第6話

野上は私を起こして抱きしめてくれた。



「……のがみ?」


「疾風に何もされなかったか?」



何もされてないと言ったら嘘になってしまうけど、野上の思ってる様なことはされてないですよね。



「何もされてないけど……」


「超心配したぞ」


「じゃあ何で流星とペア組むの?」



意味が分からない、という感じで私の目を見てくる。


「あいつ見張ってないと作業サボるだろ」



「私と組みたくないわけ?」



私の質問に、あー、と納得。



「こんな引越しくらいで二人になれたって、全然足りない」



そして私の唇にキスする。



「こんなんじゃ、足りない」



……愛されてないとか言ってたのはどこの誰でしょう。



「ねぇ、野上?」


「なんだよ?」



私は耳元で囁くように言った。



「美波って呼んでほしい」



珍しく赤くなる野上。




「慣れるのに時間かかりそうだな」



引越しが終わり野上と伊達が私達に手を振った。



「今日はありがとな」


「いや、全然。それより野上先輩」



伊達弟くんが靴を履き終えて野上に頭を下げる。



「これからも兄さんをよろしくお願いします」



そんな伊達弟くんに野上が笑いかける。



「いや、こちらこそ。


あ、疾風も悪かったな!今度、飯おごるから!」


「別に平気です」



明るく笑う塚田くん。何ていい子なんだ……!



「山本と春日さんとカクも、ありがとな!」



伊達のお礼に三人は笑いかえす。


「せいぜい野上に迷惑かけないようにね。」


桜に言われ、伊達は顔を赤くする。


「スズ、送ってく」


「大丈夫です!まだ夕方ですよ?」


二人の会話を聞いていた淳士くんが一人部屋から出ていく。



「家具の仕分けもダンボールの仕分けも、俺がやったんだけどな……」



「ねぇ、野上」


私が呼びかけると野上が私を振り返った。



「来週の水曜日、暇?」


「無理だぞ、バイトだ」


野上の代わりに伊達が答える。



「じゃあ、金曜日は?」


「その日は俺の部屋の片付け」


野上の代わりに流星が答える。



「じゃあ、日曜日は?!」


「日曜の試合は見に来てくれるんですよね!」


塚田くんの言葉に「そうだな、約束したな」と、頷く野上。



やっぱり聞いても良いですか?




私のライバルは一体何人いるんでしょう。







2010.04.29

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美波ちゃんのライバル 斗花 @touka_lalala

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