第25話 新の秘密

 幼少より馴染んで来た部屋に司は新を伴って来た。

 ベッドに新を寝かし付けた司は、

「蓼の葉はかじった」

「うん。ムニャムニャ~」


『無理ばっかり言ってごめんね』



『コンコンコン』


「司、入るわよ」


 奥様が部屋に入ると司が新に添い寝をしていた。


「まぁ、司、あなた~」

「叔母さま、どうかしました?」


「どうかって・・・娑婆世界でもその様にして居たのですか?」

「はい。新はこうしてやらないと眠れないんです」


「こうしてって?」

「良く分らないんですけど、股間が腫れあがってしまうの擦ってあげてるのです」


「まぁ!・・・それもこれも私が至らなかったせいですね」

「えっ」


「まぁ、いいわ。う~ん?良くは無いですね。所で、あなたに話して置かなければ成らない事が有ります」

「改めて、何ですの?」


 司はベッドから出るとテーブルで奥様と向き合った。

 新は疲れて居たのかスヤスヤと眠りに着いて居る。



「司も分かって居ると思いますけど、娑婆世界と金色世界とでは日差(ひさ)が有るようですね」

「ええ、あちらの一日はこちらの三日なろうかと」

「そういうことだと思います。だから、新のこちらでの負担は計り知れません。その事を弁えてあげないと、良いですね」

「はい、それはもう~」



*****

 ここの二人の話を分かり易くするには、『浦島太郎』の物語を思い浮かべれば良いかと~。つまり、娑婆世界から見た金色世界は竜宮城の様なモノと捉えて見れば、金色世界では新の体は三倍の速さで時を過ごして居る事になる。

                                 *****



「仮にですよ。司が新とその~深い仲に成ったとしても、その~年の差が見る見る開いて行くのですからね」

「叔母さまは何を仰りたいのですか?」

「だから、その~新とは、その~あまり親密に成らないように心掛けて欲しいのです。後で、司が辛く成るのが目に見えているから~」


 司の顔に蔭りが見え始めた。

 彼女も薄々感じ取って居た事ではあるが、叔母の口から改めて聞かされると胸が疼くようだ。

 いつまでも、新を金色世界に留めて置くことは出来ない。

 無理強いして新を留めたとしても、自分より早く老いて行く新の姿を見続けることとなる。

 それも又、居た堪れない事ではあるまいか。


 奥様は司の思いを汲み取っていた。


「私は新とあなたを引き裂こうとしているのでは有りません。むしろ、長くに渡り友人で在ってくれればと願って居ます」

「分かりましたから、今日はこれ位にして貰えますか。私なりにその事を考えて見ますから」

「・・・そうですね。明日には宮殿に戻るのでしょう」

「はい、そのつもりで居ます」

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