「んー?なんですか、お嬢…」
眠いなあ、なんでお嬢は朝から元気なんだか
「はあ~、もう7時なのに…どうしましょう…」
「あ!こちらにいらしたんですね。おはようございます、ルナ様」
「!おはよう」
「と、ところで…その…ア、アルベルトさんは…」
「ああ、アルったら、もう7時なのにぜんっぜん起きないのよ」
「あー…」
「はあ~まったく、困った従者ねえ。しかたない。アル、私達は先に教室に行くから」
「?はい…」
あ~ねっむ。まだそんな時間じゃないだろ…二度寝するか。
「ん?し、7時⁉」
よ、夜遅くまでおきてたから…?
「…お嬢に寝顔見られた…?…あ~、これで気持ち伝わったりしてねえかな…」
お嬢はどーしてこんなに鈍感なんだか···
「ぴー、ぴー!」
「ん~?ルリ?どーした?」
手紙?誰からだ?
〜アルベルトへ〜
大変だ。ルナに危険が及んでいる!ルシアナにルナが聖女だとバレたみたいだ!返事はいらない!はやくルナのところに行ってくれ!
〜アードナルドより〜
「っ!ヤバい!!はやくお嬢のとこに行かないと!」
俺は全力でお嬢のクラスに走った。
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