第76話

 バサッ。


 玄関口で、英智は、トレンチコートを脱いだ。

 それを腕に掛け、スリッパを突っ掛けて―踵を返す、彼……


 パタ…パタ…


 遠離る、足音…宇多子はこらえ切れずに、嗚咽する……


「……う…う…う…」


「ブタ」でもいい…


 もう…コトバさえ…?


 私には…何も……


 哭く彼女…その首に、何かが掛けられた。


「…!?」彼女の首許で輝く、白真珠のネックレス……


 宇多子の、両の二の腕に、ソッと触れる、男の両手……


 彼女の背中のすぐうしろで、男の気配がしている……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る