第4話 フェン大樹海
模擬戦や魔術適正が終わり次第宿に戻ったヴィナは夕飯を食した後泥の様に眠った。
後日の早朝部屋でストレッチをして身体を解した後、1階へ降りて食堂で塩だけの味付けの野菜スープに黒パンを付けてふやかし食べた。部屋へ戻り身支度を整え外に出て大通りを通ると露店が所々開いていて、そこでサンドウィッチを3つ買い、その隣の干物屋でジャーキーと魚の干物を買う。
準備が整った後ギルドへと歩を進める。ギルドへ進んでいる途中で行方不明者を描いた看板のような物があった。其処にはヴィナと同い年やそれ以下の子供たちも含まれており、感情が麻痺したヴィナの顔にはあまり変化は無いが聊か何時もよりも暗く見える。少し立ち止まった後に直ぐギルドへと歩を進め直すと、早朝というのにすっかり出来上がっている冒険者がちらほらいる。村から出たは良いものの余り活躍できず、むしゃくしゃした思いをアルコールで流している様だ。そんな冒険者達を横目に見ながら真っ直ぐ依頼掲示板へと歩く。
ヴィナは初めての依頼ということで薬草採取の依頼を受ける事にした。依頼書を受付へ持っていき、受付嬢に手渡す。
「初依頼ですね、薬草採取とは言えフェン大樹海なので少し奥へ行くとゴブリンやオークなどの魔物もでます。努々、お忘れになさらぬよう。」
「忠告ありがとう。」そう返しながらギルドを出た。
さて、目標はシメリソウと言う湿度が少し高めの木の根元によく生えている薬草でヒトリシズカの様な綺麗な花を咲かす。これを十本以上持っていくと依頼達成となる。もっと多く持っていくとその本数、品質に応じて報酬が上乗せされる。
以上から此の街の周りで一番生えているのはフェン大樹海となる。フェン大樹海はラグナ王国が全体の一割程領土化しており天を衝く程に高いエルブ山脈を隔て他は領土化されておらず未開拓であった。
そんなフェン大樹海行きの乗合馬車へ乗るために 十五分程待つ。そして二台の馬車が一定の爪音を立てながら此方へ向かって来た。ヴィナはその馬車の御者に銅貨を払い乗合馬車に乗り、出発するまで大人しく待つ。人が疎らに乗ってき始めた。さっき冒険者ギルドにいた冒険者達もちらほらいた。そして人が一杯になると少しずつ目的地へ進んだ。暫くして樹海の手前に着くと最終確認をする。
最終確認を終え樹海の中へ分け入る。四半刻程立つと更に鬱蒼とし樹齢が百年二百年は下らない程の大木が当たり前のように生えており木の根がうねり、足元が酷く悪い。ヴィナは父親とよく森へ狩りや採集に行っていたが、それでも歩きにくそうにしている。
一際大きくうねった根の辺りにシメリソウの群生地があった。二十本以上生えておりそこから品質のいいシメリソウを7輪持って行く。残りはそこの群生地を無くさないために放置する。他の大きめのうねりがある木の根を見ていくと四つ程群生地があった。初めに見つけた群生地はあまり品質のいい花は無かったので放置し、2つ目には三輪程、3つ目には既に品質の良い花は取られており諦めた。最後に見つけた群生地は大木が倒れ、朽ちた跡に有り、木の栄養を存分に吸い取り最早お花畑の様にとても品質が良く綺麗な花が沢山あった。そこから麻袋に溢れんばかりに然し花が崩れないように慎重に入れた。心なしかヴィナの口角が上がっていた。
そこから少し歩いて行くと急に鬱蒼とした森から一変ある種の神聖さを醸し出す森へと変貌した。木の年輪は優に五百を超えるものが沢山あり、訪れた者を別世界に迷い込んだ様な気分にさせていた。とても大きくうねった木の根に乗ると清らかな九皐も見えた。ヴィナはその山紫水明たる憧憬に感嘆の息を漏らし少しの間見惚れていた。そこで昼食をとり、一呼吸置いた後また森の奥へ歩を進めた。サンドウィッチはハムと新鮮な野菜が挟まれておりとても美味しかったようでまた買おうとヴィナは心に決めた。暫くして三人程の足跡を見つけた。土の具合から察するに3日から5日程前のものだと推測できた。目を凝らすとそれに紛れてもう一つ小さい子供の足跡が見えた。其れ等を辿っていくと急に子供が追いつかれ捕まってしまい藻掻いたのか土がぐちゃぐちゃになっていた。それから、先ほどの三人の足跡しか見えなくなり、一人の足跡が先ほどよりも土の盛り下がりが低かった。まだそれについていき、一刻程立つと一際大きい木が倒れていた。生きていたならば樹齢は二千年程であろう木の洞に足跡は続いていた。だが、其処には門番と思わしき見窄らしい男が地面に座り込み鼾をかいて寝ている。最早門番の意味をなしていない男を見ながら此処までの道を頭に叩き込む。これ以上入っていくと、狩人の心得を教わったヴィナといえど万が一がある。深追いはせずにギルドへ伝えようと決めた。
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