第92話

ただでさえ、涼以外に触れた俺の体は汚いのに……こんなに気持ちの悪いやつにいいように弄ばれた体は完全に使い物にならない不良品になってしまった気がした。



これは、罰だ。涼を悲しませたいという酷い目的のために、俺に好意を寄せる人間を好き勝手利用した罰。自分の気持ちよりも、目的を優先した罰。


こんなことなら……素直に涼に好きだって伝えればよかった。




「……うっ、ふぅ……っ」


「あー泣かないで?響くん、綺麗なお顔が台無し」


「……」



涼がいい。俺に触れるのは……俺が触れるのは……涼だけでいい。


最初からそれだけだったのに、……こんなに拗らせたのは俺自身だ。



「ごめんね、気持ちいい声出せなくて、苦しかったね?」


「……っ、痛」


「あー赤くなってる。舐めて治してあげるね?」


「やめっ、ろ!……変態、」



無理やり、唇を奪われた。そこだけは恋人役の女にだって触らせたことがなかったのに。


ぷつりと糸が切れる音がした。多分、あれが諦め、……絶望ってやつ。


もう抗う気力もなく、ダランと四肢を投げ出すだけのラブドール。とにかく早く終われとだけ願って、……俺は人生で最も地獄な1日をこの部屋で過ごした。



もう戻せない。涼と迎えたかった純粋な初めてはもう……一つ残らず奪われてしまった。

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